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ドタバタの帰路、ふがいない僕に天の声 @フリータウン

 ドタバタで始まった西アフリカへの小旅行は、やはりドタバタで終わる。フリータウン最後の日、22日から嫌な予兆はあった。

 3日連続で車が故障して、4日目はというと、来るはずの車が来なかった。前日にガソリンに水を混ぜられて、その修理のために来られなかったという。だから、取材開始が2時間以上、遅れてしまった。

 翌日はフリータウンのルンギ空港から朝8時15分の便に乗る。2時間前にはチェックインしようと思ったので、前の夜は市内のホテルから空港近くのホテルに移動することにしていた。

 ここまでの考え方は正しい。フリータウン市内と空港を結ぶのは、高速艇かホーバークラフトだが、どちらも天候次第で運航しないかもしれない。車で空港に行こうと思うと、大変なうかいで4時間以上かかると言われた。

 そこで、22日は取材を早々に切り上げて船で空港近くのホテルに入り、そこで原稿を書いて早めに寝ようと思っていた。だが、スタートが遅れたため、最初の取材が終わるともう午後だった。そこでホーバークラフトと高速艇それぞれの船着き場に行って、その日の最終便の時間を聞いた。すると、もう出てしまったという。

 翌日の午前8時15分のフライトがあると言うと、両方とも心配ないという。ホーバークラフトは午前5時に、高速艇は午前5時半に来いという。海からいけば30分ほどで空港近くまで行けるので、これなら十分に間に合うと思い、ホーバークラフトの出発所近くのホテルにチェックインした。

 よく落ちると評判だったヘリコプターがあったときは、こんな苦労はなかったのに。そのヘリはやはり事故が元で運航をやめたのだという。

 その日の取材を終え、早めに寝て、午前3時には起きて、万全を期した。ホーバークラフトの乗り場に4時20分ぐらいに着くと、真っ暗だ。門から声をかけると、若い男性が出てきて、椅子を出してこれにかけて待てという。デイパックを抱えて座っていたら、星が一つ流れた。すぐ隣にはカジノだかクラブだかわからないが、まだ人が騒いでいる。

 何だか様子がおかしいとは思い始めたが、この時点で、もはやほかに空港にたどり着く方策はない。結局出発したのは6時半だった。ついたらもう出発1時間前。それでもぎりぎり間に合っただろうと思った。

 チェックインのカウンターに、係はもういなかった。同じ目にあった人たちが何人かいる。そのうち、係が来て何を言うかといえば「いまごろ何しに来た。オーバーブッキングだったから、もうとっくに締め切った」と言う。

 どうも高速艇の方がわずかに早く着いたようだが、そちらも間に合わなかった。どっちにせよ、朝まで待ってフリータウンを脱出してはいけなかったのだ。そう思っていたはずなのにと、自分に腹が立つ。

 「これで3度目よ。もう2度とあなたの航空会社は使わない」と子連れの女性が身ぶりも派手に係とやりあう。中国人の2人連れの1人が大声で叫んでいる。それより遅く来たので黙って善後策を考えた。

 窪美澄さんの本のタイトル「ふがいない僕は空を見た」が頭に浮かぶ。本の中身とは全く状況が違うけれど。それに上を見てもターミナルの天井だけだけど。

 そこで鮮やかによみがえってきた。そう、確かに同じことをこのフリータウンで過去に経験したのだった。10年余をへて、全く成長していないということかと、再びターミナルの天井を見上げる。

 23日はフリータウンからアビジャンに移動し、翌24日の夜行便でアビジャンからナイロビに戻る予定だった。夜行便はナイロビに午前5時ごろ着という過酷な便で疲れる。だから、アビジャンで1日のんびり記事を書いてすごそうと思っていた。

 元はといえば、アビジャンを基地にして、フリータウンとモンロビアに行こうと思い、ナイロビ―アビジャンの往復航空券を買ったのが間違いだった。予定が数日延びたので、ナイロビで旅行会社を営む上野直人さん(49)に便の変更を頼んだばかりだった。上野さんにはナイロビ特派員時代からお世話になっている。

 まずこの日にアビジャンに飛べないということは、アビジャンのホテルはキャンセルしないといけない。これは電話がつながって大丈夫だった。次に、翌日のナイロビ行きの便にも乗れない可能性が大きいので、朝早くに向かえにきてほしいと連絡したナイロビの個人タクシー運転手に電話する。通信状態はよくなかったけど、これも連絡がついた。

 さらに、切符の手配と便の変更を頼んだ上野さんに電話して、翌日の便に乗れない可能性があると告げた。実は、問題の朝の便に乗れない可能性もあるだろうと踏んで、アビジャン―ナイロビの切符の発券をこの日の午前中まで待ってもらっていた。切符の正式発券はまだだった。

 フリータウンからアビジャンに飛ぶ便は翌日もある。1日待って、同じ便に乗れれば、そのまま同じ日のアビジャン発ナイロビ行きの夜の便に乗ることも可能だ。だが、フリータウンを脱出できなければ、ナイロビに戻るのが3、4日遅れる可能性もあった。

 加えて、いつもオーバーブッキングなので信用できない。航空会社の空港責任者に話したいので連れてきてくれと係に言うのだが、いっこうに現れない。

 まるでこちらに完全に非があるような係の態度だけど、考えてみればオーバーブッキングが常態化しているということは、客をないがしろにしているのだ。全然、客がいないときは出発30分前までカウンターを明けているくせに。とまあ、言いたくもなるのだが恥の上塗りなのでやめておく。

 上野さんに事情を説明して、翌日夜までにアビジャンに飛べる可能性を探りつつ、もうアビジャン行きは捨てて別のルートでフリータウンからナイロビを目指す便を探してもらった。

 休日なのにすぐに対応してくれた。まず、この日は幸運なことにフリータウンからナイロビに飛ぶ便があった。と思ったのもつかの間、満席だった。

 風に吹かれているのだから、ナイロビに戻るのが3、4日遅れてもどうということはない。でも、手持ちの現金がなくなってきて、そんなにこちらで過ごすわけにいかない。それに、次の旅の準備も進めなくては。

 「一つだけ可能性があるのが」と何度目かの電話のやりとりで上野さんが切り出した。「もう時間的にぎりぎりですが、フリータウンを出るセネガルのダカール行きに乗れば、ダカールでナイロビ行きに接続できます。席も空いているようです」

 天の声とはこのことだ。チケットの発券もできるというので、その場で発券してもらった。だが、チケットの現物を印刷できないし、チェックインカウンターに行っても、そのような予約はないという。

 出発時間がもうすぐというときに、チケット係がやってきたので、チケットを印刷してもらった。たまたまその飛行機の到着が1時間遅れたので、乗ることができた。

 そして、この原稿はナイロビ行きの便の中、たぶんカメルーン上空あたりで書いている。GPS装置はもういらないだろうと思って預け入れ荷物にいれてしまっているので、詳しい場所はわからない。結果的には1日早くナイロビに戻れたわけで、何だか不思議な気がする。会社の会計とどのように折衝するかは、まあ後で考えよう。

 上野さんに電話で「本当に記事に書かれている通りなんですね」とドタバタぶりを少し笑われてしまったのが情けない。休み時間に読んでくれているとのことで、ありがたい。

 せめて、次の旅はドタバタがないようにしたい。それがないと、中身がなくなってしまうと思われるかもしれないけれど。

     ◇

■11年前の5月に書いた記事です。進歩していないことがわかります。

《約束を守れ!(特派員メモ・フリータウン)》

 約束を守れ! と、叫びたくなる。ついでに、時間を守れ! とも。

 この大陸では、約束と時間を守るという意志が、どうしてこんなに希薄に感じられるのか。時間がゆったり流れるのは素晴らしいことだけど、裏を返せば何一つ予定通りには進まない。

 約束の時間を1時間遅れても、もう腹も立たない。2度続けて何の予告もなしにすっぽかされても、我慢の範囲だ。しかし、「必ず空港に迎えをよこす」という言葉を信じてポンコツの飛行機で到着して、いなか町の飛行場に取り残されたのには参った。

 そんなわけで、飛行機のチケットをホテルに届けるといった旅行会社が、出発の前夜になっても持ってこなかったときは「またか」と思った。運転手は慰めるどころか「信じるあんたがだめだ」となじる。翌日には移動したかったので、旅行会社の社長の家を探して直談判しようと思った。その時、使いの青年が「遅くなって済みません」とやってきた。その笑顔を見て、疑った自分を恥じた。

 これで終われば『走れメロス』のような話。どっこい、そうはいかない。翌朝空港に到着すると、大幅なオーバーブッキング。粘りに粘ったが結局、フライトには乗れずじまいだった。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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