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11月16日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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明かり目前にUターン 鞭声粛々夜河を渡る @ジェンネ

写真:朝日に向かって出発=20日、バマコ、いずれも中野智明氏撮影拡大朝日に向かって出発=20日、バマコ、いずれも中野智明氏撮影

写真:羊売りの少年=20日、サン拡大羊売りの少年=20日、サン

写真:若き仕立屋さん=20日、サン拡大若き仕立屋さん=20日、サン

写真:タイヤ交換=20日、サン拡大タイヤ交換=20日、サン

写真:マリには意外と馬車が多い=20日、サン拡大マリには意外と馬車が多い=20日、サン

 20日早朝、バマコを出て北のモプティを目指す。イスラム武装勢力と、マリ政府・フランス軍のせめぎ合いが続いた要衝コンナに通じる都市だ。いったん武装勢力の手に落ちたコンナが再び政府軍側に奪還されたと伝えられたため、その現場に入りたいと杉山正ナイロビ支局長は言う。

 現場に近づくのは、記者の習性だ。今回、アルジェリアで多数の日本人が犠牲になった事件の背景にはマリへのフランス軍介入があると伝えられる。そのマリで何が起きているのかを伝えたい思いは、なおさら大きい。

 だが、特にフランス軍が介入してから、各地へのアクセスが難しくなっている。どこに行くことができるのか、どこから先が無理なのかもはっきりしない。最新の情報では、モプティまでは問題なく行けそうだということで、そこを目指すことにした。バマコからは600キロの距離にある。

 マリは逆「く」の字形のような形をしている。北海道を宗谷岬から南にまっすぐ切り、途中で直角に西へ曲がって切り抜ける。その西のかけらをとって、残った部分のような形だ。うまい説明ではないけれど。

 その東西の直線の北側を支配した武装勢力が、南に進軍したというのが今回の騒ぎの発端だった。そして南部にあるコンナの町が制圧された後、フランスが軍事介入を決めた。

 武装勢力は、さらにディアバルも制圧した。それをフランス軍の空爆などで押し戻し、ディアバルもコンナもやっと政府軍側が奪還したばかりだ。

 朝焼けに向かって走り出したものの、すぐに道路は工事中の土の道となった。土ぼこりが霧のようにたゆたう道を2時間近く走った。

 トラブルは、工事区間を抜けたあたりから始まった。分乗した2台の車のうち1台がキュルキュルと妙な音をたてはじめた。この音はシエラレオネで何度も聞いた。

 ファンベルトが悲鳴をあげている音だ。直すのに30分近くかかり、再び走り出すと、今度はもう1台の後輪のタイヤが切り裂かれたようにパンクした。スペアに交換し、セグーという大きな町にたどり着いて、パンクしたタイヤを取り換えた。

 セグーを後にして快調に走り出したのもつかの間、乗っていた車がガンッという大きな音を発した。皮をはいだようにタイヤの表面がはがれ、車輪の防護カバーが落ちた。ガンッという音は、それをひいた音だった。

 煩雑になるので省略するけれど、さらにパンクと、ボルトが合っていなかったためタイヤが外れそうになるトラブルがあった。コートジボワール、シエラレオネの陸路の再来だったが、車2台あるのがせめてもの気休めだ。

 きょうの道行きは、たくさんのバオバブが慰めてくれた。乾いた大地に太く立ち続ける苦悩と憤怒を表現しているようでいて、泰然としたようにも見える。マリの情勢と思いつつ見るからそう見えるのかもしれない。

 バオバブに似たバナンという木もある。前日、梅のようだと思った木はどうやらケイポックと言うらしい。オーストラリアや西アフリカにみられるようだ。巨大な丸いひょうたんがあちらこちらで栽培されていて、地球が緑の卵を生んだように見える。

 バマコを出て2時間ぐらいの間には、検問が1カ所あっただけ。さらに2時間ほど走ったあたりから検問が目立ちだした。3カ所、4カ所と順調に通過した。

 車の方はあまり順調ではなかったが、すっかり日が落ちた午後7時半過ぎ、目指すモプティの明かりが進行方向の左側に見えてきた。出発してから13時間以上がたっている。「翼よ、あれがモプティの灯だ」という心境だった。

 その手前の7カ所目の検問に止まる。「ジャーナリストはここから先へは入れない」とあっさり言われる。その日の午後3時までは入れていたらしい。先でフランス軍などが作戦を進行中なのだろうか。

 ここまで来て、明かりを目にしながらUターンはつらい。手前の大きな町といえばサンで、200キロ離れている。翌日、再び検問まで来てみようということで、サンまでは戻らずに途中にある世界遺産の町、ジェンネに宿泊することにした。

 ふだんなら観光客でにぎわう町だが、閑古鳥が鳴いているという。真っ暗な道を100キロ戻る。途中の検問で兵士のもつラジオから、前日に始まったサッカーのアフリカ杯の中継が聞こえる。この日はマリとニジェールが戦い、マリが1対0で勝っていた。

 ニジェール川とバニ川の中州にあるジェンネに車で入るには、はしけのようなフェリーに乗らなくてはならない。もう夜の10時近くだが、まだ動いていた。半月と星明かりの下、ライトもつけずにフェリーがこちらにやってくる。ライトもつけずに、向こうへとって返す。

 鞭声粛々(べんせいしゅくしゅく)夜河を渡る

 よく知らないくせに、川中島のそんな言葉がふと浮かぶ。昼間の暑さと打って変わり、冷気と呼ぶべき風が川をわたっていた。闇に紛れるように、世界遺産の町ジェンネに入った。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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