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良いイスラム教徒、悪いイスラム教徒 @バマコ

写真:マハムード・ディコさん=26日、バマコ、江木慎吾撮影拡大マハムード・ディコさん=26日、バマコ、江木慎吾撮影

 前日に引き続き、マリの宗教指導者に会う。その前に、前日の指導者たちとの会話でやり玉に挙がったマドラサ(学校)の運営者に話を聞こうと思った。会うことはできたのだが、「何も言えない。私たちの学校は普通の学校と何ら変わりはない」と取材を拒否された。

 この人物が言ったのは、イスラム指導者のトップ、イスラム高等委員会のマハムード・ディコ委員長(58)しか、宗教の問題には答えられないということだった。そのディコさんには前日の金曜日、祈りの時間が終わるのをモスクで待ち構えて取材の約束を取り付けた。

 事務所で待つこと2時間。やはり待たされたアメリカの記者が「何とかしてくれ」と通訳をせっついている。狭い庭にはタビビトノキがあって、わずかな日陰をつくっていた。どこかの国からもってきて植えたらしい。大きなネズミが庭を横切る。

 前の日に取材したウスマン・マダン・ハイダラさんの応接室は縦横が9メートルほど、四つの冷房装置、天井に10の扇風機、応接セットの真ん中のじゅうたんで柔道の試合ができそうだった。そこに比べると、警備もなく、宗教界のトップの事務所の割には質素なたたずまいだ。

 ディコさんは、主流派のスンニ派。前日、学校の教育を批判していたジャンさんらとは、同じ委員会にいても立場が大きく違う。

 これまで何人かの宗教指導者に話を聞いたが、マリ北部を支配する武装勢力や、アルジェリアで人質事件を起こした武装勢力について、「彼らはイスラム教徒ではない」という言い方をする長老がいた。同じ神を信じながらイスラム教徒ではないというのはどういうことか。そう尋ねた。

 「イスラム教徒ではないというのは間違いで、彼らもイスラム教徒だ。市民が盗んだから、人殺しをしたからといって、市民でなくなることはない。ただ、悪い市民であることは間違いない。同じように彼らは悪いイスラム教徒ということだ」

 なぜ同じ神を信じながら、悪いイスラム教徒になる若者がいるのか。

 「教育と貧困が原因になっている。この二つは切り離せない輪だ。教育が悪いから貧困を招き、貧困が悪い教育につながる」

 教育、と言ったので、「宗教指導者の中には、アラブの影響を受けたマドラサでの教育が問題だという声があったが、そう思うか」と聞いてみた。

 通訳が質問しているうちから大きく首を振り始め「それは違う。マドラサの問題ではない。悪いイスラムの連中は、貧しくて教育を受けていない若者たちを引き込んでいる。マドラサの生徒ではない」と打ち消した。

 それでは、あなたの言う悪い教育を施しているのはだれなのか。

 「悪いガバナンスが問題だ。宗教指導者として、ガバナンスを向上するよう、ことあるごとに主張し、人々にも呼びかけている」

 「あなたの国でも、宗教セクトがサリンで市民を殺した事件があったはずだ。どこの国にも悪い宗教団体はある。残念ながらイスラムも同じだ」

 同じイスラム高等委員会で、マドラサ一つ巡っても、解釈が全く異なることだけはわかった。

 バマコ市内にある、サウジアラビア系のマドラサを訪れてみた。土曜日とあって、生徒はいない。日陰になっている外付け廊下でお茶をたてている男性教師がいた。マリの私立学校がどんなところか見たいと来意を告げると、責任者と話してくるといって建物の2階に消えていった。

 10分ほどして戻ってくると、「きょうは土曜日で責任者が不在なので何も話せない」と言われた。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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