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09月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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虹の国のスポーツ事情 二つの国際試合@ヨハネスブルク

写真:どこから見ても、試合の中心はかなり遠い=いずれも2日、ヨハネスブルク、江木慎吾撮影拡大どこから見ても、試合の中心はかなり遠い=いずれも2日、ヨハネスブルク、江木慎吾撮影

写真:試合中は杭の上に2本の棒が置かれる。グラウンド中央にあるこの杭の間で、投げ、打ち、走る拡大試合中は杭の上に2本の棒が置かれる。グラウンド中央にあるこの杭の間で、投げ、打ち、走る

写真:パキスタン国旗をもって、グラウンド内でポーズ拡大パキスタン国旗をもって、グラウンド内でポーズ

写真:電光掲示板。パキスタンは7人アウトで40ランしか入っていない。この時点で、南アフリカに追いつくまで213ラン拡大電光掲示板。パキスタンは7人アウトで40ランしか入っていない。この時点で、南アフリカに追いつくまで213ラン

写真:お昼休み。たくさんの人がグラウンドに降りて、楽しそう拡大お昼休み。たくさんの人がグラウンドに降りて、楽しそう

 からっと晴れた土曜日の2日、近くで国際的なスポーツの試合があるというので、でかけた。クリケットの国際テスト試合で、地元南アフリカがパキスタンを迎え撃っていた。

 日本ではなじみのないスポーツだが、英連邦の国々では盛んだ。ワールドカップも開かれ、特にインドやパキスタンのファンの熱狂ぶりは野球をしのぐと言えるだろう。

 バットとボールを使って点を奪い合うところは野球と同じだし、芝生にボールを追う姿はまさに「野球」と呼べそうだ。

 試合は野球よりはるかにたそがれている。なにせ国際テスト試合は5日間にわたって戦われる。でも「たそがれている」は、言葉が過ぎた。静かに進むとでも言うべきだろうか。

 クリケットのルールを説明したいのだけれど、難しい。子どものころ、よくクリケットをしたので、知ってはいる。でも、なまじ野球に似たところが、説明を余計に難しくする。

 1チームは11人からなる。「投手」は助走してひじを曲げずにワンバウンドの球を投げる。速い投手だと150キロ近く出る。遅い変化球を専門にする投手もいる。バットは大きな羽子板のような形をしていて表は平べったいが、裏は少し出っ張っている。どっちで打ってもかまわない。

 野球と違うのはファウルがないところで、後ろに打っても点はとれる。守る側は「投手」を含め、11人がグラウンドにいる。「投手」と括弧をつけているのは、この11人に何人も投手がいて、始終入れ替わるからだ。

 攻める方は常に2人の打者がグラウンドにいる。グラウンドの中央に、約20メートル間を置いて3本ずつの杭が相対して打たれている。その片側から投手が投げ、もう片方にいる打者が打つ。もう1人の打者は投手側の杭あたりで待機している。

 打って、球が転がっている間に、反対側の杭まで走れば1ラン(点)になる。1ランが入ると、打者と待機者が入れ替わることになる。グラウンドの境界線にゴロで達すると4ラン、フライで超えると6ランになる。

 フライを捕られたらアウトというのは野球と同じ。打者が空振りして、後ろにある杭に投手の投げた球が当たってもアウトだ。杭の間を走る途中に守る側が杭にボールを当ててもアウト。もう少し細かいルールもあるけれど、ざっとそんなところだ。

 アウトになった打者はすごすごとスタンドに引き揚げ、交代が入場する。打者は常に2人いなければならないので、10人がアウトになると攻守交代となる。国際テスト試合は互いに2度攻めて2度守る。それを5日間かけてやるのだ。

 試合は午前11時ごろに始まり、午後6時ごろに終わる。途中に昼食休憩やお茶の時間がある。ちなみにテストと呼ぶのは、互いの本当の実力をはかるという意味あいがあるらしい。

 ホテルから確か信号三つの距離に競技場があったので、せいぜい10分と思って歩いたら、40分かかった。信号間の距離が東京あたりとは全く違う。

 日差しは相当に強い。気温が30度前後にとどまっているのは、標高が1600メートル以上あるからだ。風は感じない。空気が乾いている。

 スタンドの椅子席と芝生席があって、芝生席に多くの家族連れがいた。客席は半分の入りといったところ。プラスチックのコップでビールをあおり、ピーナツやホットドッグを食べながらの観戦というのは野球と変わりがない。

 拍手がわき起こったり、やじが飛んだりするのも、野球と同じだ。なにぶん、野球でいう二死満塁といった、だれが見ても緊張の場面というのがほとんどない。やじもグラウンドの選手に投げるというより、周りの観客を楽しませようとしているようだ。

 ニューヨーク支局に勤務したとき、何度かヤンキースタジアムに試合を見に行った。阪神戦の応援に比べれば、ヤンキースの応援の方がほんの少し、品がいい気がする。こちらは、それよりはるかにおとなしい。

 お昼休みには、グラウンドに観客が降りて遊んでもいい。子どもが試合を始める。大人も遊んでいる。芝生のグラウンドはふさふさして、歩くだけでも気持ちがいい。こういう親しみやすさは、野球も学んでほしいところだ。

 試合結果に関心のある人はまずいないだろうが、国際テスト試合2日目のこの日までは南アフリカが圧倒的な強さを見せつけた。互いに1度の攻撃を終えた段階で200ラン以上の差がついた。

 結果を伝えるのが仕事ではないので、まだ日が高いうちにスタジアムを後にした。

 観客は、白人が圧倒的に多かった。もちろん、パキスタン系らしき人たちはたくさんいたが、黒人は少ない。インドやパキスタンで国民スポーツの地位を獲得したクリケットは、アフリカでは母国・英国での上流階級のスポーツという名残をとどめているようだ。

 食べ物を売り、外で車の誘導にあたるのは、ほとんどが黒人だった。

 さて、早めにクリケットを切り上げたのは、原稿を書いて今晩の大一番に備えるためだ。この国で開かれているサッカー・アフリカ杯の準々決勝で、地元南アフリカとマリが対戦する。

 直接見に行きたいところだが、遠く離れたダーバンで開かれているので、テレビ中継をどこかのレストランで見ることにした。先週までマリにいて、紛争のさなか、ラジオの中継にかじりつく人たちを見ているので当然、応援する。

 つまり、大きな画面のある店で、四面楚歌(しめんそか)の観戦になった。試合開始時間を1時間、間違えていて、ずいぶん人が少ないと思ったら、黄色い南アフリカのユニホームを着た若者たちが続々と詰めかけ、あっという間に満員になった。

 店の周りはテラスのようになっていて、警備員や仕事を終えた長靴姿のおじさんら10人ほどが立ってただ見を決め込んでいる。試合前の国歌演奏になると、店は大合唱になった。すでに勝ったような騒ぎだ。

 すてきな国歌なのだが、こうがなられると台無しだ。

 テレビに映る選手はほぼ全員が黒人だ。応援している客は黒人、白人、インド系と、虹の国を反映している。応援を見る限り、クリケットよりサッカーの方に国を一つにする力がありそうだ。マリを応援する日本人が1人、余計だったが。

 ちなみに試合は南アフリカが先行、マリが追いついて、延長戦でも決着がつかずに、PK戦の末、マリが勝った。

     ◇

■南アフリカの国歌については、次のような記事を2002年に書きました。

〈最も美しい国歌(特派員メモ・レユニオン)〉 

 カラオケ好きというだけでは説得力もなにもあったものではないが、世界で最も美しい国歌の一つは南アフリカの「コシ・シケレリ・アフリカ」(アフリカに祝福を)ではないかと思っている。アフリカ各地で歌い継がれた黒人解放の歌が基になっている。

 1994年、南ア初の全人種選挙で大統領に選出されることになるマンデラ氏の投票とともに、人種隔離政策(アパルトヘイト)をうち破った南アの黒人たちの間に、この歌が静かにわき起こった。ナイロビ郊外の飛行機事故で同年亡くなった共同通信の沼沢均記者の本「神よ、アフリカに祝福を」に、その感動の場面が書かれている。

 それから8年。私は、その南アからマダガスカルに向かう飛行機に乗っていた。飛行機は行き先が急に仏領のレユニオンに変更になり、その島影が夕暮れに浮かんでいた。

 この歌が聞こえてきた。若い男女の合唱が、着陸態勢の機中で静かに広がっていった。白人の中高生らしき一団が乗っていて、その席から歌は響いているようだった。シートベルトをしたまま、乗客は振り返り、腰を浮かせて歌の方向を探した。

 着陸後しばらくして歌は終わった。静かな歌に合わせた静かな拍手が、機中を駆け抜けた。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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