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11月13日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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白人から強引な農地接収、経済つまづく転機 @ムグティ

写真:モーゼズ・ムトンギザさん一家の暮らす農場=いずれも14日、ムグティ、江木慎吾撮影拡大モーゼズ・ムトンギザさん一家の暮らす農場=いずれも14日、ムグティ、江木慎吾撮影

写真:牛も14頭飼っているという拡大牛も14頭飼っているという

写真:家の近くでメイズが実っていた拡大家の近くでメイズが実っていた

写真:ジェフ・マバンギラさん拡大ジェフ・マバンギラさん

 教育のことをもう少し追っかけたかったけれど、取材の約束を取り付けることができなかったので、14日は目先を変えて「新しい農家」に話を聞いてみようと考えた。

 ジンバブエがアフリカの優等国から道を踏み外すきっかけの一つは、強引な土地改革にあったといわれる。ジンバブエは1980年に独立したものの、ひよくな農地の70%を5千人足らずの白人が所有するといういびつな状態が続いた。

 土地改革は独立来の課題だったが、進まないうちに2000年ごろ、独立戦争を戦った旧戦士たちが勝手に白人の農場を占拠し始めた。ムガベ大統領はこの状態を逆手にとる形で白人の農場を接収し、土地を持たない黒人に再配分する改革を進めた。これが農業の生産性を下げて経済混乱の元の一つになったとされる。

 02年の大統領選を取材した時、各地で農場が占拠され、白人農場主が襲撃される事件も起きていた。それから10年以上がたって、農地を与えられた人たちがどうしているのか、首都ハラレの近郊で聞いてみようと思った。

 ホウオウボクが赤い花をつける並木道を抜けて、郊外に出た。30キロほど走ると、周りはもう農地ばかりになった。道路脇にたむろしている若者に聞くと、1人が近くの農家だというので彼の家を訪ねた。

 土地改革についてはあまり触れたがる人がいないらしく、モーゼズ・ムトンギザさん(20)もなかなか話したがらなかった。農地は父親の所有で50ヘクタールある。ここにモーゼズさんを含む一家11人が暮らす。農地の配分に応募して02年に200キロ以上離れたところからここに来たという。

 父親は以前も農家で12ヘクタールを親類と一緒に耕していた。移ってきた時、いまの場所は白人農場の牧草地だった。いまはメイズとサトウダイコン、大豆、ポテトを耕し、牛14頭、ヤギ12頭、七面鳥を13羽飼っている。

 家族の暮らしは楽になり、移ってきてみな幸せだという。写真を撮りたいというと、家と畑の写真ならいいが自分の写真は勘弁してくれと言われた。家の近くには大人の背よりもはるかに高く、メイズが実っていた。

 舗装された道まで戻って、さらに話を聞ける農家を探した。道ばたに四輪駆動車が止まっていた。乗っている男性に話しかけたら、逆に色々と質問された。どういう目的で農家の話を聞きたいのか。記事の狙いは何なのか。

 狙いなどなく、ただ11年前に来た時と、何が変わったのか、話が聞きたいだけだと言うと、「私も農家だ」という。

 ジェフ・マガンビラさん(65)は、近くに家があって、60ヘクタールの土地を人に農地用に貸している。自分の農地は別に約60キロ離れた場所に250ヘクタールがあって、そこでポテト、スイートポテト、メイズなどを育てている。

 05年に農地を取得した。父親は農家だったが、マガンビラさんは公務員だった。農地に応募に対し、農具や資金のない人には30ヘクタールまで、ある人には30〜千ヘクタールが与えられたという。マガンビラさんは恵まれた方だった。あてがわれたのは休耕地になっていた白人のたばこ農場だった。

 ちょうど経済危機のさなかで資金繰りが苦しかったが、何とか切り抜け、今は人に農地を貸し、家も2軒所有するようになった。元公務員だけあって、土地改革はもともと避けて通れないものだったという立場だ。「白人農場主の中には、土地の大部分は引き渡しても残って農家として仲良くやっている連中もいる。去った人間はいまごろ後悔しているのでは」と話した。

 近くに住んでいる白人の農家を訪ねた。話を聞きたいと言うと、「私たちは随分長くここにいて、農家をしている。今は選挙を控えて微妙な時期だ。話をすることは、あまりにもリスクが大きすぎる。わかってほしい」と断られた。

 白人農場主がつくる「商業農業者連合」(CFU)を以前に取材した。そのころはムガベ政権を脅かす民主改革運動(MDC)に近い立場だった。ムガベ政権の土地改革の進め方はあまりに強引だとして反対していた。

 CFUの本部を訪ねたら、移転したと言われた。移転先に行ってみると、まだ引っ越しのさなかのような状態だった。数千人いた会員は数百人に減ったというが、会員として名乗り出ることも難しく、完全には把握できていないということだった。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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