メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

11月13日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

石の家、黒人の力、白人の偏見 @グレート・ジンバブエ

写真:丘の遺跡=いずれも16日、グレート・ジンバブエ、江木慎吾撮影拡大丘の遺跡=いずれも16日、グレート・ジンバブエ、江木慎吾撮影

写真:丘の遺跡拡大丘の遺跡

写真:丘の遺跡拡大丘の遺跡

写真:丘の遺跡拡大丘の遺跡

写真:丘の遺跡拡大丘の遺跡

写真:巨大な壁が楕円(だえん)の囲いをつくっている拡大巨大な壁が楕円(だえん)の囲いをつくっている

写真:入り口から、巨大な囲いの中をのぞむ拡大入り口から、巨大な囲いの中をのぞむ

写真:巨大な囲いの端の方に塔が立っている拡大巨大な囲いの端の方に塔が立っている

写真:壁と居住する場の間は回廊のようになっている拡大壁と居住する場の間は回廊のようになっている

写真:丘の遺跡の全景拡大丘の遺跡の全景

 世界遺産歩きを始めたわけではない。ただ、グレート・ジンバブエについては国の名前にもなったことに加え、その考古学的な検証をめぐっては人間の業の深さを浮き彫りにした。だから訪ねてみようと思った。ちょうど週末になったということもある。

 ジンバブエの気候について書いてこなかったのは、ハラレが標高1600メートルほどにあって、夏のいまも過ごしやすいからだ。さわやかな初夏の日差しといったところだろうか。そのハラレから南へ、約320キロの道のりになる。

 見て、感じなければと思ってはいる。だから眠ることはない。でも15カ国目とあって、車の窓から見る風景から受ける刺激はほとんどなくなってしまった。

 道路脇にだけ高い木があって、その向こうにはメイズの畑や、低い木々の林が続く。そんな風景が少し変わってきたと感じたのは、ハラレから200キロほど離れたころだった。

 大きな石を載せた丘が目立つようになってきた。

 マシンゴという、個人的に親しみのある名前の町を過ぎて、約20キロ走ると、グレート・ジンバブエの遺跡群にたどり着く。

 駐車場にはバス1台と車が10台ほど止まっている。土曜日の昼時としては、少ないと言っていいのだろう。入り口で「1人? ガイドもなしに行くのかね」と声をかけられる。

 確かにガイドがいないとわけがわからないけれど、先日のツォディロの反省から、1人静かに回りたいと思う。ここは標高1100メートル。風がやや強く吹いている。

 ジンバブエとは「石の家」のことで、ここはサハラ砂漠以南で最大の石造遺跡になる。約800ヘクタールにわたって広がっている。最初に丘の上の城塞(じょうさい)のような遺跡に向かう。

 息を切らしつつ100メートルほど登ると、巨大な石の周りに城壁のように石が重ねてある。石の一つ一つは、大人なら持てる大きさだ。重ねられただけで、間をつないだり埋めたりするものは何もない。

 石と石の間に壁が築かれ、迷路のように丘の上を取り巻いている。ここは長老が住み、神との対話に使われた神聖な場所でもあったらしい。ワシのような鳥の彫り物がいくつも出土していて、鳥が神と人間をつなぐ役割を果たしていたと説明されている。

 石段は三つ飛ばしぐらいがちょうどいいほど、細かく重ねられている。自然の巨石と、重ねられた石の壁が同じようにこけむしている。風が相変わらず木々の枝をサワサワと揺らしている。

 日本の観光地に比べれば閑散としているけれど、丘の上には高校生ら団体のグループがいくつか訪れていて、なかなか静かにはならない。風が止まり、静けさが訪れると、孤独が襲ってくる。石の冷たさが孤独を増幅するのか、ずっと1人で旅しているからそう感じるのかはわからない。

 ユネスコの説明によると、ここは11世紀から15世紀にかけて地元のショナ人によって築かれた。最大1万人が住んだといわれる。ここにある博物館には13世紀から17世紀と書いてあったけれど。花崗岩(かこうがん)を火で熱し、水をかけてひびを入れて適度な大きさにしたらしい。

 丘から下りて、楕円(だえん)の大きな囲いに向かう。草が払われた上を歩くと、発泡酒のようなさわやかな音がする。巨大な壁が見えてくる。長さが200メートル、高さは高いところで11メートルある。内側から見上げても、外側から見上げても、反対側に少し傾いているように見える。石をたたきながら積み上げて、上の方が下より細くなっているためだ。

 巨大な囲いは、女性の住居だったとも伝えられる。宗教的な意味合いをもつとみられる遺構もある。

 グレート・ジンバブエは当初、旧約聖書に出てくるシバの女王の宮殿と言われた。その後も、アラブやエジプト方面から来た人間がつくったとされた。アフリカ大陸を支配しようとした白人たちは、なかなかこの遺跡が地元に古くからいたショナの人たちの造ったものだと認めなかった。

 自分たちも驚くような石の巨大建築を、自分たちより劣る黒人が造っていたはずがない。民族が民族を力で支配しようとするとき、その力はこんなにもねじ曲がって作用するものなのか。そのことを思い、石をさいて積み上げていった人たちを思い、大きな壁を見上げて圧倒されていた。

 白人支配者の名を冠したローデシアから独立した国は、先祖の築いた巨大な遺構からジンバブエと名付けられた。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

PR情報
検索フォーム

注目コンテンツ

  • 写真

    【&BAZAAR】クルっと変身が楽しい!

    話題の3D&360対応カメラ

  • 写真

    【&TRAVEL】要塞化された薩摩の武家屋敷

    城旅へようこそ

  • 写真

    【&M】斬新なロシアの水ギョーザ

    色気を感じる「ペリメニ」

  • 写真

    【&w】すべての生命に感謝をこめて

    「Creation:」

  • 写真

    好書好日干ししいたけ老夫婦が大活躍

    人気絵本「ほしじいたけ…」

  • 写真

    WEBRONZAGW10連休に反対

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジン現代の社長が語る若き自分

    実績がなくても行動が大切

  • 写真

    T JAPAN復活した「フォアグラ」の魅力

    ギィ・マルタンシェフが語る

  • 写真

    GLOBE+狂言とVRはつながっている

    時代を軽々越える野村萬斎

  • 写真

    sippo獣医師をやめて弟子入り

    異色の落語家・林家卯三郎さん

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ