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憎悪の末に 国庫には217ドルしかない @ハラレ

写真:ハラレの郵便局周辺=いずれも17日、江木慎吾撮影拡大ハラレの郵便局周辺=いずれも17日、江木慎吾撮影

写真:ハラレにできた新しいショッピングモール(後方)拡大ハラレにできた新しいショッピングモール(後方)

写真:中心街も日曜日とあって閑散としている拡大中心街も日曜日とあって閑散としている

 17日は日曜日なので、街を散策しようと考えた。

 ローマ法王ベネディクト16世の退位表明から1週間になろうとしていたが、驚きは次第に引いて退位の日が近づく。法王は85歳という高齢によってカトリックの頂点としての職務遂行が難しくなったことを、退位の理由に掲げていた。

 ここに89歳になろうとしているカトリック教徒がいる。1980年のジンバブエ独立以来、首相として、大統領としてずっとこの国を率いてきた。ムガベ氏は次の大統領選にも出馬の意欲があると言われる。

 多くのアフリカの国で、独立の英雄が政権を担う間は、そのカリスマ性によって矛盾や批判が抑え込まれた。カリスマが政権から去ると重しがとれて矛盾が噴出し、内戦や紛争を引き起こしてきた。

 ジンバブエの場合、独立が遅かったということもあるし、その後の独裁が長く続いているということもあるだろう。独立の英雄が政権を担う間にも矛盾や批判が噴出し、ムガベ政権はずっとその対応に追われてきた。

 ジンバブエの独立後に一時期、訪れた成功の時代の裏には、白人の人種差別政権によって整えられた都市基盤や生産性があったことは否定できない。でも、それは少数の白人を豊かにし、多数の黒人が貧困から抜け出せない植民地支配の残滓(ざんし)だとして、ムガベ政権はぬぐい去ろうとした。

 その最たるものが5千人にも満たない白人農場主が肥沃(ひよく)な土地の7割を支配するジンバブエの土地所有のあり方を改めることだった。交渉が進まないなかで、強引な土地占拠が各地で起きて、その動きに乗る形でムガベ大統領は土地改革を急いだ。

 一方でコンゴ(旧ザイール)紛争への派兵によって財政はひっぱくし、その裏でムガベ氏周辺の資源利権や不正蓄財がささやかれた。独立戦争を戦った旧戦士たちの突き上げもあった。ムガベ氏はこれらの批判をかわすため、常に過去の植民地支配に矛先を向けてきた。

 独立後の民族融和政策から転じて、特に旧宗主国の英国に対して憎悪をあおる発言を繰り返してきた。欧米との関係を決定的に悪化させ、深刻な経済危機を招いた。

 経済危機は、国内に強力な野党勢力を生んだ。2002年からの大統領選挙で、ムガベ大統領がすっきり勝利した選挙はない。そして08年の大統領選後の混乱を収めるため、野党の民主変革運動(MDC)からツァンギライ議長を首相として政権内に取り込まざるを得なかった。

 だが、経済危機は最悪の状態から脱した。土地改革を評価する声も内外から出始めている。政権の腐敗はすさまじいと言われるが、野党を取り込んだ分、批判がムガベ氏のみに突きつけられることは避けられている。

 33年もの間、政権の座に居続ける執念はすさまじいけれど、もはや時はそれほど残されてはいない。ジンバブエがかつてのように、発展の道をたどれるかどうかは、植民地支配との闘いを次代に引き継がず、民族融和と国際協調へと再びかじを切ることができるかにかかっている。

 日曜日の昼、11年前の記憶をたぐりながらハラレの中心部を散歩した。これまで多くの首都をそうして歩いてきたけれど、これほど町並みが変わっていない都市はなかったように思う。変わらない分、色あせている。

 ナイロビ支局時代にハラレを訪れた時、かの世界的なフライドチキン店をサハラ以南のアフリカで初めて見た。南アフリカを除いてだけれど。店があったあたりを探したが、なくなっていた。

 アフリカが02年から経済発展の時期を迎えるのと入れ替わりに、ジンバブエは天文学的なインフレ時代に入っていった。フライドチキンは他のアフリカの国に店舗を広げ、ハラレからは姿を消した。

 別にフライドチキン店の存在がそのまま国の繁栄を示すわけではないけれど、象徴的ではある。かつて食事したほかの食堂も、店を閉めていた。

 休日だけにおおかたの店は閉まり、人通りも、車の往来も少ない。筋ごとにある教会から、賛美歌が漏れ、通りに響いていた。公園には恋人たちが語らい、家族が遊び、1人本をひざに載せる人もいる。

 財政危機は相変わらずで、つい先日、国庫に217ドルしかないと伝えられたばかりだ。でも、新憲法案が3月に国民投票にかけられることが決まった。いい方向に変わっていく気配は感じる。

 フライドチキン店も、どうやら帰ってくるらしい。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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