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11月18日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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奇妙な朝、停戦ラインはどこに? @ダマラ

写真:ダマラ市の看板前で、ゴネンジ市長とともに=いずれも27日、中野智明撮影拡大ダマラ市の看板前で、ゴネンジ市長とともに=いずれも27日、中野智明撮影

写真:怖くて森に逃げたのだと話す、小学校のマヤコウ先生(右)拡大怖くて森に逃げたのだと話す、小学校のマヤコウ先生(右)

写真:雑貨店主のムーサさん拡大雑貨店主のムーサさん

写真:ダマラの少年拡大ダマラの少年

写真:写真は恥ずかしい。写真は怖い拡大写真は恥ずかしい。写真は怖い

写真:道ばたでマニョク(キャッサバ)を売っていた拡大道ばたでマニョク(キャッサバ)を売っていた

 27日は奇妙な朝を迎えた。知らないおばさんに突然、声をかけられた。テレビとか大統領とか言っている。何だろう。そのわけはしばらく後にわかった。

 前日の大統領訪問が地元のテレビで放送され、それも「中央アフリカと日本の新たな友好関係に期待がもてる」などとやったらしい。単に風に吹かれて来ただけなのにと言いたかったが、その後、いろんなところでこの話題が出て、ほんの少し得もしたので、まあ、よしとしよう。

 ブッシュミートをめぐって、偉そうなことを言ったけれど、この日はアフリカ中部で問題になっている野生動物の密猟の話を取材しようと考えた。その取材相手もテレビを見たようで、通訳のウィリアムさんは取材の約束を取り付けようとしていきなり「おめでとう」と言われたらしい。なにぶん、日本人記者2人を引き連れて大統領官邸を訪れた人物と紹介されたようだ。

 それはそれでよかったのだが、取材相手が約束の時間を延ばし延ばしにするので、昼を過ぎて何もできていなかった。そこで思い切って方針転換して、前々日に訪れた停戦ラインのさらに向こうのダマラ市に行くことにした。短気は損気で、これが結局、裏目に出る。

 ダマラはバンギから75キロほど。車で1時間ちょっとの距離にある。今までの説明では、ここに停戦ラインがあったものの今は反政府勢力の勢力下にあるということだった。反政府勢力にも取材したい。ここまで行くには許可が必要だということで、ちゃんと許可証を持参している。

 一昨日と同じ道なので、途中は省く。最新の停戦ラインだと説明を受けていたバゴーの検問を越えてさらに進む。反政府勢力の勢力下にある集落は何が違うのかと目をこらすが、道ばたの椅子に寝そべっている人もいれば、走っている子どももいる。

 さらに検問が近づいてきた。さては反政府勢力の検問かと身構えたが、いたのは政府軍だった。何かがおかしい。さらに別の検問もあって、そこにいたのも政府軍の兵士だった。

 バンギを出て1時間半ほどでダマラの町に入った。そこらへんじゅうに兵士がいて、半分が政府軍、半分は停戦合意が守られるかどうか監視するために派遣された中部アフリカ多国籍軍(FOMAC)の兵士だ。反政府勢力の姿は、全く見られない。

 ならば、反政府勢力のいるところまで行こうというと、ウィリアムさんの表情がにわかに曇り、「そこまで行くのは危険だ」と言い出す。情勢が変化しているようだと言うのだが、そんなことはここに来るまで一言も聞いていない。

 近くにいた政府軍兵士に聞いてみると、ここから先に行くには、FOMACの同行が必要で、バンギでその手続きをしなければならないという。ここまで来てそれは厳しい。

 仕方がないので、市長を訪ねて全体の状況の説明を受けることにした。ゴネンジ市長(63)は自宅で昼食をとっていたが、ウィリアムさんが紹介してくれると「大統領に会った記者たちだね」とにこやかに迎えてくれた。ほんのちょっと得したとは、このことだ。

 市長によると、市の中心部にまで反政府勢力が攻めてきたことはない。いま彼らがいるのは中心部から10キロほど離れた場所で、さらにもう15キロ離れた場所に拠点があるという。反政府勢力は時折、市に買い物に訪れるが、その時も必ずFOMACの兵士に伴われて来ることになっている。

 何やら、聞いていた状況とはだいぶ違う。でも、一昨日に訪れたングアカ村はダマラから10キロほど首都バンギの方へ戻ったところにあり、そこには反政府勢力が来たと言っていた。ダマラには来ずに、より首都に近い村に来るとはどういうことかと尋ねると、迂回(うかい)路があるのだと説明してくれた。

 停戦ラインもあっちにいったり、こっちにいったりしているようで、それなら停戦ラインの意味がないと思うが、市長に言っても仕方がない。

 市内を車で走ると、まだ午後3時前なのにFOMACの兵士らがビールを飲んでいる。緊迫の停戦ラインという感じでもない。

 市場近くにいた男性に話を聞いてみた。今年1月、反政府勢力が10キロまで迫ったと聞いて、荷物をまとめて家族と森の中へ逃げたという。先日の村と同じ反応だ。2週間ほどいて、自宅に戻ったのはFOMACが展開した後だったという。

 マヤコウさん(34)と名乗った男性は地元の小学校の先生だという。市内の小学校は今年に入って閉鎖されたままになっている。やはり市民生活は大いに影響を受けていた。

 雑貨店を営むムーサさん(53)によると、北部にある砂糖工場が破壊されて、砂糖などの値が上がった。市民が苦しんでいる時に値上げしたくなかったが、1キロあたり900フランから千フランに値上げした。客から文句を言われるが仕方がない。商品はすべてバンギから仕入れている。人も物も行き来は随分減ったと話した。

 結局、この日も反政府勢力の支配地に入れなかった。計算外だった。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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