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09月25日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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密猟に悩む国々 写真撮影できたのは… @バミャ

写真:ヤリッセムさん=28日、バンギ、いずれも中野智明氏撮影拡大ヤリッセムさん=28日、バンギ、いずれも中野智明氏撮影

写真:ゾコエさん。後ろは環境の重要性が書かれた森林資源省の門=1日、バンギ拡大ゾコエさん。後ろは環境の重要性が書かれた森林資源省の門=1日、バンギ

写真:チンパンジーのボアリ=以下、1日、バミャ拡大チンパンジーのボアリ=以下、1日、バミャ

写真:なぜか手をつないでくるので拡大なぜか手をつないでくるので

写真:ダイカ。とてもすばしっこい拡大ダイカ。とてもすばしっこい

写真:猿猿の仲拡大猿猿の仲

 残り日数が2日になって、追いたいテーマも二つ。反政府勢力の支配地の様子を見に行くことと、中部アフリカ一帯で横行する密猟の話を少し聞くこと。どちらも1日では終わりそうにない。前日、反政府勢力が押さえている地域に入ることができなかったのが響いている。

 中野智明さんは、読者の関心が高い密猟の話に集中した方がいいのでは、と言ってくれる。でも、反政府勢力の支配地に行きたいと最初に書いた手前、そちらを優先したい。28日は、その反政府勢力の支配地に入る許可とりから始めた。

 といっても実際に飛び回ったのはウィリアムさんだ。合間を縫って、世界自然保護基金(WWF)の中央アフリカのディレクター、ヤリッセムさん(52)とのインタビューも設定してくれた。

 密猟はアフリカ中を悩ませているが、中部アフリカではとりわけゾウの密猟が大きな問題になっている。中央アフリカの内紛につけ込み、東隣のスーダンから重武装した密猟団が潜入、中央アフリカだけでなくカメルーンにまで足を延ばしているといわれる。カメルーンは軍に特別な部隊を設け対抗策を立てているが、中央アフリカの対策は後手に回っている。

 ヤリッセムさんによると昨年、カメルーンのブーバンジダ国立公園で200頭のゾウが武装した密猟団に殺された。これら密猟団の多くは数十人から100人以上の集団で馬やラクダに乗って移動し、ロケット砲などで武装している。

 密猟団の多くはスーダンから来ているとヤリッセムさんは言う。スーダンとカメルーンは1200キロ以上離れていて、間に中央アフリカがある。密猟団は中央アフリカの政情不安にかこつけて同国や北のチャドをつたってカメルーンまで移動しているという。

 銃で武装している現地のエコガイドもいるが、密猟団の銃撃能力は軍のそれに匹敵する。11月から翌4月ごろの乾期に活動し、多くは引き揚げるが、中央アフリカ内に案内役が潜伏しているらしい。

 奪った象牙の輸送については、中央アフリカやカメルーンの国境をまたいだ国際的な犯罪組織がかかわっているとWWFはみている。カメルーンのドゥアラやナイジェリアから船で輸送され、バンコクなどをへて最大の消費地の中国に消えるという。

 いま、中央アフリカのWWFが問題にしているのが、同国の西南端にあるザンガサンガ保護区で中国企業がダイヤの採掘をしようとしていることだ。一帯はカメルーン、コンゴ共和国に連なる動植物の宝庫で、サンガ川の流域は昨年、ユネスコの世界自然遺産に登録されたばかりだ。

 中国企業はすでにボジゼ大統領から採掘許可を得ているが、その許可地域は保護区内にあり、地元住民にも採掘が許されていない場所だという。

 採掘を許せば、他の開発を止められなくなる。それだけではなく、人が入り込むことでゾウなどの密猟を助長するとヤリッセムさんは心配する。象牙の消費地とみられる中国の企業が入ることにも、警戒を強めている。

 中央アフリカには北東部にも世界自然遺産に登録されたマノヴォ=グンダ・サン・フローリス国立公園がある。しかし80年代以降、密猟にさらされ、ゾウやサイの数が激減、危機に直面する世界遺産になっている。密猟団が中央アフリカ西南端やカメルーンにまで足を伸ばすのは、近場の豊かな自然をすでに渉猟したということがある。

 ザンガサンガ保護区長のゾコエさん(37)によると、同保護区での密猟は古くからあったものの、ブッシュミートを求める住民によるものだった。それが変わったのは5年ほど前で、密猟者がAK47銃で武装するようになった。さらに重火器を持つ連中も出てきて、一帯では昨年だけで重火器を含む10の銃が押収された。

 今年1月、ザンガサンガ保護区内に、軍、憲兵隊、森林水資源省職員ら90人からなる密猟対策班が発足した。

 中央アフリカ、コンゴ共和国、カメルーンにまたがる一帯について、カメルーン、コンゴ共和国は密猟対策に本腰を入れている。中央アフリカは政情不安によって自然保護に力を振り向ける余裕がなかったが、国際社会の圧力を受けてようやく動き出したとゾコエさんは言う。

 ゾコエさんとは28日昼にバンギ市内のカフェで会った。途中、密猟問題での軍との打ち合わせが入ったと言ってそちらに向かった。こちらは、密猟の話はいったん終えて反政府勢力の支配地に行く許可申請の結果待ちとなった。

 結局、許可は下りなかった。人道援助団体にすら許可は出していないとのことだった。この旅の目標だった場所に行けなくなってしまった。

 風に吹かれていればままあることだ、と気を取り直す。日付が変わって1日、押収した象牙とともに写真を撮る約束をゾコエさんに取り付けた。ゾコエさんとは、象牙が保管されている森林水資源省で待ち合わせた。ところが、省の次官が写真は撮らせないと言い出した。

 反政府勢力セレカと政府との停戦合意を受けて、何人かの閣僚がセレカから入閣した。その一人が森林水資源省の大臣だった。代わったばかりの大臣を刺激するかもしれない写真は撮らせない。そう次官は言い出した。

 こんなところにまで政情不安のあおりを受けるとは思わなかった。困ったのは密猟の話を書こうとしているのに、動物の写真さえ撮れていないことだ。そこで、バンギの一番もよりの自然保護区か国立公園に行って、写真だけでも撮ろうということになった。

 100キロぐらいのところにその公園はあるとウィリアムさんは言う。それなら昼前に出て夕方には帰ってくることができるだろうと出発した。

 この日は未明に集中豪雨といってもいい状態になった。そのせいか、日中は晴れたものの以前ほど暑さを感じない。

 窓をいっぱいにあけて、少し湿り気を帯びた風を受ける。写真を撮ることが目的なので、少し気が楽だ。熱を含んだ路面を使い、沿道の農家がマニョク(キャッサバ)を干している。ちょうど路肩あたりに、その白い帯が飛び飛びにできている。独特のすえたようなにおいが車内にまで入り込む。

 周りの風景がサバンナ風になったと思っていたら、ボアリの町についた。そこのホテルから案内係を乗せて、さらに細い道を走る。湖が見えてきて、舗装された道路から脇の砂道に入り、期待が高まる。と、右手にフェンスが見えて、車はとまった。

 そこが目的地だという。木の扉を開けてフェンスの中に入ると、チンパンジーがいる。コロブスのようなサルがいる。バブーンがいる。カメ、小さな鹿のようなダイカ、ホロホロ鳥、うさぎもいる。

 国立公園だと言っていた場所は、小さなホテルが経営するミニ動物園だった。がくぜんとするが、動物はいる。なぜかメスのチンパンジーのボアリに手をつながれて、園内をうろうろと回った。

 手を握るというのではない、絶妙なつなぎかげんだ。こちらの手に少し、体重をかけてきて、もう片方の手を地面について歩く。6歳というけれどかなり小さくて、仕方なくこちらはかがんで年寄くさく歩く。たまに止まって、互いに腰を落とすとそわそわと視線をそらす。恥ずかしがり屋で怖がりのようだ。

 「私も初めて来た。公園だと思っていた」とウィリアムさんは言う。何をしに来たのか、よくわからない。でも、まあ、動物の写真は撮ることができた。ゾウの密猟とはあまり関係がないけれど。こじつけめいているかもしれないが、ダイカだって、チンパンジーだって密猟によってブッシュミートにされている。

 行き当たりばったりはいつものことだけど、今回も締めというには力の抜ける旅だなあ、と思いながら帰りの車で風に当たる。夜中の雨の効力が切れてきたのか、夕方が近づくにつれ、風は熱く変わる。今のうちに、鼻から新鮮な空気をたくさん吸っておかなくては。なにぶん、日本ではすでに大量の花粉が飛んでいるらしいから。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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