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太平洋沖に延びる南海トラフでの巨大地震対策を検討する国の有識者会議は18日、マグニチュード(M)9・1の地震が起きると、最悪クラスで220兆3千億円の経済被害が出るとの想定を発表した。国内総生産(GDP)の42%、東日本大震災の10倍を超える規模。今回の公表で死傷者数などを含む被害想定が出そろったことになり、国は防災対策の基本方針を盛り込む大綱の策定を急ぐ。
あなたの街の被害予測は想定額には、原発事故や巨大地震後に懸念される火山の噴火の影響は含まれていない。また、同会議は「巨大地震の発生は千年に一度、あるいはもっと低い頻度」と指摘。そのうえで「東日本大震災の教訓を踏まえ、想定外をなくすという観点からとりまとめた。耐震化や防火対策を進めれば被害は確実に減らせる」とし、118兆円に半減できるとした試算も出した。
同会議は「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ(WG)」(主査=河田恵昭・関西大教授)で、安倍晋三首相が会長の中央防災会議のもとで昨春から議論を進めてきた。
WGの想定によると、太平洋沿岸が最悪クラスの揺れと津波に襲われた場合、建物や工場内の設備が被災する「直接被害」が40都府県で169兆5千億円に達すると推計。大都市部の愛知県で30兆7千億円、大阪府で24兆円に達し、30メートル超の津波が押し寄せるとされる静岡県と高知県でそれぞれ19兆9千億円、10兆6千億円の被害が出るとした。沿岸部の平野に観光施設などが立ち並ぶ宮崎県も4兆8千億円になるという。
さらに、製品やサービスの提供が不可能になることで生じる損失は被災後1年間で44兆7千億円、交通の寸断で6兆1千億円分の影響が出るとしている。
WGはインフラやライフラインの被災規模も発表。上水道は3440万人、下水道は3210万人が断水で使えず、停電も2710万軒に拡大する。中部、関西、高知、大分、宮崎の5空港が津波で浸水し、このうち高知と宮崎は半分以上水浸しになるとみている。
地震発生から1週間で、食料が9600万食、飲料水が1億4500万リットル不足し、500万人が避難所で暮らすことになると想定。震災で生じる廃棄物は東日本大震災の約12倍にあたる2億5千万トンに達するとみている。
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《解説》千年に一度以下の頻度だが、明日起きるかもしれない。南海トラフ巨大地震の経済被害想定を出した国の有識者会議は、こうした考えに立って最悪の数字を導き出した。最大でマグニチュード(M)8程度とされた宮城県沖で、M9が起きた東日本大震災を踏まえた対応だ。
有識者会議は昨夏、先に死者32万3千人、全壊・焼失建物238万6千棟とする想定を公表した。この被害を前提に太平洋沿岸のライフラインや交通網、生産力、サービスの提供など主要な産業基盤が甚大な打撃を受けたケースを考慮。その結果、経済被害の想定は2003年に公表した81兆円の3倍近くに膨らんだ。
「被害ゼロを目指すのは現実的ではない」。有識者会議は想定公表に合わせ、巨大地震への備えのあり方を示した。国は対策大綱と防災戦略の策定に動き出すことになるが、GDPの4割を超える被害規模に対して多額の予算をつぎ込んでも限界がある。
備蓄、家具の固定、建物の耐震化など、市民や企業にできることは多い。「減災」をあきらめないことが大切だ。(赤井陽介)
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〈南海トラフ〉 静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く深さ約4千メートルの海底のくぼみ(トラフ)。海側の岩板が陸側の岩板の下に沈み込む境界にあり、1600年代以降だけでもマグニチュード(M)7〜8級の地震が繰り返し起きている。東日本大震災後、国は巨大地震発生時の被害想定の見直しに着手。最悪クラスでM9・1、20メートル以上の津波が8都県(都は島しょ部)に押し寄せ、32万3千人の死者が出るとした想定を昨年8月にまとめた。
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朝日新聞デジタルでは、記事に加え、お住まいの地域で予想される被害を検索機能で確かめられます。各地の津波高がわかる地図や動画も。http://www.asahi.com/special/nankai_trough/
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朝日新聞社会部