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09月26日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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「神秘の湖」と桃色の夕日 @ビクトリア湖

写真:フェリーから降りるところではなく、これは車を乗せるところ拡大フェリーから降りるところではなく、これは車を乗せるところ

写真:まさに海という感じ拡大まさに海という感じ

写真:甲板を渡る風はさわやか拡大甲板を渡る風はさわやか

写真:夕暮れで日差しはいくぶんやわらかに拡大夕暮れで日差しはいくぶんやわらかに

写真:島の緑が鮮やかに見えた拡大島の緑が鮮やかに見えた

写真:島は日ぐれて夕波はなく=いずれも江木慎吾撮影拡大島は日ぐれて夕波はなく=いずれも江木慎吾撮影

 ビクトリア湖へ。このアフリカ最大の湖が初めて強く印象に残ったのは、中島らもさんの小説「ガダラの豚」を一気読みした時だった。もう新聞記者をしていたが、その湖に来ることになるとは思いもせず、自分の中ではずっと呪術と神秘をまとった湖だった。

 ナイロビ支局に勤務したときに、ケニア側の湖畔にあるキスムの町には行った。今回、ウガンダのカンパラから1時間ほどにあるナキウォコの桟橋からフェリーに乗って、セセ諸島を目指した。

 湖の標高は1100メートルほどで、さほど暑さは感じない。GPS装置を見ると、船はだいたい時速18キロで進んでいる。しばらくすると、GPSの緯度表示がN(北緯)からS(南緯)に変わったことに気づいた。

 残念ながら水はきれいとは言い難い。ビクトリア湖はタンガニーカ湖やマラウイ湖と違って水深が浅い。富栄養化などによる水質の悪化に悩まされてきた。

 湖はタンザニア、ケニア、ウガンダに領有されていて、ケニアとウガンダの間では最近までミギンゴ島というサッカーピッチ程度の島をめぐって領有権争いがあった。ナイルパーチという魚の豊かな漁場が周囲にあったためだ。

 フェリーは車が6、7台乗ると、もういっぱい。船室は1等と2等に分かれ、それぞれ1人1万4千シリング(約450円)と5千シリング。座席の間にテーブルがあるかないかの差だ。

 船の中では簡単な食事も売られていて、1等の人たちはポテトやソーセージや魚を揚げた料理をテーブルに並べて楽しんでいる。揚げ物のいいにおいがする。昼間からビールを飲んでいる人がたくさんいる。

 湖を渡る風に吹かれながら飲むとうまいだろうなあと思いつつ、我慢する。ナイロビの外では禁酒することに決めている。なぜだかわからないけれど。

 1時間もすると、桟橋のあった岸は見えなくなったが、ずっとどこかに島影はあった。遠い島は蜃気楼(しんきろう)のように浮かんで見える。海と変わらない。ただ、当たり前だが風に粘りけがない。しおの香りもしない。どこまでいっても水の色が抹茶のような色のままで、青が深まったり、澄んできたりすることもない。

 船の周りにはパラパラと鳥がいて、ほとんどはウの仲間のようだった。時折、コサギほどの大きさの白い鳥も飛んでいる。

 3時間半かけてセセ諸島最大のブガラ島に着いた。60キロほどの航行だったはずだが、GPSの記録を確認すると直線距離では48キロの移動だった。

 ちょうど午後5時半で、島の緑がやけに鮮やかに見える。昼間は光線が強すぎて緑が映えないのだ、きっと。船着き場の横には牛がいて、その牛がはんでいる草まで鮮やかだ。

 コテージ風のホテルの部屋の目の前は湖で、岸から10メートルほどに草ぶきのパラソルが厳島神社の鳥居みたいに水の上に立っている。鏡のようになった湖面に合わせるようにあたりは静まり、パラソルの向こうに桃色のような日が落ちる。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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