メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

09月22日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

「アブラヤシは捨てるところがない」 @ブガラ島

写真:えいやっと、長く重いへらのような道具で突き刺すと……拡大えいやっと、長く重いへらのような道具で突き刺すと……

写真:どっさりと、重い実の房が落ちる拡大どっさりと、重い実の房が落ちる

写真:実を取り除くと房はこんな感じに拡大実を取り除くと房はこんな感じに

写真:房と分けられた実はコンベヤーに載せられて拡大房と分けられた実はコンベヤーに載せられて

写真:さらに熱せられ拡大さらに熱せられ

写真:搾られて、茶色っぽいパーム油ができる拡大搾られて、茶色っぽいパーム油ができる

写真:どこまでいっても、アブラヤシの林拡大どこまでいっても、アブラヤシの林

写真:はしけに乗って、島を離れる=いずれも江木慎吾撮影拡大はしけに乗って、島を離れる=いずれも江木慎吾撮影

 ブガラの島に来たのは、島の姿がここ10年の間に大きく変わったからだ。前日、島にフェリーが近づいた時にぼんやり眺めていて水際の低地はジャングルなのに、湖面から20〜30メートルの高台にはうっそうとした密林がないことに気づいた。

 車で島の南西に出かけると、尾根をつたう土の道の周囲はあらかたアブラヤシの林になっていた。漁業とちょっとしたリゾートの島を変えたのが、このプランテーションだった。

 ウガンダはアブラヤシが自生するにもかかわらず、食用油を輸入に頼っていた。この状況を変え雇用を創出するために、ブガラ島で大規模なアブラヤシのプランテーションのための土地を政府が売り渡した。

 2000年代の早い段階から一斉に開発が始まり、09年ごろからは収穫できるようになった。島には10年に創業した国内初のヤシ油の工場があって、収穫されたアブラヤシはここで精製される。

 ヤシの実を落とす作業をしている若者がいたので話を聞こうとすると、仲間が寄ってきた。みな仕事がなくてウガンダ東部の町からここに来て働いているという。頑張って収穫すると1日に2万シリング、770円ほどになることもあると23歳の男性は言う。島にずっと住むつもりはなく、いわば出稼ぎ状態のようだ。

 パーム油の工場を訪ねてみると、技術者のサイモンさんが快く工場を案内してくれた。「アブラヤシは捨てるところがない」と自慢げに言う。

 房を取り除き、実の質によって圧搾しやすくするために、何度かゆでる工程をへる。搾って油をとった時に出るかすは、土地の肥料として還元される。圧搾によっても泥状にとどまる部分が出てくるので、これを搾るとさらに油とかすにわかれる。このときのかすは、燃料として使われて工場の電気をつくっている。

 最後に残るのは種の中の核の部分だが、これは高級な油になるのだという。かじってみると、ナッツの味がした。

 食用油やマーガリン、せっけんなどを国内で生産できて、雇用にも役立つ。工場の電気や肥料まで作り出してしまう。実は、エンテベからここに向かうフェリーも、このパーム油計画の一環として開通したそうで人の行き来も随分増えた。

 いい話に聞こえる。でも、もちろん裏がある。

 島の植生は大きく変わってしまった。ヤシしかない土地が延々と続く。一気に木を伐採したため、表土の流出が起きてビクトリア湖の水質にも悪い影響を与えていると環境保護団体は指摘する。

 密林が残る場所の道を車で走ると、アフリカによくいる小さな猿に出会う。かわいいなあと思うのだけれど、道に猿がいること自体、あまりよいことではないようにも思える。島の生態系も破壊されていると環境保護派は警鐘を鳴らす。

 ウガンダ本土に戻るため、車で1時間ほど走って島の西端にたどり着いた。そこにははしけが待っていて、向こう岸まで30分、無料で渡してくれた。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

PR情報
検索フォーム

注目コンテンツ