昨夜、というのは22日のことだが、ウガンダ西部のムバララのホテルでシャワーを浴びようとしたら、コーヒー色の水が出てきた。透明な水を期待しているわけではないけれど、さすがにコーヒー色となると浴びる意味があるのか疑問になり、そのまま寝た。
でも2日連続で体を洗っていないので、朝、浴びたくなって蛇口をひねったら麦茶色になっていた。これならば許容範囲だろうと、朝食前にぬるいシャワーをそそくさと浴びた。
ウガンダに来て毎日、バナナを食べている。けさも食べた。色んな種類のバナナがここにはあって、大きく分けるとマトケと呼ばれる甘くないのと、メンブに代表される甘いのがある。
マトケは主食で、グレービーやシチューのようなものをかけて食べることもある。何もつけないとどんな味かというと、甘くないバナナとしか言いようがない。バナナから甘さをとったら何が残るのかと突き詰められれば、ほっこりしたふかしイモの食感と味わいとでも言おうか。嫌いではない。
13年前に初めてこの国に来た時、原稿に「分け入っても分け入ってもバナナ園」というようなことを書いた。それほどバナナが目につく。バナナの葉は少し離れて見ると緑のプロペラのようで、眺めていると明るい気分になる。
きょうの道行きは、ウガンダの南西部へと入ってゆく。ビクトリア湖畔の湿原地帯から900メートルほどのぼり、地元の人たちが「アフリカのスイス」と呼ぶルワンダとの国境付近へと入る。家畜が目につく地帯を抜けて、タマネギ、キャベツ、トマト畑の多い地域だ。
集落があると、店がある。れんが造りの店の壁には色鮮やかな広告が描かれている。時代を映して携帯電話会社のものが多い。その一つに「『ウガンダ・クレーンズ』を応援しています」というものがあった。
ウガンダ・クレーンズとはこの国のサッカー代表チームで、クレーンは鶴のことだ。この国の国鳥がホオジロカンムリヅルで、国旗にも国章にもデザインされている。
道ばたにその国鳥が、やはり、つがいでいた。なるほど、頭の上に冠を載せているような、気品のある姿だ。写真を撮ろうと車を降りたら、独特の警戒の鳴き声を上げ始めた。非難されているような気になり、それ以上近寄るのをやめた。
車で走っていると、十字架を先頭に逆方向に歩いてゆく集団に出会う。歌っている人もいる。19世紀後半、当時のブガンダ王国の国王に数十人のキリスト教徒が虐殺される出来事があった。この人たちを殉教者として悼み、毎年6月3日は殉教者の日として休日になっている。
その日に合わせ、首都カンパラ近郊にキリスト教徒たちが集まる。道を歩いているのは、その巡礼の人たちだ。ウガンダだけでなくブルンジなど周辺国からも訪れ、2週間ほどかけて歩く人たちもいる。
ここには信心深い人たちが多い。あすは、そんな人々の信仰心を踏みにじった悲劇の現場に行く。

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。