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11月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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エボラ熱の街で 感染の恐怖、拭い去った握手 @グル

写真:グルのラチュル病院の入り口。左端がエボラ出血熱の患者の治療の末、感染して亡くなったマシュー・ルキヤ医師拡大グルのラチュル病院の入り口。左端がエボラ出血熱の患者の治療の末、感染して亡くなったマシュー・ルキヤ医師

写真:グルの中心部拡大グルの中心部

写真:グルの町はずれ=いずれも江木慎吾撮影拡大グルの町はずれ=いずれも江木慎吾撮影

 グルはウガンダ北部、南スーダンへ向かう幹線道路にある。2000年、この町をきわめて致死率の高い感染症のエボラ出血熱が襲い、170人以上が死亡した。うち、13人が地元のラチュル病院の医療従事者だった。

 まだ患者がいたものの、下火になってグルに入った。当時はウガンダ政府軍と反政府武装勢力「神の抵抗軍(LRA)」の戦闘がウガンダ北部で続いていて、車で行くのは危険だった。そのため、プロペラ機でグルまで飛んだ。

 町は閑散としていた。ラチュル病院は中心から少し外れた場所にあり、バラックのような病棟がいくつかある小さな病院だった。隔離病棟がなく、結核病棟を急きょエボラ専門に仕立てていた。出入りする人たちはマスクと手袋をしていた。そのままの姿で休み時間にトランプをする人たちもいた。

 消毒液の強いにおいが、しみてくるように感じた。

 エボラは感染者の体液、血液に触れることによって感染する。その流行によって人々の慣習が変わった。人と会っても握手を交わさなくなった。亡くなった人の遺体を手で洗い清めることもしなくなった。取材時も、だれからも握手を求められなかったし、こちらも手を差し出さなかった。

 今回はウガンダを回る最後にグルの町を訪れようと思った。でも、旅程に無理があって、ほんの駆け足の訪問になってしまった。

 前日に泊まったマシンディからグルに着いたのは昼前だった。病院に行き着いて見ると、00年とは様変わりして大きな病院になっていた。病院の入り口にエボラとの闘いで亡くなったマシュー・ルキヤ医師らの肖像があった。

 見覚えのある建物は一つしかなく、それがかつてのエボラ病棟だった。周りには米国の支援で立派な建物ができていた。事務棟に行くとエボラについて注意を喚起するポスターが貼ってあった。古びていて、だいぶ前からあるようだ。

 シプリアン・オピラ病院長の説明では、病院はエボラを始めとする感染症などの検査、治療にあたる病院になった。隔離病棟もできて、いまは入院用480床を抱える地域の中核病院だ。医師、看護師、麻酔技師を訓練する大学も併設されている。

 あいさつしたとき、オピラ医師は何のためらいもなく右手を差し出した。町でも人々が握手を交わす姿を方々で見かけた。13年もへて当たり前とも感じるが、エボラに襲われる以前の姿を取り戻しているようだ。

 遺体を清める慣習はどうだろう。「残念ながら」とオピラ医師は切り出した。「昔からの慣習はなかなか変えられないようです。すっかり元にもどってしまいました」

 医師の立場からは残念、ということになるのだろう。でも、それは社会の復元力とも言えるのではないだろうか。「そう、もし万が一、再びエボラのような事態に襲われたら、どのようにふるまうべきか、みんなわかっています。まだ、あの記憶は消えていませんから」。そうオピラ医師は付け加えた。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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