【動画】ナイジェリアのライブ音楽 |
アフリカで日本より人口の多い国はナイジェリアだけ。北東部3州に非常事態宣言が出て、軍事作戦が続いている。イスラム武装勢力のボコ・ハラムが3年ほど前から勢力を伸ばし、各地で爆弾テロ事件などを起こしているためだ。
3州では作戦の一部として携帯電話も通じなくしている。何が起きているか行ってみたいところだが、中野智明さん旧知の地元通信社の記者は、特に外国人には危険だという。軍の掃討作戦に一般人も巻き込まれていると伝えられている。
3州は無理にしても、その緊張が少しは感じられる場所までということで、ボコ・ハラムのテロを昨年来受けてきた北部の中心都市カノに2日から行くことにした。その前に少しやわらかい話もと思い、ライブ音楽が聴ける場所に行った。土曜日の晩だった。
告白すれば、ナイロビ以外で飲酒せずという禁をここであっさり破ってしまった。酒を飲んでわかることもあると、さる人物に諭されたのがきっかけだが、薄弱な意思がぐらついていたのは隠しようもない。
中野さんの知り合いの写真記者兼ミュージシャンのヘンリー・チュクエドさんが、ライブをやっているホテルを紹介してくれた。後で合流するというので、中野さんと2人で先に演奏を楽しむことにした。
ホテルの庭にしつらえたステージの、前のテーブルに陣取った。ホテルにナイジェリア音楽を聴きに来てミネラルウオーターもないだろうと、地元ビール「スター」を飲み始めた。
横浜でみんながアフリカの発展について考えているときにビール片手に音楽でいいのかという問題もあるが、悩まないことにした。ずっと考えてはいる。休むに似たりではあるけれど。
嫌な予感はした。ステージ前には小さな子どもがとんだりはねたりしている。誕生パーティーみたいだ。
コウモリが群れ飛ぶ薄暮のうちに演奏は始まった。
「サバナ・チャム・チャム・バンド」はボーカル2人にキーボード、ベース、ドラムからなる。のっけからビートルズの「レット・イット・ビー」と来た。スタンダードポップスが延々続き、客の中の1歳になる赤ちゃんの誕生祝いの曲も終わり、ビールの2本目もなくなって、やっとヘンリーさんがやってきた。
CDも出しているとあってさすがに「顔」らしく、演奏中もかまわずバンドの面々とあいさつをかわし、「ナイジェリア音楽をやってくれ」と言ったのだろう。アフリカっぽいビートのきいた演奏に変わった。
鳥肌が立つような演奏は望むべくもないと、すでに素人にもわかっていた。でも、ここからヘンリーさんがステージを乗っ取ったのには驚いた。「金持ちも貧乏人も、同じ神がつくった。だから金持ちも貧乏人も変わらない」と歌う「アナタメ」、よくわからないけれど「マゴジョー・ニゲビョー」と繰り返す歌を、汗をぬぐいつつ熱唱した。
そこまでやってくれたから仕方ない、誘われたのでこちらも感謝の気持ちを込めて踊り、唱和した。踊りも節もめちゃくちゃだったのは言うまでもない。
夜9時ごろに去った時、客は2組に減っていた。

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。