ナイジェリア南部デルタ州の石油都市としてウォリは開けた。この国の豊かなエネルギー資源は地元を潤していないと言われる。ウォリの街並みは、その通りに見える。
ガソリンが1リットルあたり60円ほどだから、恩恵はある。でも、穴ぼこだらけの通り、それに粗末なつくりの家々が並ぶ。
パイプラインなどから違法に取った石油を闇で精製している人たちに取材ができそうだと聞いた。そこで、間をとりもってくれる人物と一緒に、その場所に向かった。途中で別の若者を車に乗せる。何人かが間に入るらしい。さらに街角で別の人物と接触し、この人物がその闇製油所の中心人物に話をつけるということになった。
その間、町の食堂で待機していたが、一向に連絡がない。数日前に違法な場所が摘発を受けたらしく、警戒しているようだ。ナイジェリアでは随分前から、石油施設から石油製品が盗まれる事件が後を絶たない。時に製品に引火して火災になり、多くの死者を出す。
待てど暮らせど連絡がないので、出直そうということになった。ウォリの周辺では、外国人が拉致される事件が起きているので、変なところに出向いて事件のネタになるのも困る。
半日つぶれてしまった。午後は石油施設から出る炎を利用してキャッサバを乾かしている現場にでかけることにした。
オウェルウェという町のはずれに石油の精製施設があって、そこからパイプラインが林の中に延びている。開けた土地にでたところで、その先端が炎を噴いていた。普通、石油精製の過程で出るガスを、煙突などで燃やすと聞いていたが、こちらは横に延びた管なので、炎は地面をなめるように出ている。
その炎を中心にソーラーパネルのように、キャッサバを乾かす板が円をなしている。20人ほどの女性がそこでキャッサバの番をしていた。普段からぼーっとしているが、炎に寄ると何も考えるのが嫌になるほどの熱だ。シャツを脱いで下着姿で作業する女性もいる。
キャッサバを機械でコメ粒大に砕き、やわらかくて粘りのあるうちに、竹のようなものを束ねた板の上に塗りつける。特有のすえたにおいがする。
それを並べて乾かす。キャッサバの上には葉っぱや棒きれが置いてある。だれのものかがわかるようにする目印だ。時折、ひっくり返す。乾くにつれ黄色みを帯びて、おこしのように硬くなる。十分に乾くと、もうにおわない。
天日で乾かすと2、3日かかる。それが炎の熱で4時間で済むというので、こうして集まって熱に耐えて作業する。板の大きさは中学の教室机ぐらいだろうか。それを1枚千ナイラ(約630円)で売る。
そのまま食べてもいいし、肉類と油で調理してやわらかくなった後で食べてもいい。
石油精製の過程で生じる可燃性の高いガスはそのまま環境に出せないので、燃やす。それをめざとく日々の生活に活用する。見よ、働く女性のたくましさをという話のはずだった。だが、ここから事態は暗転した。

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。