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11月16日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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クラブの夜 まるでバブル時代の東京 @ラゴス

写真:アーティスト村で演じる若きラッパーたち拡大アーティスト村で演じる若きラッパーたち

写真:ラップの合間に、ナイジェリア伝統の鼓の演奏もあった。言葉を話しているように聞こえる拡大ラップの合間に、ナイジェリア伝統の鼓の演奏もあった。言葉を話しているように聞こえる

写真:クラブの入り口の「レッドカーペット」でポーズをとるKONGA(中央)。左はDJ、右は地元ラジオ局の記者のようだった拡大クラブの入り口の「レッドカーペット」でポーズをとるKONGA(中央)。左はDJ、右は地元ラジオ局の記者のようだった

写真:クラブの中のKONGA拡大クラブの中のKONGA

写真:クラブの中の大音響は途切れることなく続いた拡大クラブの中の大音響は途切れることなく続いた

写真:夜が深まるにつれ、音は大きく、空気は退廃的になってゆく=いずれも中野智明氏撮影拡大夜が深まるにつれ、音は大きく、空気は退廃的になってゆく=いずれも中野智明氏撮影

 次代を目指す若手アーティストにも会ってみたかった。ラゴスにある国立劇場の敷地に若手アーティストが芸を磨くアーティスト村があるというので、行ってみた。

 ラゴスは潟湖を中心に広がった都市だ。国立劇場の周辺は高速道路が走り、中国企業が鉄道の高架を建設していた。千葉にある谷津干潟ほどの場所を通り過ぎる。ごみだらけのところが、かなり違うけれど。

 アーティスト村で、ズーラ・ズーライオンという新進のミュージシャンに会った。もっとも、自分は新進ではなく、割と名が通っていると話した。ナイジェリアの伝説のアーティスト、フェラ・クティの影響を受け、独自のタクルク・ビートという音楽表現にたどり着いたと言う。ケレワという腰の動きを特徴とする踊りが加わるのだという。

 聴きたい、見たい、と言うと、金曜日の夜に村にある「小さな劇場」で演じるというので、14日の夜に出かけた。音響機材の不調で1時間以上、待たされて演奏が始まった。そこには彼の姿はなく、ラッパーが6、7人いただけだった。

 機材の不調が続いて、アカペラのラップというのを初めて聴いた。何を言っているのか、よく聞き取れない。同じテンポを崩さず韻を踏んで即興で語るというか歌うというか。そんなところはさすがだと思ったが、意味がとれないという点では、馬の耳に念仏だった。実際、リズムのないラップはお経のようでもあった。

 2時間近く聴いていたけれど、目当ての人物は現れなかった。大変、申し訳ないがそのラップに共鳴して驚いたり、わくわくしたりという感受性がこちらにはなかった。

 この夜、ラゴスのクラブでKONGAが演じるので来ないかとマネジャーに言われ、本人ともどもアーティスト村まで迎えに来てくれたので、そちらに移動することにした。

 ラゴスのスーレリ地区の一角に、クラブが軒を連ねる。クラブと軒とは、あまり相性の良くない表現だが、その一つ「Xファクター」に入る。こんなことでもないと、クラブには縁がなかったなあと思いつつ、バウンサーと呼ばれる警備の面々の横をすり抜ける。

 夜10時半、立て付けに高級感はないものの、すでにシャンパンやコニャックを何本もあけているグループがいる。マッサージ椅子に座っているかのように、重低音で体が震える。

 「すぐにKONGAが演じるから」とマネジャーは言う。ラゴスでナンバーワンのDJという細身の男性がなぜか私と中野智明さんの名前を呼んで「ようこそ」と拳を向けてくる。野球でホームランを打った時にやるようなしぐさだ。

 見回せば黒人でないのは2人だけ。胸も腰も圧倒的な存在感の男女が狭い部屋で体をくねらせている。待ってもKONGAの歌は始まる気配はなく、本人は「飲まない」と言っていた酒を飲んでいる。「いつ演じるの」と尋ねても「大丈夫、まだ宵の口」。

 大音響で話もできず、めまいがしそうだ。真夜中を回ったところで、中野さんと話して引き揚げることにした。外の道は2重、3重に縦列駐車した車で埋まっていた。バブルのころの東京を見る思いだった。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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