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09月25日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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ネコの島 支配の遍歴と独立闘争の跡 @マッサワ

【動画】マッサワ港の風景

写真:銀行だった建物は、空爆で破壊された拡大銀行だった建物は、空爆で破壊された

写真:かつては宮殿だった。これもまた、空爆の被害に拡大かつては宮殿だった。これもまた、空爆の被害に

写真:マッサワの島にある古い地区拡大マッサワの島にある古い地区

写真:これが、そのモスク。壁の向こうには港のコンテナが見える拡大これが、そのモスク。壁の向こうには港のコンテナが見える

写真:古い町をゆく拡大古い町をゆく

写真:そして、ネコ=いずれも中野智明氏撮影拡大そして、ネコ=いずれも中野智明氏撮影

 昼間はあまりに暑く、涼みがてらマッサワにある北紅海地域博物館に寄った。ジュゴンなど近海の生物、考古学、そして独立闘争の展示があった。

 1枚の写真に目がとまる。小さなモスクで615年の建立とある。学芸員のティギスト・ビイドゥさん(35)は、世界最古のモスクだという。

 サハバという名のそのモスクは、マッサワ港の管理区域にある。ティギストさんが港湾当局の許可を得てくれるというので、一緒に行った。塀に囲まれたサッカーピッチの半分ほどの空き地の奥に建っていた。

 4メートルに満たない高さの小さな建物は、ところどころ崩れかけている。1921年に一帯を襲った地震によるという。当時の宗主国のイタリアの手によって修復された跡もある。

 それにしても、港のコンテナを背景にぽつんとある。ネットで世界一古いモスクを調べてみると、このモスクのことは載っていなかった。最も古いもので622年ごろとある。

 どうして615年の建造とわかるのか尋ねるとティギストさんは「このモスクは北を向いている。メッカにモスクができる前のイスラム教徒は北に向かって礼拝していた」という。615年ごろに預言者ムハンマドの近親者らが当時のこの地アビシニアに来たという見方があって、これも最古説を支えているという。

 ここではその説を紹介して、とにかく古いというところにとどめておこう。当のモスクは「どうでもよろし」とばかりに、うだる暑さの中に立つ。

 日が傾くのを待って、島の古い地区を歩いた。2階、3階建ての建物が並んで海風をはばみ、熱がこもる。建物は古い順にトルコ、エジプト、イタリアと、この土地を支配した勢力が建てた。独特のアラブ文様やアーチ、逆V字形の窓があるのだが、どの勢力の建物か、わかりにくい。

 これは、各勢力がそれ以前の建物を尊重したためらしい。たとえばイタリアはトルコの建物が地震で崩れた後、建て直すのではなく、コンクリートで補強した。トルコ、エジプトの建築資材はサンゴをれんがのように切って使っている。トルコのサンゴ材は目が粗く、エジプトは細かい。

 建物の多くは1990年、エリトリアの独立前にエチオピア軍の攻撃を受けて壊れ、銃撃の跡を残している。エリトリア独立以前の港はエチオピア海軍の基地だったため、ここをめぐる激しい攻防があった。

 エリトリア政府は破壊された建物ごと古い街並みを保存しようとしている。崩壊しそうな家に住み続けるのは危険だとして、住人に陸地の住宅をあっせんしていて、陸地には韓国企業が建てたアパートが並んでいる。でも、先立つものがなくて崩壊寸前の家にとどまる人は多い。

 夜は、古い地区で一番という魚料理を食べにいった。タイのような白身の魚に少し強めの塩と小麦粉を振り、ちょっぴり辛みをつけて焼いてある。二つに割ったライムをたっぷり搾って、手で食べる。

 熱くて苦労するけれど、案外ほろりと身はほぐれ、骨の間に身と皮がついたところが絶品だった。砂地に並べ、月明かりに照らされたテーブルの下ではネコの合唱が始まり、うたげはテーブルからテーブルへと移っていった。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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