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09月24日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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紛争後のどん詰まり 国境はやはり壁だった @セナフェ

写真:サボテンの花拡大サボテンの花

写真:少女は上手にベレスの実をむいた拡大少女は上手にベレスの実をむいた

写真:セナフェ遠景拡大セナフェ遠景

写真:セナフェ郊外の塹壕(ざんごう)跡。後方が「未知との遭遇」の山。似てませんかね拡大セナフェ郊外の塹壕(ざんごう)跡。後方が「未知との遭遇」の山。似てませんかね

写真:セナフェの町拡大セナフェの町

写真:セナフェにて=いずれも中野智明氏撮影拡大セナフェにて=いずれも中野智明氏撮影

 「未知との遭遇」のような山にたどり着いたら、まず塹壕(ざんごう)があった場所に行ってみよう。小さく見えた町の眺めを確かめ、それからセナフェに入ろう。そう思っていた。

 でも、考え事をしている間に、その山を過ぎてしまい、セナフェの町の中心部に車が到達してしまった。暑くてもぼーっとしているが、寒くてもぼーっとしている。ここは標高が2400メートルほど、晴れているが風を冷たく感じる。

 道沿いでベレスというサボテンの実がたくさん売られていた。売っているのは少女だ。片手で上手にナイフを使い、黄緑の皮をはいでくれる。実はオレンジに熟し、つぶつぶの種が入ってパッションフルーツのようだ。パッションフルーツほど酸味はなく、甘い。

 アスマラではサボテンがまだ花を咲かせていなかった。ケレンでは大きく黄色い花をつけていた。セナフェではもう実を売っている。狭い範囲でも大きく変わるものだ。

 サボテンを食べて喜んでいる場合ではない。12年前、セナフェに戻ることができず、避難生活を送っていたアレカ・ハイレタファリさんに話を聞いた。無事戻ることができたのか、探すことにした。72歳になっているはずだ。

 小さな町の、あっちこっちで聞いたが、何もわからない。それだけやっても時間がいたずらに過ぎるだけだと気づいた。仕方がないので、町の人に話を聞くことにした。

 停戦時、エチオピアに占領されていたセナフェはエリトリアに戻った。10キロほど先には、国境がある。紛争後、閉ざされたままだ。かつて、二つの国の物資や人が行き交った町は、先に行くことのできないどん詰まりの町になった。

 バーの店主のテアマ・ゲブレメディヌさん(58)は1993年のエリトリア独立から98年の国境紛争が始まる前まではとてもよかったと話す。バーにはエチオピア人も多く訪れた。何より物資が行き交い、アスマラより活気があるような気分だった。

 すべてを国境紛争が変えた。首都に逃げて、和平合意から11カ月して店に戻ってみると、何もかもが持ち去られていた。国境付近にいて不安を感じることはないけれど、人の行き来は止まり、経済は滞った。友人だったエチオピア人とは音信が途絶えたままだ。

 「隣り合わせの国は友好的に共存しなければならない。それは歴史が示している」とテアマさんは言った。国境が再び開いて、交流が戻ればいいと思いますか、と尋ねた時だ。

 商売をする人たちに話を聞こうとしたのだけれど、テアマさんと違って口を開いてくれなかった。にこやかに握手はするが、こちらが記者だとわかると、とたんに表情が一変し「何も話すことはない」と目をそらす。戦争の傷痕の深さなのか、話すことを許さない空気なのか。

 町を出て、「未知との遭遇」の山裾に行くと、塹壕の跡が浅く地面に刻まれていた。周辺に埋められたおびただしい数の地雷は、国連によって取り除かれた。かつてエチオピア兵が陣取ったあたりに、エリトリア軍の兵士がいて、こちらの様子をうかがっていた。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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