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独立、鉄道よ再び 旧宗主国の遺産、今も @アスマラ

写真:アスマラの操車場拡大アスマラの操車場

写真:老いても重要な戦力拡大老いても重要な戦力

写真:フサハゼム・アスゴトンさん拡大フサハゼム・アスゴトンさん

写真:ヘンザ・アイナタさん。442型54号に乗って拡大ヘンザ・アイナタさん。442型54号に乗って

写真:右にある機関車は小型で、操車場の中の客車の入れ替えなどに使われている拡大右にある機関車は小型で、操車場の中の客車の入れ替えなどに使われている

写真:ぽっぽ屋たちのいるところ=いずれも中野智明氏撮影拡大ぽっぽ屋たちのいるところ=いずれも中野智明氏撮影

 エリトリアのぽっぽ屋の話をしたい。このシリーズに何度か首都アスマラと港マッサワを結ぶ鉄道のことは書いた。標高2400メートル近くから海辺の都市へ、くねりながら100キロあまりをゆく。

 観光客を相手に1920年代、30年代に造られた蒸気機関車などを走らせてきた。ドイツやスイスなどから年に10組〜20組ほどのツアー客が来たというから、細々としたものだ。日本人も含まれていたという。客の求めに応じて列車を止めて、はい、撮影という、のどかな旅だった。

 港から物資も運んでいた。だが、コークスにも事欠くようになり、洪水で一部区間の線路が流され、今年初めから止まっている。9月ごろには再開する見通しだという。

 旧宗主国のイタリアが鉄路を築いた。谷に渡した美しい石橋を渡り、険しい山道を蒸気機関車は走った。しかし、第2次大戦後のエチオピア支配の間に廃れ、76年には運行をとりやめた。再び光が当たるには、93年のエリトリアの独立を待たなければならなかった。

 鉄道を再び。

 かつてのぽっぽ屋たちが呼び集められた。長い時間をかけて補修し、03年にアスマラとマッサワの間が再びつながった。

 フサハゼム・アスゴトンさんは、呼び集められた元鉄道員の一人だ。87歳の今も現役として若手の指導にあたる。父親はイタリアが鉄道の建設を始めて間もない1889年から鉄道員だった。その姿をいつも目にして14歳のころ、ぽっぽ屋の息子はぽっぽ屋になった。

 蒸気機関車を扱うことができたのは、当初はイタリア人だけだった。でも、フサハゼムさんは特別に指導を受けて機関士になることができた。

 鉄道が運行を停止していた間は、綿工場の機械を整備していた。政府がかつての鉄道員を募っていると聞いた時、一も二もなく参じた。鉄道が、すべてだった。

 442型52号は、フサハゼムさんが担当した、いや今も担当する機関車だ。アンサルド社、1938年製。ちょうどフサハゼムさんが鉄道で働き出したころにできた相棒は、今も現役で走る。

 ヘンザ・アイナタさん(36)はフサハゼムさんの教えを受けた。鉄道はもともと熱望した仕事ではなかった。機関車について学んで知るうち、機関車が好きになった。鉄道はエリトリアの歴史の重要な一部であって、それにかかわることのできる喜びがある。古いものに手を加え、大事に使ってゆく。エリトリアの歩みを鉄道は象徴するようでもある。

 アスマラの操車場を訪ねると、442型や440型と呼ばれる機関車が、屋根の下にあった。鉄道ファンにはたまらない光景だろう。古めかしくて、本当に走るのかと疑いたくなるが、車輪の裏は輝きを失っていなかった。

 アスマラの草茂る操車場で、6両の機関車、2両のディーゼル車の整備を男たちが続けている。323人のぽっぽ屋たちが、エリトリア各地で鉄路の再開に備える。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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