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11月15日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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南アに寄り道、マンデラ氏危篤に見た既視感@プレトリア

写真:マンデラさんが入院するプレトリアのハート病院が奥に見える。手前の門の脇の柵に、様々なメッセージが拡大マンデラさんが入院するプレトリアのハート病院が奥に見える。手前の門の脇の柵に、様々なメッセージが

写真:何やら不思議なパフォーマンスをする人も拡大何やら不思議なパフォーマンスをする人も

写真:真ん中あたりに赤い字で「アフリカ=タタ」と書いてある拡大真ん中あたりに赤い字で「アフリカ=タタ」と書いてある

写真:病院の柵をはさんで反対側には、報道陣のテントがずらり=いずれも江木慎吾撮影拡大病院の柵をはさんで反対側には、報道陣のテントがずらり=いずれも江木慎吾撮影

 エリトリアからナイロビに戻るはずだったが、ネルソン・マンデラ南アフリカ元大統領が危篤になったという報道が飛び込んできた。急な風に吹かれて南アフリカへやってきた。

 マンデラさんが入院する首都プレトリアのハート病院前に連日、足を運んだ。泊まっていたヨハネスブルクの最寄り駅サントンからハウトレインという鉄道に乗ってプレトリアに移動する。時速160キロで、両都市間を30分たらずで結ぶ。

 サントン駅の外に止まっているタクシーはベンツ、レクサスなど高級車ばかり。プレトリア駅に並ぶタクシーは、床にごみが散らかり、どこかが壊れている。白人を含めて物を乞う人たちがいる。

 プレトリア駅からタクシーに乗って北東に向かう。ネルソン・マンデラ通りを横切り、スティーブ・ビコ通りを過ぎる。ビコもまた、アパルトヘイト(人種隔離)との闘いを貫き、命を落とした闘士だ。

 病院はサニーサイドという場所にある。かつては車上狙い、売春、薬物の密売が横行し、治安がよくなかった。病院には表通りに面した入り口と、横道からの入り口があり、いずれにも報道陣が張り付いていた。6月28日、すでにマンデラさんは2週間以上、入院したままだった。

 横道の入り口には門があり、向かって右側の柵にマンデラさんへのメッセージが張られている。初期のものの上に新たなメッセージが重ねられ、全体が巨大な掲示板のようだ。その狭い一角に次々と人が訪れ、祈りを捧げ、花を供え、歌声を合わせ、記念写真を撮ってゆく。1枚15ランド(約200円)でその場でプリントする業者がいる。

 昼時になると職場や学校を抜けた人たちが来るためか、人であふれかえる。周りを色んなカメラが取り囲むのでなおさらだ。一陣が引くと、所在なげな報道陣が残る。報道陣の白いテントが200メートルほどの横道を埋めている。

 既視感のある光景だった。自分がその光景の一部だった。時は1988年、昭和天皇が病に倒れた後の皇居の周辺の光景だ。地方の支局から秋口に応援として東京に来て、やらされたのが「門番」だった。様々な会社の記者やカメラマンが24時間態勢で皇居や東宮御所の門に張り付いた。

 門の前にいて、出入りを会社に報告するむなしい仕事だった。「時代の変わり目に立ち会っている」と自分に言い聞かすしかなかった。

 マンデラさんの家族は「ハゲタカ」と報道陣を批判していた。死のにおいをかぎつけ、時を待つ。家族や近親者にしてみれば、そう映るに違いない。

 病院の前に5日間、通いながら、マンデラさんのいる世界と、いなくなった世界の間にはどんな線が引かれるのだろうと考えた。日本のように、時代に冠する新しい記号が為政者から与えられるわけではない。マンデラさんが権力の座を去ってすでに14年、現実の政治に影響を及ぼすことがあるかは疑わしい。

 だとしても、そこには太い線が引かれる気がした。

 病院の柵に張ってある見舞いのなかに「アフリカ=タタ(お父さん。マンデラさんのこと)」と大きく書かれたものがあった。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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