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11月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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(ビリオメディア)38歳、候補者追っかけ

写真:自ら出向き、候補者に1分間のインタビューをする男性。陣営スタッフが携帯電話で残り時間を知らせていた=12日午後、東京都大田区、白井伸洋撮影拡大自ら出向き、候補者に1分間のインタビューをする男性。陣営スタッフが携帯電話で残り時間を知らせていた=12日午後、東京都大田区、白井伸洋撮影

図:男性がインタビューした場所と回った事務所拡大男性がインタビューした場所と回った事務所

 【高久潤】参院選で解禁されたネット選挙を機に、政治家と有権者の関係が変わりつつある。有権者が政治家を「追跡」し始めた。

ビリオメデイア参院選

■アポなし取材、動画投稿

 参院選期間中のある日。一人の男性が、緊張した面持ちである候補者事務所のドアをノックした。

 「突然すいません。候補者に1分間のインタビューをさせてほしいんです」

 汗だくのポロシャツにジーンズ姿。東京都福生(ふっさ)市に住む38歳は無職、小説家志望。東京選挙区の候補の事務所にアポなしで足を運ぶ。質問は「議員になって最もやりたいことを具体的に話してください」の一つだけ。直接会ってビデオカメラで録画。14日、二つの動画投稿サイトに「参院選東京選挙区候補者に質問できるか やってみた」などの題でアップした。

 昼前から午後8時まで事務所を回る。電車が基本だが、歩ける距離は炎天下でも歩く。徐々に口数が少なくなる。OKが出ると「断られ続けるとつらいので、やっぱりうれしい」。

 昨年の衆院選では選挙区の候補者5人中、応じた1人の動画を公開した。だが都選挙管理委員会から、応じた候補の実質的選挙運動になる恐れを指摘され、都議選では中止。ネット選挙解禁で本格始動した。

 今回会えたのは候補者20人中6人。応じたある候補者は一言答え、電子端末を手にしながら立ち去った。その様子も動画に収めた。

 交渉の経緯は字幕で伝える。《そんなこと何の意味があるの?というようなことを言われた》《当初は難色を示されたが、衆院選の時の動画を見ると、再生回数の多さに言及され、その後OKに》

 「候補者を知るには、一有権者の立場でやりとりすることにつきる」。記者が同席取材を依頼すると断られた。記者がいることで対応が変わる恐れがあるからという。時間は、話をやめても続けても1分間。「そうしないと公平中立になりませんから。誰かを応援してるわけじゃないので」

 なぜ追いかけるのか。「思いつきとしかいいようがないが、あえて言えば『違和感』でしょうか」

 ポスターには当たり障りのないメッセージばかり。街頭では名前ばかりが連呼され演説も似ていた。

 きっかけは2年前の福生市議選。候補者にアンケートし、結果を文章でソーシャルメディアに公開すると好評だった。「0・01%でも投票率があがったかと思うと結構うれしいですね」

 いま、名刺の肩書は「福生市民」としている。

 衆院選の動画は再生回数計1万回を超えた。その映像に注目した作家・高橋源一郎さんは今回の映像をさらに評価する。「16分間ほど普通にインタビューしただけの映像なのに、今の選挙がいかに有権者とは遠いところで行われているかがわかる。日本の政治の裏側を見せられた感じがするから不思議だ。あまりのリアリティーに恐怖映画とすら言えるほどだ」

■22歳、AKB総選挙流 どぶ板つぶやき、話題拡散

 「政治家の魅力ってアイドルと違って発信するの難しいよね」

 都内の喫茶店。ある候補者をネット上で「勝手連」的に応援する慶応大4年の中村香住さん(22)は、仲間にこぼした。

 中村さんは、「AKB48選抜総選挙」でSKEの好きなメンバーの順位を上げるための「選挙活動」をしてきた。その「選対」の主要メンバーだ。本物の選挙に関わってみようと思ったのは、ネット選挙解禁がきっかけ。「つぶやくだけで選挙活動になるハードルの低さが気楽です」。関心の強い「表現の自由規制」への考えを候補者別に比較。応援対象を選んだ。

 この日は、他候補の支持者からの批判ツイートが多いのを受けての作戦会議。批判合戦にするより、ネット上から候補者の言葉を探して魅力を広げるべきだとの結論に達した。ネットユーザーを引きつける言葉をツイッター用にまとめる。

 多くのファンを巻き込むノウハウはAKB総選挙で蓄えてきた。例えば、ファンの集まりのグループ名で定期的につぶやくより、個人の名で、同じテーマの投稿をまとめて閲覧できるキーワード「ハッシュタグ」を使った方が話題は広がりやすい。

 その手法は「一言で言うと、ネットどぶ板です」。

 しかし実際、選挙をやってみて、「有権者が面白いと感じるのと、候補者が訴えたいことって別。その差を埋めないと盛り上がれない」と課題も感じている。

 ネットは政治家の「拡声機」ではない。有権者が政治家を追跡し、発信することによって、政治家に立ち向かえる「武器」になる。そんな可能性を秘めている。

■政治活動や政策、ネットで可視化

 これまでなら公示後は止まっていた、ネット上での政治家の発信も目立つ。

 応援演説を続ける安倍晋三首相のフェイスブックの画面には連日、所狭しと並ぶ聴衆の写真や首相と手を取り合った候補者の写真がアップされる。ネットは、候補者の見せたい「顔」を拡散させる役割を持つ。

 ネットは一方で、有権者が候補者の「実像」を探る道具にもなる。

 「選挙で選ぶためにも、政治家の活動や政策観を可視化する必要があります」

 ジャーナリスト津田大介さんらは16日、データベース「ポリタス」をネット上で公開する。候補者の名前を打ち込むと、国会やテレビでの発言などが一覧表示される。

 その画面の上には、「原発再稼働」「景気・経済対策」「取り調べ可視化」――。大きさが異なる青い円が浮かぶ。候補者の発言をテーマ別に分類。円の大きさは発言回数を反映した。

 公示期間中にネットで選挙運動ができるようになり、若い世代の関心が政治に向かうことなどが期待される。だが、「有権者がその候補者本人を評価できる情報がネット上にきちんと整備されていなかった」。

 今回は参院比例区162人を対象に始める。国会議員や首長などにも広げ、動画投稿サイトにアップされた街頭演説なども蓄積する予定。ネット選挙時代でこそ可能な試みだ。

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