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09月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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リゾートのにぎわい 狭い路地に誘われて@ザンジバル

写真:からゆきさんの名残。日本人女性たちの飲食店が1階の右側にあったという拡大からゆきさんの名残。日本人女性たちの飲食店が1階の右側にあったという

写真:路地の奥に日差しは届かない拡大路地の奥に日差しは届かない

写真:楽しき迷い道拡大楽しき迷い道

写真:かつては扉があったのだろう。上の文様にはインドの影響がみられる=いずれも江木慎吾撮影拡大かつては扉があったのだろう。上の文様にはインドの影響がみられる=いずれも江木慎吾撮影

 随分と場違いなところに来てしまった。ここはザンジバル、その響きを聞くだけで全身の力が抜けてゆく。そんな東アフリカ有数のリゾートに居心地の悪さを感じるのは、生来の貧乏性のためかもしれない。

 エリトリアの港町マッサワに立った時、半ば崩壊した古い街並みにザンジバルの面影を感じた。エリトリアが色んな意味で観光客をもっと引きつけられる国になれば、マッサワはザンジバルとは言わないまでも、もっと活気ある町になれるのに。そんな感慨が、ではそのザンジバルへ、と風を吹かせた。

 アフリカ特派員時代には、飛行機の乗り継ぎ時間を利用して数時間、石造りの町を散策しただけだった。タンザニア自体、ブルンジの和平会議がアルーシャという町で開かれるたびに訪れたぐらいだ。住んでいたケニアの隣にあったにもかかわらず。灯台もと暗しではないけれど、ほとんど知識もない。

 島々がつくるザンジバルは、大陸部分のタンガニーカとともにタンザニア連合共和国を構成している。タンザニアの「ザニ」の部分ということになる。独自の大統領や司法制度をもち、独立性が強い。入国手続きもタンザニアとは別に実施している。

 ポルトガルやアラブの支配を受け、奴隷、香辛料、アフリカの産物の交易で栄えた。19世紀にはオマーン王国の首都が置かれ、からゆきさんと呼ばれた女性たちが日本からたどり着き、住んだ場所としても知られている。

 20世紀半ばの、現地の人が革命と呼ぶ独立をめぐる混乱の中で、多数のアラブやインド系住人が殺された。いまもタンザニアからの分離をめぐる火だねを抱えている。文化の交差点のようなストーンタウンと、コバルトの海が、暗い歴史をも溶かし込んで観光客を引きつけてやまない。

 ザンジバル、ペンバという二つの大きな島と、小さな島々がつくる別天地は、島ゆえに、大陸の都市部に比べれば治安はずっといい。タンザニアの中心都市ダルエスサラームからザンジバル島へは、飛行機で30分ほど。フェリーもあるけれど、たびたび事故を起こすことで知られている。

 7月はすでに観光シーズンのただなかで、欧米からの中高年や若いカップルやバックパッカーたちで町はにぎわっている。東洋人もちらほら見る。

 町を歩くとスワヒリ語の「ジャンボ」に始まり「ニーハオ」「コンニチハ」と男たちが声をかけてくる。応じると「オハヨウゴザイマス」「トモダチ」と寄ってきて、ツアーをあっせんしようとする。

 ほとんどの住人がイスラム教徒で、いまは断食月のラマダンにあたる。だから食べるお金をくれ、とよくわからない理屈で声をかけてくる若者もいる。よくも悪くも、観光化が隅々に行き届いている。

 赤道近くの南半球にあっていまは涼しい季節にあたる。朝の風が心地よい。狭い路地の両側に3階建て以上のさんごや石造りの家が立ち、強い日差しを防いでくれる。

 路地を右へ左へ行くうちに、元いたところに出てしまう。見通しがきかず、たやすく迷う。それでも、知らない町で心穏やかに迷うなど、アフリカでは味わうことができないと、路地が誘いかけてくる。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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