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海外に住む有権者は参院選で初めてのネット選挙を迎え、あの手この手で情報を追い求めた。候補者からの直接の反応もあり、手ごたえを感じ始めている。
参院選特集・ネットと選挙ビリオメディア参院選■@米国
米ニュージャージー州の主夫、竹永浩之さん(47)はツイッターのチェックに余念がない。「ネット選挙になったから、政治家にも絡んでいける」
アカウントを持つ参院選の候補者や国会議員ら計300人以上に今月中旬、3日間かけて、海外有権者への投票の呼びかけを求めるツイート(つぶやき)を送ってみた。30人弱から返信があった。
「海外の視点を日本に注入して欲しい」と訴える男性候補者や、「海外への転出届を出す際に在外選挙人名簿への登録申請書を交付する」など制度改革案を示す女性候補者もいた。
竹永さんは「今まででは考えられない」と驚く。
約20年前、「海外有権者ネットワーク」を立ち上げたメンバーの一人だ。
昨年12月の衆院選では、膨大なツイッターのデータから海外有権者のツイート約1550件を抽出し、分析した。当時、海外有権者たちの発信が雪だるま式に増えていくのに気づいたからだった。「何が起きているんだろう」
投票を終えた人の発言のほか、在外選挙人登録の方法や投票期間を知らなかったこと、在外公館が遠いことなどが次々とツイートされていた。海外有権者が自らの体験を通じて現行制度の問題点を発信していた。手作業で集計。59ページのリポートを4月にまとめた。
海外有権者は約86万人いるとみられるが、在外選挙人登録をしているのは3日現在、約11万3500人。過去の選挙での投票者数は2万人台。「ツイッターで問題を発信して解決する様子を見せ、盛り上げなくてはと思った」と振り返る。
「土日も在外公館で投票できるか」といったツイートがあれば、投票可能なことや期間を知らせる。在外投票についての発言は片っ端からリツイートするほか、在外投票の注意点や日程をつぶやき続ける。
「このやりとりがフォロワーに共有され、波及と学習効果がある」
■@中国・台湾
中国では、ツイッターやフェイスブックを使ったり、ユーチューブで動画を見たりすることが規制されている。「それでも、規制をかいくぐって接続している」と、上海に17年暮らす中国伝統医学の医師、藤田康介さん(38)は話す。
「海外の有権者が日本の政治家や候補者の考えを知る唯一の手段がネットだ」
もっとも、ネット選挙には消化不良感もある。「ツイッターは、どこで演説するとかお知らせばかり。政策や本質を書いたものは少なく、顔が見えてこない」
一通り政党党首らをフォローする。中でも橋下徹・日本維新の会共同代表は目にとまる。従軍慰安婦に関する発言の時も、善悪はともかく考えは伝わった。多くの政治家が踏み込んだことを書かないなか、橋下氏のようなリアルタイムでの書き込みには「どうしても注目しちゃいますよね」。
日本の政治家には「たとえ中国に反発されようと、国として一貫した姿勢でいてほしい」と願う。「民間人の葛藤を吹き飛ばすようなことをやってのけるのが政治家の仕事ではないか」。日中関係や経済、外交を真剣に考えている候補者をネットでじっくり選んだ。
上海の日本総領事館や北京大使館では、投票が締め切られた15日までに多くの有権者が在外投票に訪れた。上海で投票したメーカー勤務の駐在員(32)は、候補者のツイッターや政党のホームページを妻と見て、「無責任な原発再稼働に反対を表明している候補者かどうか」を確認してきたと話した。
電機メーカーの北京駐在員福田徹さん(46)も投票前夜まで自宅でタブレット端末「iPad」を使って、ニュースサイトを閲覧。参院選の焦点を見て、投票先の政党や候補者の情報を収集した。
北京勤務3年目。それまで「イケイケ」だった対中ビジネスは、昨年の反日デモを境に一変した。固まりかけていた契約は凍結され、本社は投資に弱腰になった。「ニーズはあるのに……」。政治がビジネスに影を落とすことを身をもって知った。
二大政党制を期待して長年、これまで民主党を支持してきた。しかし、人脈や経験がものを言う対中政策では頼りなさを感じた。「総理大臣がすぐ代わるような国ではビジネスの世界では交渉すらしてもらえない」。長期の安定した政権を求め、自民に一票を投じた。
台湾・高雄に住む小川和久さん(66)は公示日の4日未明、党首たちの「第一声」の生中継をネットで見た。
「ネット上の選挙運動は自分で検索して主体的に見ることができるし、演説や討論の内容も見られる。日本にいるのと同じように選挙の過程も把握できた」と満足げだった。
台南在住の中根正雄さん(31)は、「自宅では日本のテレビは全く見られない。投票するなら演説の様子や表情は必須と思っているので、ネット選挙で見られるようになったのはよい」と話した。ネット選挙解禁を機に、在外選挙人登録をしたという。
在外公館での投票は15日に終わった。(杉崎慎弥、今村優莉)