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09月22日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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誠意と意欲がつなぐ信頼 小さい自分を反省 @イリンガ

写真:暗い気分で見ると、陰惨な木に見える。バオバブは不思議な木だ拡大暗い気分で見ると、陰惨な木に見える。バオバブは不思議な木だ

写真:怒っているようにも見えるし…拡大怒っているようにも見えるし…

写真:命短し恋せよ乙女――ではなく、おばさんでした拡大命短し恋せよ乙女――ではなく、おばさんでした

写真:でも、やはりどこかひょうきんで拡大でも、やはりどこかひょうきんで

写真:やすらぎも与えてくれる=いずれも江木慎吾撮影拡大やすらぎも与えてくれる=いずれも江木慎吾撮影

 書きたくないが、書いておく。ツイッターに先走ってしまったし。

 19日はタンザニアの中心都市ダルエスサラームから南部のイリンガに向かう。500キロ、車で10時間ほどというので、朝7時に出発することにした。

 運転手は遅れた。40分ほどで現れた姿と、においから推して、昨晩は深酒した。自分もよくそういう状態になるからわかる。でも「渋滞で」と言う。

 車をみると、前日に乗ってきて「いい車でしょう。ほかからも引き合いがあったけど、予約が入ったと断ったんですよ」と言っていた四輪駆動車ではなく、一回り小さく、ぼろい四輪駆動車だった。

 流れからみて、そのほかからの引き合いに貸したのは明らかだ。なめられていると思ったので、「昨日の車と違うじゃないか。どうしてだますようなことをする。時間も全く守らないし、信用できない」と強く言った。

 すると、こちらの剣幕に驚いたのか、この車の方がいいと思ったからと強弁する。乗ってみろと言い、あげく「何の問題がある。This is Tanzania」ときた。

 これには、かちんときた。そうじゃないだろう。自分の不誠実や怠慢をタンザニアのせいにするな。

 ついこの前、南アフリカで日本人記者たちと飲んでいて「TIA」がひとしきり話題になった。「This is Africa」の頭文字で、シエラレオネの紛争ダイヤを扱ったヒット映画「ブラッド・ダイヤモンド」でレオナルド・ディカプリオ演じる主人公が口にする。

 アフリカなんだからさ、そう何もかも先進国のようにいくと思うなよ。少し膨らませて言うと、そういうことになるのだろう。

 確かにイライラすることは多いのだけど、突き詰めれば多くはアフリカというよりも個人の誠意や意欲の問題だという気がする。

 ダルエスサラームと同様に渋滞のひどいナイロビで、いつも空港の送り迎えを頼む運転手は一度も時間に遅れたことがない。朝5時半に着くフライトが30分以上早くついてしまった時も、来ていた。驚いて聞いたら「遅れるといけないので、いつも1時間は前に着くようにしている」という。約束を大切にすれば、信頼を勝ち得ていくのだ。

 そう、個人の問題をアフリカの問題にすり替えてはいけない。その甘えた考えが、アフリカをおとしめている。

 本来なら別の運転手を探すところだけど、前日、すでに間に入った人に前払いで宿泊代ともども支払ってしまった。仕方がないので、出発した。

 朝っぱらから怒るのは実に精神衛生上よくない。たぶん、この運転手にこちらの思いは通じていない。中学生を相手にする先生たちの大変さが身にしみる。

 幹線道路が国立公園の中を走っても、もやもやは消えない。延々とバオバブの林が続く峡谷にさしかかっても、心は晴れない。

 そのバオバブの木の一番上にバブーンが1匹、つんと座ってあたりを睥睨(へいげい)していた。「おめえ、小せえなあ」と言われた気がした。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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