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09月25日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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再生に挑む黄色いカエルのふるさと @キハンシ

写真:山は終わり、平原が始まる拡大山は終わり、平原が始まる

写真:山から水が流れ落ちるのが見える拡大山から水が流れ落ちるのが見える

写真:キハンシ峡谷拡大キハンシ峡谷

写真:看板には小さな黄色いカエルの絵に「立ち入り禁止」と書いてあった拡大看板には小さな黄色いカエルの絵に「立ち入り禁止」と書いてあった

写真:上にカエルの絵が=いずれも江木慎吾撮影拡大上にカエルの絵が=いずれも江木慎吾撮影

 「This is Africa」に余計な行数をとられ、いや、とってしまった。今回の道行きの目的の一つはキハンシというところを訪ねることだった。ここには、数奇な運命をたどったヒキガエルがいる。

 ヒキガエルというと、己の醜さに油を流すガマを思い起こすが、キハンシヒキガエルはメス3センチ足らず、オス2センチ足らず、黄色っぽくてかわいい。世界中でキハンシ峡谷のわずか2ヘクタールにしか生息していなかった。標高差800メートルを流れ落ちる滝がつくる霧を、生きる支えにしていた。

 その峡谷に水力発電用のダム計画が持ち上がり、めったに人が入らなかった場所に調査が入った。1986年ごろ、このヒキガエルが珍しい種ではないかと地元の人たちが気づいた。ただ、それが新種のカエルだとわかったのは科学的な分析をへた1999年のことだった。

 ほぼ時を同じくして、キハンシに水力発電のダムができた。このダムによって、タンザニアの電力の8分の1程度がまかなわれるという。

 ダムは水をせき止め、川の流れを変える。キハンシ峡谷の水流は最大9割も減った。これによって、キハンシヒキガエルが生きていくのに不可欠だった霧が発生しなくなった。

 環境への影響は事前に予測され、ダムの稼働に合わせて現場に人工的に霧を起こす仕組みが導入された。だが03年、2ヘクタールに1万7千〜2万5千匹いたキハンシヒキガエルが50匹に激減した。環境の変化に加え、カエルツボカビ症の発生が原因だった。そして09年、「発見」から10年で野生のキハンシヒキガエルの絶滅が宣言された。

 一方で、カエルは国外で生き続けていた。ニューヨークのブロンクス動物園などが苦労の末、個体数を増やすことに成功した。この動物園育ちをふるさとの峡谷に戻す試みがいま続いている。

 そのキハンシに向かう。

 イリンガからは150キロほどの道のりと聞いた。悪路で4時間程度という話もあったが、往復12時間かかるとも言われた。

 日程の変更も覚悟しつつ出発した。道は土と石ででこぼこだった。ダルエスサラーム周辺は下草や立ち木の半分ほどが枯れて風景が砂色がかっていた。イリンガ周辺は標高が1800メートルほどある高原地帯で緑が豊かだ。

 ブルンジやルワンダと違って山の頂上まで開発されつくしているという印象はない。肌寒い高原が続く。酪農も盛んなようだ。

 道を尋ね尋ね行く。高圧の送電線が近くを走っているので、たぶん方角は合っているのだろうと思う。かなりとばして3時間ほどで電力会社の検問所に出た。そこから、道は急な下り坂になった。

 切り立った緑の壁が現れ、頂上付近から水が流れ落ちているのが見えた。その下にもう山はなく、平らな大地が地平まで続いている。

 キハンシ峡谷だった。山を下りきると、森の中の道脇に、黄色いカエルの絵の描かれた小さな看板が見えた。「立ち入り禁止」と書かれていた。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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