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09月25日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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飼育槽に、自然界に、しがみつくカエル @キハンシ

写真:キハンシヒキガエル拡大キハンシヒキガエル

写真:たぶん自然の中では見つけるのが難しい拡大たぶん自然の中では見つけるのが難しい

写真:よく見ると、交尾中拡大よく見ると、交尾中

写真:えさになるハエもここで育てている拡大えさになるハエもここで育てている

 カエルの里の入り口に、立ち入り禁止の看板を見つけた。そこへ黄色いTシャツを着た若い男性が歩いてきた。どこに行ったら入る許可が得られるか尋ねると車で一緒に来てくれた。

 タンザニアの電力会社の事務所だった。でも、20日は土曜日で開いていなかった。近くにある政府の環境保護事務所に向かった。ここも閉まっていたが、中にいた男性に頼むと係の人の連絡先を教えてくれた。係はたまたま近くにいて、親切にも出て来てくれた。

 キハンシヒキガエルの世話係は、いちど絶滅しただけに生息地の管理は厳しくしていると話した。たとえ現場に行ったとしても、カエルは見つけられないとも言った。

 それもそうだろう、ここまで来られてよかったとしよう。そう思って聞いていたら、この建物の裏にカエルを飼育している棟があるという。休日だけど特別に見せてくれるという。

 三つの部屋に分かれたコンクリートの平屋があった。一つの部屋の外は錠のかかった鉄格子に囲まれていた。扉の外にスポンジのマットが敷いてあった。中に入るときには、靴を履き替えないといけない。

 カエルツボカビ症の侵入を防ぐため部外者の立ち入りが禁止されたこの部屋に、キハンシヒキガエルが飼われている。その部屋と隣室との間には小さなガラス窓がある。隣室から飼育室の一部が見えるようになっていた。

 キハンシヒキガエルがいた。全体は黄色っぽいが内臓が緑に透け、小さいのでシジミのように見える。

 飼育槽には敷石と、峡谷にある植物が入れられ、外の光に近づけるため電灯がともされていた。よく見ると小さなハエがたくさんいる。カエルのえさだった。

 キハンシヒキガエルは親のおなかの中で卵からかえり、オタマジャクシではなく小さなカエルの姿で世に出てくる。ヒキガエルが総じてそうであるように、行動が機敏ではない。

 えさには手がかかっている。ハエの子どもとコオロギの仲間の幼虫を与えているがこれも飼育している。自然の中でないため栄養に偏りが出るらしく、ビタミンなどサプリメントを与えている。ハエの活性を下げて捕まえやすくするため、ハエに栄養をたくさん与えて太らせている。

 カエルは700匹いて、繁殖しながら自然へ放たれる日を待っている。12年に2千匹、今年は1500匹が戻されたが、うまくいっているのかどうか、まだ評価できる段階にはないという。自然にはカニやアリなど天敵がいて、崖崩れなども生息地を脅かしている。

 「やりがいはあるが、大変だ」と言う世話係がカエルよりえさの話に冗舌なのは、それだけ手がかかるからということだろう。一度絶えた生き物を大地へ戻す大変さを感じる。

 悠久の歴史を生きてきて、人間とかかわりをもったがため、人間のもたらした急激な環境の変化のために絶えてしまう。その人間の手によって、ふたたびふるさとに戻される。人間によって管理されたふるさとに。

 飼育槽に、キハンシヒキガエルがしがみついている。先のとがったカエデのような小さな小さな手が、何だかとてもけなげに見えてくる。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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