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09月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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風とは何か? まっすぐな思いに吹かれて @マシタラ

写真:マシタラ村からの眺め拡大マシタラ村からの眺め

写真:ウィリアム・カムクワンバさんと、第1号の風車のレプリカ拡大ウィリアム・カムクワンバさんと、第1号の風車のレプリカ

写真:三つ並んだ塔のうち、左端の金属製のものは勢いよく回っていた拡大三つ並んだ塔のうち、左端の金属製のものは勢いよく回っていた

写真:カムクワンバさんの家には、くみ上げた水をためておく大きなタンクもあった拡大カムクワンバさんの家には、くみ上げた水をためておく大きなタンクもあった

写真:ここでも、畑の下草が焼き払われていた=いずれも江木慎吾撮影拡大ここでも、畑の下草が焼き払われていた=いずれも江木慎吾撮影

 日差しを少し強く感じる丘を風が渡っている。高原を鳴らすというほどさわやかではなく、音を立てるでもなく、でも肌に強く当たってくる。

 案内してくれたシュクンティさん(18)は、はだしだった。片言の英語で兄が有名になってハッピーだと言った。シュクンティは英語でいえば「LOVE」だと話してくれた。

 畑は土というより灰色の砂に覆われている。その間の道を歩いていくと、木立に囲まれた数軒の家が見え、その木立から突き出て塔のようなものが立っていた。カムクワンバさん一族の住む場所だった。

 塔は全部で四つあった。木組みのものが三つと金属のが一つ。風車として稼働しているのは、金属のものだけのようだった。一番手前にあった5メートルほどの木のやぐらの上には、回っていない4枚の羽根に、自転車の車輪がかぶさるように重なっていた。

 たもとに石造りの家があったので、ハローと声をかけると3人の若い男性が出てきて、握手を求めてきた。訪問客慣れしているように見えた。

 1人が英語で説明してくれた。これはウィリアムが作った第1号だけど、もう動いていない。奥には動いているのもある。詳しい話が聞きたければ、奥にウィリアムがいる。

 えっ、本人? アメリカにいるんじゃないの。

 大学が休暇に入り、帰省したという。いきなりの訪問で申し訳なかったが、呼んでもらったら出てきてくれた。でも、明らかに疲れて眠そうだったので、手短に話すだけにした。

 第1号の風車は元あった場所とは違う場所にレプリカを建てた。子どもたちに風力発電の仕組みを教えるために置いてある。アメリカなまりの英語で話すカムクワンバさんは、てらいのない、気さくな25歳の若者だった。

 ――風をこんなに感じる場所に育ったから、利用する発想が生まれたんですかね。

 「本当に考えたのは英語の本の表紙にあった風力発電の絵を見てからです。小さいころ、風ぐるまで遊ぶのは好きだったけど」

 ――ほかの人と違うところは何だったんでしょう。

 「アイデアも技術もある人はたくさんいます。でも、マイナス思考では何もできない。前向きさが違ったのだと思います」

 ――将来は何を。

 「アメリカの生活より、マラウイが合っている。来年、大学を卒業したらここに戻って何かこの国のために役に立ちたい。具体的には決まっていないけれど、環境、再生可能エネルギーを学んでいるので、その方面の仕事を探すと思います」

 いまどきの日本の若者はすぐに「無理」を連発する、と思い出す。そのように日本の若者を語りたがるのは、日本のオヤジの悪い癖でもある。

 ――では、いまあなたにとって風とは何ですか。

 「エネルギーの源です」 まっすぐな答えだった。 手なずけられなければ凶暴の限りを尽くすことがある。感じとれれば、詩になり音楽になる。そして、つかまえることができれば、エネルギーになる。風のもつ色んなかおを思う。

 考えもなく吹かれていると、いずこへともなく漂ってゆく。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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