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11月18日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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高原を駆ける銀輪タクシー 彼の夢は @リラングウェ

写真:マラウイの農村拡大マラウイの農村

写真:サイマラさんの自転車のナンバープレートには、ちゃんと名前も書いてある拡大サイマラさんの自転車のナンバープレートには、ちゃんと名前も書いてある

写真:サドルはかなり高い。坂でも立ちこぎしないですむようにだろうか。荷台に黒いクッションシートがあって、その後ろが本当の荷台になる拡大サドルはかなり高い。坂でも立ちこぎしないですむようにだろうか。荷台に黒いクッションシートがあって、その後ろが本当の荷台になる

写真:商都ブランタイヤは高原に散らばる街だ=いずれも江木慎吾撮影拡大商都ブランタイヤは高原に散らばる街だ=いずれも江木慎吾撮影

 これまで、乗り物について何度も書いた。車の間を縫って走る南スーダンのバイクタクシー「ボダボダ」は、見るのも乗るのも怖かった。シエラレオネのオカダには3人の真ん中に乗り、つかみどころのなさに苦労したっけ。

 いろんな国で、いろんな運転手に身をゆだねた。安心して任せられる運転にはなかなか出会えない。運転というのは、まあ微妙なもので、日本のタクシーに乗ったって波長がぴったりと合うことはそんなにないに違いない。

 今回は運転手とそりが全く合わず、途中から別の車を探した。7月31日からワトソンさんという、ネズミが好物の青年になった。気持ちのいい青年だった。英語も達者で、本当は会計が専門なのだけど、仕事がなくてタクシーの運転をしていると話した。

 むろん、車は自分のものではない。リロングウェからブランタイヤまで走って、いくら手にするのか聞いてみたら、こちらが支払う金額の25分の1に満たなかった。

 「アフリカで生きていくのは厳しい」とワトソンさんは言った。「1人が飢えると、その後ろにいるみんなも飢える」。それでもタクシー運転手は相当ましな方に違いない。

 交通の主役が自転車だという国は、アフリカに少なくない。ブルンジなど、よくこんな険しい山道を、というところを自転車に荷を積んで上り下りする。

 話はそれるが、自転車レースの世界最高峰ツール・ド・フランスの今年を制した英国のフルーム選手はケニアに生まれ育った。同じく高地の国エリトリアでも自転車競技が盛んだ。いずれ世界の自転車ツアーを、アフリカの選手たちが席巻すると言っておこう。

 坂の多いマラウイも自転車王国だ。色々載せて自転車が走る。日本の援助団体からも多くの自転車がマラウイに届けられている。

 荷台の後ろにナンバープレートをつけた自転車がある。客を乗せるには、警察に登録してプレートをつける必要がある。

 リラングウェという南部の町にさしかかると、道路脇の木の周辺に多くのナンバーつき自転車がとまっていた。運転手の一人、ロバート・サイマラさん(25)に話を聞いてみた。

 5カ月前までは服の仕立てをしていたが、生活が苦しく自転車タクシーに転じた。自転車はすでに持っていた。荷台にクッションシートと乗客用の手すり、足置きを据えた改造に3千クワチャほどかけた。ナンバープレートを手に入れるのに千クワチャかかった。

 短い距離だと100クワチャで客を乗せる。1日走って千クワチャを稼げるのはいい時で、最近はサイマラさん同様の転職組の競争が激しく、600クワチャほどにしかならない。つまり、1日2ドル以下ということになる。

 話を聞いていると、どんどん人だかりができてきたので、切り上げることにした。夢を尋ねると、お金をためて車の免許をとり、車の運転で稼ぐことだと話してくれた。

 彼の理想はあなただね、と通訳してくれたワトソンさんに話しかけると、「そう、彼の夢は私になること」とワトソンさんは答えて、小さく笑った。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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