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岩絵が伝える儀式 世界遺産サイトを訪ねて@チョンゴニ

写真:チェンチェレレの岩絵拡大チェンチェレレの岩絵

写真:チェンチェレレの岩絵拡大チェンチェレレの岩絵

写真:チェンチェレレの岩絵拡大チェンチェレレの岩絵

写真:チェンチェレレからの眺め拡大チェンチェレレからの眺め

写真:ナムゼゼからの眺め拡大ナムゼゼからの眺め

写真:ナムゼゼの岩絵拡大ナムゼゼの岩絵

写真:ナムゼゼの岩絵拡大ナムゼゼの岩絵

写真:ナムゼゼからの眺め=いずれも江木慎吾撮影拡大ナムゼゼからの眺め=いずれも江木慎吾撮影

 リロングウェから南へ60キロほど車で走ると、道の左に小さな看板がある。「チョンゴニの岩絵 世界遺産サイト」とある。

 ここの岩絵は複数の民族が描いた。初期のものは狩猟採集のトワの人たちの手による。トワといえばコンゴ編で取り上げた。ピグミーと呼ばれ、少数民族として各地で差別にさらされている。アフリカ中部から昔はマラウイの方にまで進出していたようだ。

 今から2500年前、石器時代の終盤に描かれたのが最古のものとされる。赤い顔料を使うのがトワの特徴だ。一方、その後に一帯に住んだチェワの人たちは白い絵を描いた。

 トワは同心円や楕円(だえん)など図式的な絵が多く、雨乞いと深くかかわるとみられている。一方、チェワは女子、男子の成人の儀式につながる絵が多いという。岩絵を描く習慣は廃れたものの、いまもこの山の大きなくぼみで、儀式はひそかに執り行われているという。

 チェンチェレレと呼ばれる岩絵群にたどり着くには、何人かの住人に道を尋ねなければならなかった。少し歩くと見晴らしのいい岩のくぼみがあった。女子の儀式の場だ。ハングオーバーのようになった岩の、手の届かないところにまで絵が描かれている。

 ビューヒューと、風が山肌を強くなぜる。くすんだ白と朱の象形は孤独に見つめる人を厳粛な気持ちにさせる。この場で幾多の女性が社会に取り込まれていったと思うと、なおさらだ。

 女子の次は男子と、ナムゼゼの岩絵群を目指す。時速10キロも出せないぼこぼこ道に案内はない。一帯は森林保護区だが、マツなどの針葉樹が大量に植林され、女性や子どもが薪用の木を切り出している。

 女性の一人が「ユーカリの木をたどって行って」と教えてくれたが、マツ林に遮られよくわからない。すっかり迷った。

 通りかかった森林保護官の案内でやっと山のふもとにたどり着き、そこから斜面を登った。300メートルは登ったろうと思ったが、GPSによればその半分だった。そこに男子の儀式の場があった。男になるのは大変だと妙な感想を抱く。だが、眺めはこの世を手中にしたような気分にさせられるものだった。

 岩場は女子の場所より一回り大きい。赤い岩絵の上に重ね塗りするように白い絵が描かれていた。

 このような岩絵が描かれた場所は、全部で127カ所あるという。

 それにしても、世界遺産ながら案内すら満足にない。首都の間近にありながら、これでは人が訪れることもあまりないだろう。

 でも、と思う。後世に残すことが主であって、活用することはその補助手段のはずだ。町おこしができればそれに超したことはないけれど。そういう意味では、チョンゴニは潔い世界遺産に思える。

 もっとも、ユネスコのサイトには、保護のための体制が整っていないと指摘されていたし、落書き禁止を無視する不届き物はやはりいる。潔さは、いつまでも続くものではない。

 冷たい風が、勢いよく山を駆け上がる。数々の思いを宿した絵は風と雨に耐え、山と木々と岩に守られて時を越えてきた。20年後。O・ヘンリーの小説のような意外な展開にならぬよう祈りつつ、山を去る。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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