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09月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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特派員の「禁じ手」、使って見えた彼の素顔 @ンドラ

写真:ンドラからチャンビシに向かう。大きな看板があるけれど、宣伝はない拡大ンドラからチャンビシに向かう。大きな看板があるけれど、宣伝はない

写真:「宣伝をするのに小さすぎるということはない」。宣伝を呼びかける宣伝拡大「宣伝をするのに小さすぎるということはない」。宣伝を呼びかける宣伝

写真:これらも「宣伝してね」拡大これらも「宣伝してね」

写真:電線のある風景=いずれも江木慎吾撮影拡大電線のある風景=いずれも江木慎吾撮影

 ンドラに入ったものの、ちょうど週末になって取材の予定が全くたたない。仕方がないので10日は、とにかく車でチャンビシ方面を走ってみようと考えた。

 ホテルにタクシーを呼んで、毎度の値段交渉から。ふっかけてきたのでむっとしたが、がまんする。およそ半額で交渉が成立して出発した。

 乗ったタクシーの運転手の話を書くことは、潔しとしない。以前は国際報道の「禁じ手」と思っていた。外国取材ではいつも時差が悩ましい。事件や事故の現地に駆けつけたけれども、紙面の締め切りがそこにきている。だれかに話を聞いて、すぐに原稿を出さなければいけない。

 そこにタクシー運転手がいる。空港から移動するのに車が必要なので、タクシーを捕まえる。外国人を相手にすることが多いので、空港にいる運転手は英語を話すことが多い。時間がないというときには、運転手に話を聞いて原稿にする誘惑にかられる。

 その安直さゆえに「禁じ手」と思う。でも、今シリーズではたびたび登場している。きょうの運転手、ロバートさんもそう。26歳、タクシーの運転手になって4年になる。

 父親と長姉を病でなくし、学業を断念して母親ときょうだい5人を支える決心をした。長距離トラックの助手になった、32トントラックに乗って運転手の手伝いをする。積み荷の調整、パンクの修理、ちょっとした買い物、洗車など。

 コッパーベルトから銅を積み、南アフリカを目指す。ザンビアを縦断し、ジンバブエかボツワナを経由してヨハネスブルクや港湾都市ダーバンにたどり着く。片道1週間の旅だ。

 寝るのはトラックの中、トイレは主に夜、トラックの周辺でするのだという。ボツワナを通るときは、注意しないとライオンが出没する。帰りは食料品や日用品を積んで戻ってくる。2週間で50ドルというから、1日350円ほどが一家を支えていた。

 銅鉱山の方が割がいいようだけど、働こうとは思わなかったの? と尋ねると、コネがないと就職はできないのだと答えた。

 大きなトラックとすれ違うと「こういうのに乗っていた。家にいるのは1日か2日でまた出発。坊や呼ばわりされたけど、あのころはあのころで楽しかった」と話した。でも、もう少し割のいいタクシーの運転手に4年前に転じた。

 痩せて小柄でひ弱に見えるけど、なかなかたくましい。外国人のおやじ相手に堂々ふっかけるし、「日本は好き。中国は嫌い」とリップサービスも忘れない。

 ンドラは同じコッパーベルト州のキトウェと人口がほぼ同じで、ルサカに次ぐ規模だ。ルサカとの違いを感じるのは、幹線道路沿いに大きな看板が立っているものの、ほとんど広告がないことだ。あっても広告会社が広告を呼びかけるものばかりが目立つ。もくろみが外れたのか、これからなのか。

 鉱業地帯を高圧電線がつないでいる。停電が当たり前のアフリカにいると、電線が頼もしく見え、時に美しいとさえ感じるから不思議だ。電線とともに林立する空の看板を眺めていると、この地はこれからなのだと思えてくる。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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