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同時多発の地震火災、消せるか 狭い道・坂…住民ら模索

写真:防災訓練で消火栓につないだホースから放水する地元住民ら=6日午前、東京都杉並区の高円寺南公園、金川雄策撮影拡大防災訓練で消火栓につないだホースから放水する地元住民ら=6日午前、東京都杉並区の高円寺南公園、金川雄策撮影

写真:家々が重なり合う狭い路地を歩く町内会長の清水一郎さん(右)と防災部長の礒谷則義さん=東京都足立区本木1丁目、矢島大輔撮影拡大家々が重なり合う狭い路地を歩く町内会長の清水一郎さん(右)と防災部長の礒谷則義さん=東京都足立区本木1丁目、矢島大輔撮影

 地震による「同時火災」の脅威にどう備えるか。都市部では、消防庁舎の耐震化が進むが、消火活動が難しい市街地が広がり、地域防災の担い手も細る。南海トラフ巨大地震や首都直下地震が想定されるなか、消防も、住民たちも模索する。

消防署の2割、耐震不十分

 【矢島大輔、赤井陽介】東京都杉並区の高円寺南公園。6日、住民ら約40人が防災訓練に集まった。「このポンプで火を消すことになっているんだけどねえ」。地元自治会長の福間富美子さん(75)は園内の防災倉庫の前でつぶやいた。

 訓練に参加したのは、高齢者が大半。持ち運び式とはいえ、約100メートル先まで送水できるポンプは1台26キロと重い。地震で配水管が壊れれば消火栓は使えず、防火水槽が頼りだが、南北400メートル、東西200メートルに1400世帯が暮らす自治会ではこの公園にしかない。

 公園への道路は入り組んでいる。幅も約3メートルと狭い。「あちこちで火の手が上がれば、ここまで消防車が来てくれないかもしれない」。自治会役員で最若手の森健さん(54)も危機感を募らせる。

 都内有数の木造住宅密集地域で、延焼の危険性が上位4%に入る足立区本木1丁目。家々の間を2メートル足らずの道がうねり、袋小路も多い。「リヤカーも通れないんだ」。元消防士で、町内会の防災部長を務める礒谷(いそたに)則義さん(68)は言う。

 近所で2月に火事があったときは、遠くに止めた消防車からホースを何本もつないでしのごうとしたが、2棟が全半焼し、周りにも被害が出た。町内会長の清水一郎さん(78)は「昔から義理と人情、助け合いで乗り切ってきたんだが」。

 祭りや運動会、防災訓練で交流を重ね、独居世帯や要援護者の把握に努める。取り組みは都に模範的と評価され、「東京防災隣組」に選ばれた。ただ、大きな揺れで住宅が倒壊し、同時多発的に出火したとき、住民らが消火器でどこまで対応できるかは分からない。

 都の消防庁舎の耐震化率は93・5%(2012年3月現在)。消防車や消防職員の配備率でみても、全国有数の先進地だが、東京消防庁の担当者も「震災時に全ての火事に対応するのは難しい」とみる。

 同庁は地震で消火栓が使えなくなるとの前提に立って、防火水槽などからの遠さや周辺道路の狭さを元に消火活動が難しい地域を公表。住民らに地域の危険を知ってもらい、対策につなげてもらおうと狙う。名古屋市も同様の取り組みをし、さいたま市や千葉市もこうした地域別の危険度判定を検討中だ。

■自主防災組織で消火訓練 大阪

 「火が大きくなったら、お手上げ。その前に消すしかない」。震度7の地震が想定される上町断層帯のすぐ東。大阪市中央区の桃園(とうえん)地区の連合振興町会長、浦野●次(あきつぐ、●は目へんに完)さん(78)は話す。

 約500メートル四方に約3千世帯が暮らす。幅1〜2メートルの路地や階段、坂が入り組む密集地は消防車の活動を阻みかねない。一方で、大阪市には消防団がない。市消防局の効率アップと強化のためだが、団員確保が難しいことも背景にある。

 こうした現状を補っているのが、市内4065の町会に2人以上いる地域防災リーダーを中心とした「自主防災組織」だ。桃園地区のリーダー20人は年数回の研修を受け、毎年秋に開かれる地区の防災訓練で住民に可搬式ポンプや消火器の使い方を教えている。

 桃園地区にある空堀商店街は戦中、住民が空襲の火災の延焼を食い止めて焼失を免れた。浦野さんは「地域を自分で守る気持ちを受け継いでいかないと」。ただ、リーダーの大半は60〜70代。小学生向けの防災訓練や餅つきといった催しを通じ、子育て世代を巻き込もうと腐心している。

 阪神大震災で大火に見舞われた神戸市長田区。先月29日にあった市の消防団の小型ポンプ操法大会には、長田消防団も参加した。

 6人一組になってポンプで60メートル先の的を落とすタイムを競う。多様な職種のメンバーの最年長は電気工事業の北山千秋さん(63)。「何も出来なかった阪神の悔しさを忘れません」。休日に練習を重ね、参加23チームで3位になった。

 あの日、消防署の車両だけで火勢を抑えられず、消防団が駆けつけようとしたがポンプなど装備がなかった。火事現場での警戒が主な仕事だったからだ。燃え盛る炎を前になすすべがなかった。その反省から市は各区の消防団に小型ポンプを配備し、1998年から操法大会を開く。

 消防団員は消防組織法などに基づく非常勤特別職の地方公務員で、消防署員と消火活動にあたる。神戸市では署員1477人に対し、団員は3倍近い3839人。女性団員も111人いる。今回優勝した兵庫消防団の久原麻衣さん(31)は保育士だ。学生時代のボランティア経験を生かそうと団員になったといい、「消防団で学んだ経験を地域の人たちに伝えたい」と話す。(佐藤卓史、野呂雅之)

■津波と複合災害も想定 名古屋

 真新しい建売住宅を取り囲むように、木造の戸建てや棟続きの長屋が立ち並ぶ名古屋市北区の杉村地区。かつて遊郭としてにぎわい、昭和の面影を残す一帯は、消防車が入れない細い通りが入り組んでいる。

 「地震で火災が起きると、大火になってしまう」。杉村地区の消防団長を務める高橋一男さん(70)は危機感を隠さない。週2回、ポンプを使った放水訓練を実施している。

 49・5ヘクタールの面積がある杉村地区で、消防団員は自営業や会社員ら地区の住民25人、ポンプは2台。地震で火災が広がれば、初期消火できる場所は限られる。

 高橋さんは消火より家屋の下敷きになった住民の救助や避難誘導を優先することを考えている。「消火には限界がある。一人でも多くの命を守るため、住民を早く逃がしたい」と話す。団員は普段から、自動車整備会社から譲り受けたジャッキを自分の車に積む。

 名古屋市は2007年、震災時に消火が難しくなる場所の面積を試算した。幅4メートル未満の道路や、建物倒壊でふさがれる恐れの高い道路はいずれも消防車が通れず、消火栓も水道管の破損で使えないと想定。その結果、当時の2266町の1割にあたる231町で、消火困難区域が町全体の8割以上を占めた。杉村地区は総合評価で「危険度が最も高い」と分類された。

 市や市消防局は、道路の拡幅や避難所になる公園の整備、防火水槽の耐震化などを進める。また、東日本大震災や国の南海トラフ巨大地震の被害想定を受け、津波と火災による複合災害を想定した対策の方針を今年度中に決めるという。

 伊勢湾台風(1959年)や東海豪雨(2000年)などで浸水被害を受けてきた名古屋市南区の星崎地区。9月22日に開かれた消防団の集まりで、市の新しい「消防団震災活動マニュアル」が配られると、団員から疑問の声が上がった。「津波のことばかりで、火災対応の説明が少ない」

 マニュアルは、東日本大震災で250人以上の消防団員が犠牲になったことを受けて作成された。津波が到達するまでにどれだけの時間、活動できるかの計算方法などが記されている。

 国の南海トラフ巨大地震の想定で、南区は津波で区の半分近い840ヘクタールが浸水するとされる。古い木造住宅が集まる地域もあり、星崎地区消防団長の早川典夫さん(63)は「津波火災も起こりうる」と心配する。

 大震災では、津波で押し流された車や家、船舶から火が出て、住民が避難している学校などに延焼した例もあった。大規模な浸水に火災が重なれば逃げ場を失う。早川さんは「避難経路を確保するため、優先的に消火する場所を決めておく必要がある」と言う。

■会社員増え「初動大丈夫か」 長崎

 長崎市は坂の街。車が入れない細い道や階段が入り組み、若い人の定住が進まず、高齢化率が高い。木造家屋が集中し、市が「火災危険予想区域」に指定している地区も多い。

 9月24日昼過ぎにも、傾斜地で住宅火災が起きた。消防車は横付けできず、消火開始は119番通報から20分後。平均より10分近く遅かった。自宅からすぐに出動した消防団分団長の末永昇さん(65)もホースを持って石段を往復したが、住宅3棟が全焼した。

 市は、つなげばすぐに消火活動ができる「初期消火ボックス」を傾斜地に置くなど独自の取り組みを続けている。しかし、来春、定年で消防団を引退する末永さんは心配する。「若い人が入らずサラリーマンも増えた。初動は大丈夫か。入れば特典があるとか、それくらいやって人を確保してほしい」

     ◇

■減る消防団員、地域で対策

 【野呂雅之、木村司】燃えにくく、消火しやすい街づくりに加えて、初期消火態勢の拡充も課題だ。

 神戸市で先月29日にあった消防団の小型ポンプ操法大会。ガソリンスタンド所長や左官など多様な職種の6人が参加23チーム中、3位になった。

 1995年の阪神大震災で大火に見舞われた神戸市長田区の長田消防団だ。最年長の電気工事業、北山千秋さん(63)は「何も出来なかった『阪神』の悔しさを忘れません」と言った。

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