厚労省の「第14回出生動向基本調査(2010年)」によれば、交際相手を持たない未婚者割合は男女ともに5割を超え、87年以降最高となった。博報堂生活総合研究所の「生活定点2012」でも、20代では「いくつになっても恋愛していたい」「好きなら不倫な関係でもしょうがない」も大幅に減少。恋愛への消極的な傾向がのぞく。男性では「初デートでも互いの気持ちが合えばセックスしても構わない」も14年で19ポイント減少した。
紙面にツイート「ソーシャルA」この状況に、エッセイストで動物行動学研究家の竹内久美子さんは「経済への不安といったストレスから、今は欲をセーブして、いつか再開しようとするプログラムが働いているのでは」と話す。
ストレスが生殖活動に影響を与えることは研究でも明らかになっているという。例えば、阪神大震災後の研究では、被災男性のうち、震度6以上で家を失った人の多くで精子の運動性が低下。家族を失った場合は濃度の低下や、回復の遅れも見られた。緊急の事態に直面し、「この状況下で子どもを残しても育たないと、体が反応したと考えられる」という。
動物の多くが時期を限定して繁殖を行う中で、常に生殖可能なヒトはそもそも珍しい存在だ。「繁殖可能な状態を維持するには、かなりのエネルギーを使う。余裕がなければ控えるように働くのは自然なこと」と話す。
「省エネ」の観点から見れば、年功序列への支持の高まりといった「保守化」も説明がつく。順位制があるニワトリのグループでは頻繁に新しい個体が加えられると、毎回争いが勃発。みな体重が激減してしまうという。安定した順位があることで、下位の個体でも何とか食べていける状況が生まれるのだ。
不倫への抵抗感が増しているのも、恋愛意欲の低下や社会ルールの重視の結果とも考えられる。だが、「鳥の場合は、繁殖時のメスとオスで差がないほど、浮気はしない」と竹内さん。羽の色などの性差が大きいほど、メスがオスの魅力を短時間に判別でき、浮気が成立しやすくなるからだ。女性の社会進出が進み、ブランド品など経済力の明らかな指標が減る中、不倫が減るのも道理なのかもしれない。