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平和育むカンナの花 被爆地から全国へ、鮮やかに揺れる

2010年8月4日19時3分

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写真カンナの花に水をやる広島市立基町小の子どもたち=7月23日午前、同市中区、高橋正徳撮影

写真朝日新聞の松本栄一カメラマンが爆心地から800メートルの広島市基町(現・中区)で撮影したカンナ。「75年は草木も生えぬ」といわれていただけに「何か不思議な気がして、思わずシャッターを切った」という=1945年9月

 原爆投下直後の広島で、鮮やかな花をつけたカンナがあった。カンナを学校で育て、原爆や平和を考えようという取り組みが広がっている。夏を迎え、国内の小中学校・高校計41校とフランスで花が咲き始めた。

 広島市中区の市立基町(もとまち)小。校庭のあちこちにカンナの花が揺れている。2008年から毎年球根を植え、児童たちが育ててきた。6年生の陰岩(かげいわ)ニコ君(11)は「原爆がなくなってほしいという思いを込めました」と話した。

 この取り組みを提唱しているのは、創作浄瑠璃作家の橘凛保(たちばな・りほ)さん(52)=東京都足立区=だ。04年、初めて広島市の広島平和記念資料館を訪れた。出口近くで、朝日新聞カメラマンだった故・松本栄一さんが原爆投下1カ月後に撮った1枚の写真が目に留まった。焼け跡に咲いた1輪のカンナ。白黒写真なのに、真っ赤に見えた。

 75年間は草木も生えないといわれた広島で新しい芽が息吹(いぶ)きました――。他の展示が示す原爆の惨禍に打ちのめされていた橘さんは、救いを感じた。「こんな小さな花が、原爆に負けずに咲くなんて」。その生命力を、浄瑠璃にしようと考えた。

 05年8月に作品を発表。07年に書き直し、広島市内の小学校で上演した。だが、カンナを知らない児童が多かった。「それなら育ててもらおう」。無数のカンナが毎年咲く「カンナ街道」がある長野県須坂市の園芸店に「球根を100個買いたい」と申し出た。事情を知った店主が、1千個を無償でくれた。

 08年春、橘さんが初めて贈った球根を広島市立中島小が植えると、口コミで知り、「育てたい」と申し出る学校が相次いだ。今季は広島県25校、長崎、鹿児島両県各4校など6都府県の41校に広がった。

 兵庫県豊岡市の市立小野小と小坂小は広島市立本川小からもらった球根を植え、ともに7月、初めて花が咲いた。小坂小6年の中村莉奈(りな)さん(11)は「カンナを見るたび、広島へ行ったこと、原爆のことを思い出す」という。

 橘さんが6月末、全国の30校から集めた球根を持って渡仏し、世界遺産の修道院があるモンサンミッシェル市に贈った。同市は世界遺産・厳島(いつくしま)神社がある広島県廿日市市と観光友好都市。現地での記念式典で市長は「平和の象徴として、カンナを育て増やしていこう」。8月中には美術館の庭で花が咲きそうだという。

 カンナの花言葉のひとつは「堅実な未来」。橘さんは「カンナは未来の平和を祈る『バトン』になれる。もっともっと子どもたちに、世界に伝えたい」と意欲を燃やす。(山本恭介)

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