北朝鮮を訪問していた米国の訪朝団は10日午前、訪問日程を終了し、平壌から空路で北京空港に戻った。一行は同空港で報道陣に対し、北朝鮮の寧辺(ヨンビョン)の核施設を視察したことを明らかにした。同核施設に外国人が立ち入ったのは、02年12月末に国際原子力機関(IAEA)の査察官が追放されて以来、1年ぶり。
一行によると、訪朝団は平壌滞在中、軍関係者のほか、外交、経済、科学関係者らと会談。「核問題にとどまらず、幅広く見聞できた」「北朝鮮は我々のすべての要望事項を尊重してくれた」(ルイス・スタンフォード大学名誉教授)としている。
寧辺では、北朝鮮当局者と詳しく話ができたという。ロスアラモス国立研究所のヘッカー元所長は「帰国後に米政府に報告するので、詳しいことは話せない」としつつ、「北朝鮮は非常に協力的だった」と評価した。
一行は同日、北京に1泊するとみられており、中国政府に訪朝結果を説明する可能性がある。訪朝団の一部はその後、ソウルと東京を訪ね、日韓両国政府関係者とも会う予定だ。
今回の訪朝結果は次回の6者協議開催に向けた米朝関係に何らかの影響を与える可能性もある。北朝鮮のメディアは10日朝の時点で、今回の訪問団について報じていない。
今回、訪朝したのは、プリチャード元朝鮮半島和平協議担当特使、ヘッカー氏、ルイス氏の専門家グループ3人と、上院の外交委員会スタッフの2人。両グループは、6日に北京経由で北朝鮮入りしていた。
寧辺の核関連施設には、5000キロワット級の実験用原子炉、使用済み燃料貯蔵施設、建設途中の5万キロワット原子炉、再処理施設、核燃料加工施設などがある。
施設は94年の米朝枠組み合意でいったん凍結されたが、02年秋の米高官の訪朝の際に新たな核疑惑が浮上し米朝関係が悪化。北朝鮮は02年12月に「稼働と建設を即時再開する」と表明し、同月末にはIAEAの査察官を追放した。
さらに昨年10月に「8千本の使用済み核燃料棒の再処理を終え、そこで得たプルトニウムを核抑止力の強化へ用途を変更」と表明し、核兵器開発も示唆した。しかし、昨年8月の6者協議後は核施設の稼働は中止しているという見方もあり、核施設の現状がどうなっているかは不明だった。
(01/10 12:13)
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