北朝鮮の核施設を訪れた米国の訪朝団に対し、北朝鮮側が核兵器製造にも使える「プルトニウム」と主張する物質を見せた、と11日付の米紙ワシントン・ポストが報じた。実際にプルトニウムだとしたら、93〜94年の朝鮮半島危機でも解明されなかった北朝鮮による保有が初めて確認されたことになる。訪朝団は訪朝の詳細を近く米政府に報告する。
同紙が米政府当局者の話として伝えたところでは、訪朝団が核関連施設のある寧辺(ヨンビョン)を訪れた際、北朝鮮当局者が「最近、再処理したプルトニウム」と説明する物質を見せた。この「プルトニウム」について、北朝鮮当局者は(1)爆弾には搭載されていない(2)危機を回避するため「凍結」する用意がある、との意向を訪朝団に伝えたという。
使用済み燃料を再処理して抽出したとする、この「プルトニウム」を訪朝団がどう鑑定したかは明らかにされていないが、同紙によると、訪朝団メンバーであるロスアラモス国立研究所のヘッカー元所長らが近く、上院外交委員会の公聴会で証言する見通しだ。
次回6者協議の開催に向けた関係諸国の調整が続いているが、北朝鮮が「核」を誇示する行動に出た場合、ブッシュ米政権のタカ派が反発し、強硬路線に転じるべきだとの声が米政府内で高まる可能性もある。
米国の核専門家や議会スタッフ、元政府高官らでつくる訪朝団は6〜10日、北朝鮮に滞在。02年12月末に国際原子力機関(IAEA)の査察官が追放されて以来、外国人としては初めて寧辺の核施設を訪れた。
ヘッカー氏は平壌から北京に戻った際、記者団に「見たこと、知ったことについては、まず米政府当局者に知らせる重い責務を感じる」と述べ、重要な情報を得たことを示唆。北朝鮮の外務省報道官も10日、「核抑止力を一行に見せた」と核関連物質を公開したことを示唆していた。
米政府は中央情報局(CIA)などの調べとして、北朝鮮が80年代末から90年代初めまでに核爆弾1、2個分のプルトニウムを抽出しているとみているが、これまで推測の域を出ていない。
北朝鮮は昨年7月、ニューヨークで米朝高官が非公式に協議した際、約8000本の核燃料棒について再処理を完了したと米側に通告していた。
(01/11 22:07)
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