北朝鮮・寧辺の核開発施設を1月上旬に訪問した米ロスアラモス国立研究所のヘッカー元所長は21日、米上院外交委員会の公聴会で証言し、「プルトニウム」と北朝鮮側が主張する物質を見せられたことを認めた。「観察結果を総合すると、プルトニウムであってもおかしくはない」と述べ、本物である可能性が高いとの見方を示した。
同氏は、「北朝鮮が核兵器を保有しているかどうかは確認できなかった」とも述べた。
証言によると、同氏やプリチャード元朝鮮半島和平協議担当特使らで構成する訪朝団は、李根(リ・グン)・北朝鮮外務省米州副局長を案内役に寧辺を訪れ、約7時間にわたり核開発施設を見学。
一行は実験用黒鉛減速炉、アルミ缶に密封された使用済み核燃料棒がプールに保管されていた貯蔵施設などを訪問後、再処理施設を訪れた。その後、北朝鮮側からプルトニウムとされる物質が入った二つのガラスケースを見せられた。
物質は、金属状のものが約200グラム、緑色の粉末状のものが約150グラムの計約350グラムだったという。北朝鮮側は「最近、再処理したプルトニウムだ」と説明。さらに、危機を回避するために核開発を「凍結」する用意があるとの意向も表明した。
ヘッカー氏によると、放射線測定器を近づけたところ反応があり、手袋をはめてケースに触れると、冷え切った気温にもかかわらず、生温かかったという。
北朝鮮の核疑惑については、米中央情報局(CIA)が核兵器1、2個分のプルトニウムを保有していると推定しているが、その真偽や所在は確認されていない。
94年の米朝枠組み合意で、北朝鮮は軽水炉が提供されるのと引き換えに寧辺の核施設での活動を凍結。しかし、02年の米朝高官協議で北朝鮮が濃縮ウラン計画の存在を認めたとして、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)は同年11月、米国負担の年間50万トンの重油供給を凍結。北朝鮮は02年12月末、寧辺から国際原子力機関(IAEA)の査察官を追放し、実験炉を再稼働、使用済み核燃料棒を貯蔵施設から運び出し、再処理に着手してプルトニウムを抽出しているのではないかとの懸念が広がっていた。
(01/21 23:15)
|