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産科医不足、大阪の都市部でも深刻 分娩制限相次ぐ

2006年12月16日11時22分

 地方で深刻化している産科医不足が、都市部でも加速してきた。一施設あたりの産科医数が東京に次いで多い大阪でも、産科を閉める病院が続出し、残ったところは分娩(ぶんべん)制限が相次ぐ。大阪市内でお産できる病院は来春、23カ所に減り、3年前の4分の3。お産の場の連携・再編は待ったなしだが、予算も医師も不足しており、拠点病院に医師を集める「集約化」のめどさえ立たない。(久保佳子、阿久沢悦子)

図   

 ●市民病院も制限

 地域医療の中核を担ってきた大阪市内の市民病院で現在、お産ができるのは市立総合医療センター(都島区)、住吉(住之江区)、十三(淀川区)の三つ。住吉、住之江、西成3区のお産の約2割、年約750件を扱ってきた住吉市民は9月、月二十数件と半分以下に絞る分娩制限を始めた。産科医3人が定年などで病院を去り、常勤医が3人になったからだ。

 麻酔科医も1人だけで、夜間の緊急帝王切開は産科医が自ら麻酔をする。中村哲生医師は「初めて聞いた人は驚くが、ここではずっとそうだ」。応援医を1人頼んでいるが、それでも月の半分近くは当直や自宅待機で夜間も拘束される。

 医師5人態勢の十三市民病院も女性医師の産休で1人減となった。淀川区内で唯一のお産ができる総合病院で、分娩数は年間約750件。出口昌昭・産婦人科部長は「市民に身近な公立病院として踏ん張ってきたが、これ以上、人が減れば分娩制限を検討せざるを得ない」。

 リスクが高い分娩も扱う総合医療センター。産科医6人で年900件のお産を診てきたが、周辺の産科廃止が相次ぎ、今年上半期は25%増のペースだった。来年から正常産の受け入れ上限を月45件から39件に減らす。合併症のあるハイリスク出産や緊急搬送の計50件の枠を狭めるわけにはいかないという。

 ●焼け石に水

 産科医が減り続ける中、大阪市は昨年8月、四つの市民病院にある産科を三つに再編。医師を住吉市民病院などに振り分け、5人以上の態勢を整えたが、わずか1年で崩れた形だ。医師らは「勤務が過酷な状態が変わらなければ再編しても効果が上がらない。焼け石に水だ」とこぼす。

 医師の負担軽減に向けて市が期待するのが、医師に代わって助産師が正常産を担当する「助産師外来」。今年11月に住吉市民病院に設置され、来春には十三市民病院にもできる。さらに今年5月には、当直の応援医確保のため、産科と麻酔科の当直単価を1回最高7万5千円と約3倍に引き上げた。ただ、常勤医の確保は困難な状況だ。

 ●深刻さ増す南部

 「安全にお世話できる受け入れ能力の限界に近づいております」。今月1日、民間の愛染橋病院(浪速区)のホームページに、来年3月まで新規の分娩予約を断る通知文が掲載された。産科医は8人。毎月約120件の予約分娩と10〜20件の緊急搬送を受け入れている。分娩数は西日本一だ。

 だが、産科医1人の退職が決まり、補充のめどが立たないまま、産科を休止したほかの病院から移ってくる妊婦が相次ぐ。今月は予約だけで150件を超えた。村田雄二院長は「市内の『最後の砦(とりで)』として、すべてのお産を受け入れようと思ってきたが、医療事故が起きてからでは遅い」。

 来年3月、阪和住吉総合病院(住吉区)が分娩をやめ、市南部の4区にある病院の産科はすべて分娩を休止するか制限することになる。年500件を扱ってきた診療所のオーク住吉産婦人科(西成区)も同4月にお産を休止する。

 市は住吉市民を周産期医療の拠点と位置づけ、常勤医を6人以上に増やすとともに、老朽化が著しい建物を改築する考えだ。ただ、返済期限が迫っている市の病院事業の不良債務は約116億円。総務省は5年以内に解消しなければ、新規起債は許可できないとしており、先行きは厳しい。

 巽陽一・市医務保健総長は「お産状況の改善のためには、市内だけでなく、近隣都市を含めた産科医の集約化を考えなければならないだろう」と強調する。

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