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費用未払い、悩む病院 退院後、連絡途絶え…

2006年05月31日

 産科を持つ全国の医療機関で、妊婦から出産費が支払われない「未収金」が共通の悩みになっている。母親が退院後、赤ん坊とともに連絡を絶つ例が後を絶たない。健康保険から支給される30万円の出産育児一時金で、多くが出産費用をカバーできないからだ。金銭面でも、安心して子どもを産めない状況が進む。

 「お金がなくても、お産できますか」。神戸市内の民間病院には、今年に入ってこんな電話が相次ぐ。ここ数年、出産費の未収金が増えていたが、とうとう「事前予約」の電話まで入るようになった。産科医が減り分娩(ぶんべん)の予約を早い時期に制限する病院が増えたため、緊急時の「駆け込み寺」として口コミで広がったという。

 健診代を節約し、医師にかからないまま出産直前に自分で救急車を呼ぶ妊婦が多い。20代女性の場合、兵庫県伊丹市で産気づいて救急車を要請。西宮、芦屋、神戸と受け入れ先を探したが、すべての病院で断られ搬送されてきた。担当者は「健診情報がないのは身体的にリスクがあるとみなされ、未払いの可能性も高く社会的にもハイリスク。どこも受けたがらない」。結局、女性は無事出産したものの姿を消し、病院に未収金40万円が残った。

 病院は自衛策として、入院時に払ってもらっていた「保証金」30万円を昨年から入院前の妊娠35週時点で納めてもらうことにした。一括支払いが無理な場合は分割払いを求めている。病院長は「困っている人がいれば助けるのが仕事。でもこうしたケースほど公立病院にみてほしい」と漏らす。

 堺市で唯一、産科救急がある市立堺病院では、入院費の未収金のうち出産関連が25%を超え、約300万円にのぼる。10代後半で健診を受けないまま出産し、親も費用を払えないケースなどが増えた。担当者は「周囲の産科が減る中、まさに産もうとしている人を断れない。月に数千円ずつ何年もかけて払ってもらう場合もある」。

 日本産婦人科医会が2年前、東北6県で実態調査をしたところ、回答があった250施設の51%が出産未収金を抱えていた。岩手県では、27カ所の県立医療機関のうち産婦人科があるのは15カ所だが、未収金全体に占める同科の割合は3年連続でトップ。金額も昨年末で約7800万円にのぼり、2年前より約1800万円増加した。出産費が払えない人は国民健康保険料を滞納していることが多く、一時金をあてにしていても、市町村で先に滞納分と相殺されてしまうことがある。

 すそ野は広がっている。経済的に困窮している人の出産費を軽減する「助産施設制度」の利用者は04年度で6409人。5年間で44%増えた。制度が適用されている大阪府内の病院関係者は「出産可能な年代でフリーターや失業者が増え、低所得化が進んでいる影響」とみる。

 少子化対策で政府は今秋、一時金を5万円アップの35万円にする方針を打ち出している。だが、話題になった出産無料化は事実上、見送られた。

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