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産める場守れ、手つなぐ母 産院廃止、署名で止めた

2006年06月04日

 産科医不足で分娩(ぶんべん)を扱う病院が急減する現実に直面している各地の母親たちが、ネットワークづくりを進めている。シンポジウムや集会で自らの出産体験を振り返り、それぞれの思いを発信する活動が盛んだ。拠点病院への産科の集約化が進む中、「安全なお産の場を近くに残して」と、医師確保を求める署名運動の輪も広がってきた。

 京都市内の女性たちは4月、「きょうとお産といのちの会」を結成した。5月の例会には赤ん坊を抱えた母親ら20人が参加。お産の体験を語り合い、医師不足の現状についても意見交換した。

 同市伏見区の上田亜津子さん(38)は04年、子宮筋腫が見つかり、希望する助産院ではなく、京大病院で長女を産んだ。病院に「部屋は暗くして自由な姿勢で産みたい」などと要望したが、安全を理由に断られた。唯一、かなったのは帝王切開せずに産めた点。「妊婦はもっと自分のお産に声を上げていい」

 病院の集約化には、「新潟に里帰り出産したら、産める病院が一つしかなかった」「患者が一部の病院に集中し、3時間待ちの5分診療。触診もない」の声が寄せられた。実行委員の一人、矢板あゆみさん(30)は「母親や赤ちゃんの気持ちに寄り添った周産期のケアを受けられるような社会であってほしい」。

 集約化は、5月14日に医師と母親らが横浜で開いた「どうする? 日本のお産」ディスカッション大会でもテーマの一つだった。母親から「出産の際、健診から担当してきた助産師に付き添ってもらいたい」など、分娩の場を切り離さない工夫を望む意見が相次いだ。

 1日から市立病院の産科が休診した兵庫県加西市。市連合婦人会が中心となって1カ月で約2万800人の署名を集め、5月末、市と病院に提出した。板井ちさ代会長は「市内には産婦人科の開業医がなく、出産するのに市外に出なければならない。お産は緊急性が高く、母子の生命にかかわる」と訴える。

 長野県上田市では昨秋、医師が引き揚げられた市立産院の廃止をめぐり、母親たちが県内外から9万人の署名を集め、存続につながった。長野にはほかにも、地元の産科休診を機に発足した二つのグループがある。岩手県花巻市でも母親たちでつくる「お産と地域医療を考える会」が県や市への陳情活動を続ける。

 お産の現状に詳しい医療ライターの河合蘭さん(46)は「よりよいお産の場を求めて、母親たちがつながり始めている。医師や行政は、集約化を阻止する抵抗運動ととらえがちだが、安全な形で納得できるお産がしたいという思いをくみ取ってほしい」と話す。

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