現在位置 : asahi.com > ニュース特集 > いま、お産の場は > 記事 ここから本文エリア

自らも母 悩む女性医師、続けられる環境がカギ

2006年05月19日

 お産に携わる産婦人科医が減り続ける中で、女性医師の割合は増えている。20代では6割以上だ。彼女ら自身が出産や子育てを迎える30代に、働き続けられるかが、明日の産科医療の鍵を握る。環境改善に向けて、女性医師によるネットワーク作りも始まった。

写真

育児休業を終え、当直なしの条件で産科医として復職した中村恵美さん=大阪市福島区の大阪厚生年金病院で

 4月25日、衆院厚生労働委員会で、横浜市立大付属市民総合医療センターの奥田美加産科医(39)が証言した。横浜周辺ではお産をやめる医療機関が続出。分娩(ぶんべん)受け付け数の推移から、2年間に横浜、横須賀両市を中心に約2500人がお産の場所に困る「出産難民」になったとみられる。センターには妊婦が殺到し、昨年の病床稼働率は115%に上った。

 ●息子に会えず

 ある日の勤務は午前中の外来の後、緊急手術と帝王切開が計3件。「その前日は当直で2日間フルに働き、帰宅したのは23時過ぎ。翌日もまた当直でした」。小学1年の息子の起きている姿を何日も見ないことがよくある。「子を産み育てる人々を守るべき立場の我々が、自分たちのこれらの生活を守れずにいます」

 離職する女性医師は少なくない。東京都内の大学病院に勤めていた女性(32)は04年末、出産を機に辞めた。独身時代、月7回前後の当直をこなし、苦にならなかったが、「子どもを持って働き続けるにはリスクが高すぎる」。子育てが一段落したら復職するつもりだが、現状のままなら産科に戻る気はない。

 ●院内保育所を

 女性が勤務しやすい工夫を始めた病院もある。大阪市福島区の大阪厚生年金病院は2年前、医師のフレックス勤務を導入した。産婦人科常勤医6人の半数は女性で、全員が制度を使っている。

 2歳9カ月の娘がいる中村恵美医師(37)は静岡県で妊娠、出産し、昨年6月、「お産を再びやりたい」と同病院を選んだ。午前8時半から午後5時15分まで、当直なしの条件で働く。病院から車で10分の場所に保育所があり、小児科病棟では病児保育も受けられる。

 田中あゆみ医師(41)は産休明けの4月、兵庫県明石市のあさぎり病院に移った。前の勤務先はハイリスクの妊婦を受け入れる2次救急指定病院。当直が月8〜10日、翌日も夜まで勤務が続いた。妊娠5カ月で、帝王切開3件に立ち会った後に出血。その後、当直免除になったが、9カ月を前に再び出血し、急きょ帝王切開した。子どもは1900グラムの未熟児だった。

 今の病院には職員用の保育所がある。当直は週1回で、呼び出されるまで保育所で子どもと過ごせ、翌日は昼に解放される。「難産の体験は医師として大きな収穫だった。出産を体験した産科医がもっと現場に残れるようにしてほしい」

 東京都立府中病院の桑江千鶴子部長(54)ら7人は12日、女性が働き続けやすくするための専門委員会設置を日本産婦人科学会に要望した。委員会を足場に、全国の女性産科医でつくるネットワークを立ち上げ、結婚・出産後の職場復帰を進める「女性医師バンク」や院内保育所の整備につなげていく。「女性医師問題に今、手をつけなければ、5年後には産科医療が崩壊するのです」

 ◆キーワード

 <女性産婦人科医> 厚生労働省の04年統計によると医療機関に勤務する女性の産婦人科医は2212人で、全体の21.7%。年代別では20代で女性が65.9%、30代で38.9%、40代で17.0%を占める。35〜44歳は592人で、94年統計の25〜34歳に比べて45人減。同省は昨年6月、「女性医師が仕事と家庭を両立できる就労環境の整備」の課題として、柔軟性のある勤務形態の導入▽保育施設の充実▽離職した医師の再研修制度などを挙げている。

PR情報



ここから広告です
広告終わり

マイタウン(地域情報)

∧このページのトップに戻る
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。 Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.