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母子救急の「砦」地域周産期センター 7病院、分娩できず

2006年05月10日

 お産を扱う医師の減少で、出産救急の拠点「地域周産期母子医療センター」に指定されている全国の病院のうち、7カ所が分娩(ぶんべん)の取り扱いをやめていることがわかった。センター機能の停止によって、地域の高度医療が確保できない状態だ。いつ何が起きるかわからないお産に備え、母子の安全を守ってきた「最後の砦(とりで)」。そのほころびは、二つの命を左右する。

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産科休診で使われなくなった地域周産期母子医療センターの分娩室

 体重2380グラムの小さな体から漏れる息がだんだん速く、荒くなっていく――。4月8日深夜、生後4日目の女の子を乗せた救急車が、大阪府内の産科医院から新生児集中治療室(NICU)がある兵庫県立尼崎病院を目指して走っていた。心臓疾患が見つかったからだ。傍らに父親(38)と母親(34)が付きそう。病院到着まで30分余。赤ちゃんは途中でショック状態に陥った。診察した医師は「あと1時間遅かったら、だめだった」。

 同病院は県内に9カ所ある地域周産期母子医療センターの一つ。産婦人科と小児科が協力し、阪神地域の母子の危機を救ってきたが、激務による病気などを理由に産婦人科医4人のうち3人が退職。昨年6月に分娩取り扱いをやめた。今はNICU20床だけが残り、他の医療機関から搬送される未熟児を引き受ける。

 産婦人科ベッドがないため、母親は翌朝、産院に戻った。1日おいて、子どもの手術に付きそうため再び尼崎へ。帝王切開による出産で傷がふさがっていなかったが、3時間の手術中、控室で横になって過ごした。ただ、ストレスと疲労で、母親の入院は通常の倍の2週間に。父親は「娘が助かってありがたいが、産科とNICUは同じ病院にあってほしい」。

   ■   ■

 京都府舞鶴市の国立病院機構舞鶴医療センターは4月、早産があった産院に小児科医が出向いて新生児を引き取る「出前NICU」を始めた。産婦人科が3月末になくなったが、地域に新生児の高度医療を担える病院がない。産院からSOSがあれば、医師2人が救急車に保育器を積んで出発。分娩と同時に気道確保などをして連れ帰る。

 産科休診は医師3人が相次いでやめたからだ。50代の部長と30代の夫妻。当直を交代でこなし、手術があれば呼び出される「オンコール」も月に10日あった。夫婦には幼子がいて、夜中の緊急手術が入ると預ける先もない。限界だった。

 同センターの中島文明医師は「出産前の母体より新生児の搬送の方が危険だが、やむを得ない。悪天候時に搬送がないよう祈るだけです」。

   ■   ■

 医師を確保し、分娩を再開しても窮状は続く。

 静岡県島田市の島田市民病院で4月、産科医1人が見つかり、1年7カ月ぶりに産科が再開された。県中部40万人の医療圏で唯一のNICUを持ち、体重千グラム以下の赤ん坊はすべて診てきた。

 休診前の分娩数は年800件だったが、当面は150件に制限。高齢出産などハイリスクの妊婦は、ほかの病院を紹介している。センターとしての機能回復はまだ先だ。

 ◇キーワード

 <周産期母子医療センター> 未熟児の出生増や夜間・休日のハイリスク分娩など、妊娠22週から生後7日未満までの周産期の医療に対処するため、厚生省(当時)が96年、設置を促した。都道府県単位に相当する3次医療圏ごとに総合周産期センター、より狭い2次医療圏ごとに地域周産期センターを整備し、2月末現在、全国で総合54、地域187施設がある。だが、医師不足のため北海道、栃木県の各2カ所と宮城、京都、兵庫3府県の各1カ所の地域周産期センターで分娩取り扱いができなくなっている。

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