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(どうするお産 新しいシステム作りへ:上)院内助産所 助産師パワー拡大中

2006年06月23日

 日本の赤ちゃんの99%が生まれる病院・診療所。そのお産の場が、産科医不足で減り続けている。数年前に「産科・産婦人科」の看板を掲げていた施設の半数で、もうお産ができない、という。赤ちゃんの誕生を心から喜びあえるお産の場をどうつくることができるのか。新たな仕組みづくりを見た。

 「いい感じやでー、もうすぐやでー」

 神戸市垂水区の佐野病院4階にある院内助産所。畳の上で、助産師の石村朱美さん(57)が、産婦のアンダーソンかおりさん(36)に声をかけ腰をさする。長男弘喜(ひろき)君(9)と次男蒼空(そら)君(4)が心配そうに見守る中、5月19日未明、長女の菜々ちゃんが生まれた。

 弘喜君は97年、同病院の医師が分娩(ぶんべん)台で取り上げた。「初めてのお産だったし、医師の指示通りにいきむだけで精いっぱいだった」と、かおりさん。その年、同病院に院内助産所ができ、次はそこで、と決めた。備え付けの棚につかまり、助産師と共にいきむタイミングを探る。立ったままの姿勢は、分娩台に横になるよりも赤ちゃんが降りてくる実感があり、陣痛も逃しやすかった。「自分の力で産み落とした感覚に、やみつきになった」

 菜々ちゃん誕生の日は、助産所でお兄ちゃんたちが生まれたての妹と枕を並べた。アットホームな雰囲気だが、いざと言うときは医療のバックアップもある。「安全と安心が両立できるのが魅力ですね」

 ●「過重労働減る」

 同病院の医師、三浦徹さんは婦人科系のがんを多く手がけてきた。がん治療には複数の選択肢があり、リスクと効果の組み合わせを患者自身が決める。「それなのに出産は医師が主導し、一様に分娩台で会陰切開。おかしいと思ったのが、院内助産所の始まり」と話す。

 妊娠6カ月時の医師の診察で、正常分娩可能と診断されれば、妊婦が医師コースか助産師コースかを選べる。昨年は490件のお産のうち127件が助産師コースだった。三浦さんも石村さんも「助産師のモチベーションも高まり、医師の過重労働も減る」。当初、兼務だった助産師は専属になり、今春4人増えて7人に。来年には、正常出産は原則、助産師が請け負う「バースセンター」体制を整える予定だ。

 医師不足に悩む自治体は佐野病院を視察し、対策を練っている。

 その一つ、宮城県の公立刈田総合病院。ここの産科医は水上端さん(62)ただ1人だ。年間のお産は100件前後で、毎日が待機・当直状態。少しでも負担を減らそうと昨年10月、助産師3人が専属となり院内助産所を開いた。これまでに4人が助産所で出産した。今後の希望者は4人。同病院情報企画課は「安全のPRがまだ足りない。実績を積めば、助産所での出産希望も増えると思います」。

 ●少子化歯止めに

 一足飛びに助産師にお産を任せるのは不安、と「助産師外来」から始める自治体もある。

 1万5000平方キロの県域に分娩可能な病院が14しかない岩手県。県医師会は昨年「助産師外来開設のためのガイド」を作成して、公立病院に呼びかけ、4病院で開設した。ガイドには、産婦と密にかかわる助産師が健診を担うと、「育児の意欲や自信が高まり、虐待が減る」「もう一度出産したいという意欲につながり、少子化の歯止めになる」などのメリットも紹介されている。県は今年度予算に研修費71万円を計上し、助産師の技術向上に独自で取り組み始めた。医療国保課は「岩手は産科医が1人抜けると、安全な産科医療が成り立たない。住民の理解を得て、将来の院内助産所開設につなげていきたい」と話している。

 ◇キーワード

 <院内助産所と助産師外来> 日本看護協会の定義によると、院内助産所は▽緊急時の対応ができる病院で▽助産師が妊産婦やその家族の意向を尊重しながら▽妊娠から産後1カ月まで正常異常の判断をし、お産を介助するシステム。助産師外来は、病院の中で医師の診察と並行し、助産師が自律して健診や保健指導を行う。助産師と医師の役割分担・緊急時の連携が鍵になる。開業助産所を含め、日本で助産師が取り上げる赤ちゃんは全体の3%。

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