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(どうするお産 新しいシステム作りへ:中)オープンシステム

2006年06月24日

 「もう生まれたんかな……。間に合わんかったけど、安産で何より」

 5月27日、岡山市の岡山大学付属病院。八木奈々絵さん(24)は、駆けつけた主治医近藤和二さん(78)から、5分前に生まれたばかりの長男空麻呂(そまろ)くんへこんな「祝福」を受けて、大笑いしあった。

 近藤さんは市内の開業医だ。妊娠期間は近くの開業医が健診で母子を見守り、お産時は岡大病院に出向いて病院スタッフとともに取り上げる……、そんな「産科オープンシステム」に参加している。同病院を中心にしたシステムは、周辺の病院・診療所12カ所を結んで昨年8月に始まり、空麻呂くんが第1号ベビーだ。

 安産で近藤さんの到着前に、病院スタッフに見守られての出産となったが、八木さんは、「診療所の健診はきめ細かく、悩みも聞いてもらえた。お産は大きな病院で何があっても安心だった。満足しています」。

 ●30の施設と連携

 今年1月にシステムが始まった大津市の滋賀医大病院。診療所や助産院など約30施設が参加している。

 その一人、市内の開業医松島由生子さんは3月、同大病院の分娩(ぶんべん)室を使い、帝王切開で赤ちゃんを取り上げた。通常は帝王切開も診療所でするが、妊婦に合併症があり万が一に備えた。

 出産当日は大学の医師らが助手や麻酔管理を担当、松島さんが執刀した。「人手が充実しており安心して手術できました」

 同システムは、医師の多い病院で分娩を扱うようにして、お産の安全を確保する狙いで始まった。だが、医師を拠点病院に集約できるため、医師不足の打開策としても注目され始めている。

 日本で最も産科オープンシステムが進む静岡県浜松市。95年、県西部浜松医療センターが始めたのに続き、聖隷浜松病院、浜松医大病院などが相次いで導入。市内の5病院に広まった。

 浜松医療センターでは年間約1100件のお産のうち7割がこのシステムを使う。周産期部門には産婦人科と新生児科合わせて9人の医師がいるが、外来用の診察室は婦人科も含めわずか3室。各医師の外来担当も週1〜2日と少ない。前田真・周産期センター長は「外来が減るだけで、かなりの負担軽減。その分を分娩や手術に集中できる」。

 ●若手医師に魅力

 診療所側にもメリットがある。システムに参加している開業医、大谷嘉明さんは、分娩施設を持たず、健診だけ担当、お産はすべてセンターを使う。急患に追われることなく健診に力を入れられるようになって、担当する妊婦は、オープンを始めたころの年180人が2倍以上になった。リピーターも多く、4人目を産んだ女性も。「産婦人科医はこれまで、お産をやるなら24時間の過酷な勤務に耐えるか、お産をとりあげないか二者択一だった。このシステムなら、役割分担で負担を減らしつつ、開業医も、拠点病院でお産や帝王切開、高度な手術もできる。若手産科医にも魅力的な『第3の道』です」。市内には大谷さんのように、分娩施設をもたない診療所が数カ所になった。

 大阪厚生年金病院のように、システムに参加する診療所の医師が病院の当直ローテーションに入り始めたところもある。

 課題は、担当妊婦が増えると開業医がお産のとき病院につきそえないこと、「健診は診療所、お産は拠点病院」という役割分担が進んだとき、それでも近くの診療所で産みたい妊婦の選択肢をどう残すかだ。

 安全と安心と、労働環境の改善……。妊婦にも、病院、診療所にもメリットがある「三立」システムへ連携の模索が進む。

 ◆キーワード

 <産科オープンシステム> 主治医や助産師が拠点病院に出向いてお産を取り上げる場合はオープンシステム、分娩を病院に任せる場合はセミオープンと呼ぶ。開放型病床を持つ病院227カ所を対象とした03年厚労省研究班の調査によると、回答した病院のうち55%が「産科オープン可能」としているが、本格実施の病院はまだ少ない。同省は05年度、岡山大病院、愛育病院(東京)、仙台赤十字病院をモデル事業に認定。さらに8カ所に広げる方針。

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