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(どうするお産 新しいシステム作りへ:下)集約化を超えて リスク軽減模索

2006年06月25日

 拠点病院に医師を集める「集約化」が進む東北。仙台市で4日、ディスカッション大会「どうする?日本のお産」があり、妊産婦や医療者ら93人が集まった。

 集約化は、産科医不足の中で、当直回数を減らせるなど職場環境を改善し、お産の安全性も高めるとして国や学会が進めている対策の一つ。一方、近くの医療機関からは産科がなくなっていく。お母さんたちは「病院あたりの分娩(ぶんべん)数が増えるので、取り違えられないように母子手帳の表紙にプリクラをはる」「集約化は仕方がないが、本当は健診から分娩まで同じ人に診てもらいたい」などと意見を出し合った。

 大会事務局を勤めたとも子助産院(同市泉区)の伊藤朋子助産師は「宮城県では電話帳やインターネットで検索できる病院の3分の1しか、お産ができない。まず、どこでどんなケアが受けられるかの情報が必要です」。

 ●適正配置も必要

 産科医不足から病院の集約化を進めた国の一つがフィンランドだ。1950年代から政府主導で段階的に取り組み、1病院当たりの年間分娩数は今、500〜5000。お産の数で病院に予算がつくため、本来ハイリスクの出産担当の救急病院が次々と正常産を扱うようになり、小さな個人病院は閉鎖に追い込まれた。半径100キロの医療圏で、お産ができるのは救急病院が一つという地方もある。

 91〜95年の調査では、病院が集積する都市部より地方在住の女性の方が、道中や自宅などで予定外に出産するリスクが4倍も高いという結果が出た。地元では「集約化が進んだ地域の病院の適正配置を再検討すべきだ」との反省も生まれている。

 同国の周産期ケアシステムを研究する日赤看護大の谷津裕子助教授は「よりよい集約化には、各施設が提供できる医療技術、マンパワー、ベッド数などの情報を公開し、実態に基づいた議論をして、母子にとり安全で納得できるシステムを作らなくては」。

 ●産後も継続ケア

 人口あたりの産科医数が日本の約半分だが、理想的なお産の場と注目されるのがニュージーランドだ。

 特徴は「継続ケア」。妊婦は、産科医、助産師、一般医から自由にマタニティーケア担当者(LMC)を選べる。LMCは妊娠から分娩介助、産後訪問まで一貫してかかわる。出産費用は税金で賄われ、自己負担はゼロだ。

 すべてのお産に助産師が立ち会うことが法的に義務づけられており、03年は73.2%の女性が助産師をLMCとして選んだ。全国に約90カ所ある分娩施設は、すべてオープンシステムで、LMCが自由に使える。帝王切開率など周産期医療のデータベースを国が公開、医療者の訴訟リスクを軽減するための無過失補償制度も整えている。厚労省研究班の一員で同国の制度を調べた戸田律子さんは「助産師と産科医が良好な協働関係を築き、女性が産みやすい環境を一番に考えている」と高く評価する。

 妊産婦向け出産準備クラスの講師で5児の母、大葉ナナコさん(41)は「産科医不足が深刻な今こそ、女性が産む主体を取り戻すチャンス」とみる。女性たちが出産の生理的メカニズムを知り、自分の体の力を使って、薬や時計から解放された出産を目指すようになれば、医療行為も医師の過重労働も減らせるからだ。「その人らしいリズムで産み、生まれる社会をみんなで作っていきましょうよ」

 ◇キーワード

 <女性が求める妊娠・出産・産後のケア> 厚労省の「こども家庭総合研究」が02年に妊産婦1500人にアンケートした結果では、女性が周産期ケア施策に求めているのは「1対1の継続的なケア」「助産師のケア」「医療情報の開示」など。具体的なケアの中身としては「出産準備教育の充実」「女性の希望(バースプラン)に柔軟に対応する施設方針」「処置・治療への納得のいく説明」「日常生活(食事、休養、運動など)への個別的で親身な助言」などが上がった。

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