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大学病院も産科医不足 研究・がん治療瀬戸際 本社調査

2007年04月02日08時53分

 子宮がんなどの治療も縮小し、研究も思うようにできない――。朝日新聞が全国80大学の産婦人科医局に実施した調査で、大学病院でも医師不足が深刻になっている実態があきらかになった。夜間の出産への対応に加え、トラブルがあればすぐに訴訟になるといった理由から敬遠傾向にある中、地域の病院に派遣していた医師を引き揚げても補えず、5年間で医師が半減した大学も多い。高度医療と人材育成、治療法の研究を担う大学病院の産婦人科が危機に直面している。

 西日本のある私立大の産婦人科医局は07年3月時点で、教授、講師、助手、大学院生の4人しかいなかった。02年度以降、新規入局者はゼロ。病院での診療は、大学院生以外の3人で分担。当直は組めず、夜間の緊急時には教授が駆けつけることもある。

 昨年の分娩(ぶんべん)数は約170件で前年の半分ほど。新生児を診る医師も昨年やめ、母子の命にかかわるような危険なお産は受け入れられない。

 大学病院の産婦人科は、お産だけでなく子宮がんや卵巣がんなどの治療でも大きな役割を果たしている。だが、この病院では5年間で手術件数が半減。進行がんなどの大きな手術は、教授の出身大学から応援をもらってしのいできた。4月に入り、ようやく医師が3人増えた。

 群馬大は、群馬県立がんセンターの婦人科に派遣している医師3人のうち2人を、4月に引き揚げる。残る1人もいずれは引き揚げる予定で、すでに1月から新規の患者は受け入れていない。

 県内で婦人科のがんに十分対応できるのは、同センターを含め数施設。中でもセンターの手術件数は年約200件で最多だ。だが峯岸敬教授によると、06年度に20人いた医師のうち6人が4月以降、医局を離れたり休んだりするため、人繰りがつかなくなったという。

 富山大の医局は03年以降、14ある関連病院のうち7病院への医師派遣をやめた。それでも体外受精などの不妊治療はできなくなった。

 札幌医大は「地域医療への貢献が大学の方針」のため、派遣している医師を引き揚げていない。他大学が医師を引き揚げた病院もカバーしており、02年に33人いた医局員はほぼ半減した。

 診療・教育・研究という大学病院の役割のうち、研究に時間をさけなくなった。02年度以前は10題を超えた学会での発表が、最近は4、5題だ。「新しい治療法の導入が遅れ、治療レベルも落ちるのではないか」と斉藤豪教授は心配する。

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 〈調査の結果〉調査は全国80大学の産婦人科医局を対象に調査票を2月に送り、67大学(84%)から回答があった。1月現在、大学本体の医局にいる医師数は平均22.1人。02年の27.1人から5人減った。5年前より医局員数が増えたのは4大学だけだった。

 入局者数は、02年が3.9人、03年は3.4人だったが、臨床研修が必修化され、新人医師が2年間に様々な診療科を回るようになった04年は1.1人、05年は0.9人。研修を終えた医師が初めて入局した06年も2.7人と、必修化前の水準には戻らなかった。

 4月の新規入局予定者数は平均2.9人。「0人」が7大学、「1人」が15大学あった。

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