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表裏の原画はがし、台紙に貼り直す 鳥獣戯画、技法解明

2011年2月15日23時31分

【動画】鳥獣人物戯画 和紙の表裏をはがす様子を再現

写真拡大会見で、和紙を2枚にはがすことで裏に絵が写る過程が実演された=15日午後、京都市東山区の京都国立博物館、飯塚晋一撮影

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 動物たちを擬人化して描き、「日本最古の漫画」とも評される国宝・鳥獣人物戯画(鳥獣戯画)の一部で、和紙の表と裏に描かれた原画を後世にはがして両面を台紙に貼りつけ、絵巻物に仕立て直していたことが、保存修理を進めている京都国立博物館の調査でわかった。同館と所有者の高山寺(京都市)が15日発表した。こうした絵巻物の制作技法が解明されたのは初めてという。

 修理は朝日新聞文化財団の文化財保護助成事業の一環で、2009年から進められている。同館によると、補修に伴う事前調査で、全巻にわたって不自然な墨の跡が100カ所以上、点在しているのが確認された。絵柄を反転させるなどした結果、絵の裏側に描かれていた別の絵の墨がにじんでできたと判明した。

 ハスの葉をかぶったカエルなどの情景で構成された丙巻では、10枚の和紙の表裏に描かれた絵をはがし、計20枚を別の台紙に貼り直して制作されていた。ほかに、丁巻が描かれた和紙の裏側をはがして、甲・乙・丙・丁各巻の少なくとも数十カ所の補修に使っていたことも確認された。甲・乙両巻は和紙をはがしていなかった。

 溶かした繊維を漉(す)いてつくられる和紙は、断面が層状になっており、平安時代末〜鎌倉時代に描かれた原画を江戸期に補修したり、絵巻物にしたりする過程で、和紙の両面を分離させる技法がとられたとみられる。若杉準治・同館列品管理室長は「劣化や虫食いによる損傷が全巻に及んでおり、墨の跡も最初は汚れではないかとみられていた。精密な調査で『にじみ』と確認できた」と話す。(天野幸弘)

    ◇

〈鳥獣人物戯画〉相撲や水浴びなどに興じるサルやカエル、キツネなどの動物のほか、様々な人物をユーモラスに描いた墨絵の風刺画。4巻(甲・乙・丙・丁)から成り、横53〜57センチ、縦31センチ前後の和紙をつないで計約44メートルの絵巻物に仕立てられた。天台座主を務めた鳥羽僧正覚猷(かくゆう)を作者とする説があるが、複数の筆跡がうかがえることから異論も出ている。

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〈有賀祥隆(よしたか)・東京芸術大客員教授の話〉 日本美術史上の新発見であり、和紙ならではの面白さだ。こんな成立過程は予想もしていなかった。観賞用なら最初から裏表に描くとは思えず、完成品ではない「下絵」だった可能性もあるのではないか。ほかの絵巻物にも同じ技法が使われていないか、再検討する必要がある。

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