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ショーン・ホワイト(スノーボード) 心震えた 五輪の大技

2010年3月9日16時6分

写真「日本に来たから今夜はカラオケに行くよ。歌うのはドアーズ。声が低いからジム・モリソンの歌が合うんだ」=長島一浩撮影

 バンクーバー五輪で見せたダブルマックツイスト(DMT)は衝撃的でした。スノーボードのカリスマも、あの舞台では震えていたとか。

    ◇

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 武内 金メダルを見せてもらえますか。

 ホワイト ええ。

 武内 重いですね。

 ホワイト ずっとズボンのポケットの中に入れていたので、重かった。

 武内 どこに飾りますか。

 ホワイト 自分の部屋のどこかに飾ろうと思ってるんだけど、五輪が終わってから家に帰っていないので、まだいい場所を見つけていないんだ。

 武内 2度目の五輪も最高の結果でした。

 ホワイト 自分が優勝したのが信じられないくらい、リアルには感じられなかった。生涯でベストなパフォーマンスを味わえたね。

 武内 2回目の滑りはどんな気持ちでした?

 ホワイト 実は、感激してガタガタ震えていたんだ。優勝も決まっていたから、普通にただパイプの真ん中をまっすぐ滑ってもよかったんだけど、1年かかって編み出した新しい技・DMTがあった。自分にも観客にも記憶に残る1本にしたいと思ったから、新しい技を見せることができて生涯最高のランになったよ。

 武内 DMTを決めた瞬間は。

 ホワイト あの技は、五輪予選でほかの選手に負けたのがきっかけで生まれたんだ。悔しくて、次の日からこの技の習得に専念したよ。あの負けがあったからこそ、五輪の金があると思う。失敗を成功に変えられたのは、強いアスリートの証拠かな、と思う。

 武内 あのプレッシャーの中で決められるのはすごい。

 ホワイト 自分が金メダルを取ってDMTと決めるというのは、周りは当たり前だと思っていたけど、僕にとってはすごいプレッシャーだった。その期待をモチベーションに変えて成功させることができた。今は「終わってくれてよかった」という感じ。

 武内 ほっとした?

 ホワイト そう! 最近、もう一度、あの2回目を滑らなきゃいけないという夢を見たんだ。パッと夢から覚めて「ああ、夢でよかった」と。

 武内 気持ちが強いですよね。

 ホワイト スノーボードはあまり体が大きくなくてもできる。そのときの状況判断が大事なメンタルなスポーツ。だから、自信を持って臨むのが大事なんだ。

●失敗重ねて習得

 武内 なんであんな技ができるんですか。

 ホワイト あれは偶然できた技なんだ。いつもの技をやっているときに、ちょっと一つ多く回ってみようとやっているうちに編み出された。実際に習得するまでには何度もクラッシュして大変だったから、自分の技の中でも最高のものですね。

 武内 痛い思いをする練習は好きなんですか。

 ホワイト 練習は好きじゃないよ。でも何度もクラッシュしながらでも、すごい技を習得すると、すごい充実感がある。それが練習の糧になっている。この競技を自分が引っ張って、すごい技をつくるのは充実感があるんだ。

 武内 よくあんなに回れますね。

 ホワイト 飛んでいるときは周りの景色が見える訳じゃない。自分が空中でどのあたりにいて、どんな体勢なのかは、自分のフィーリングでつかんでいるんだ。そう言われても、答えづらい。

 武内 日本は、この色のメダルを取れませんでした。

 ホワイト 国母(和宏)選手は、すばらしい選手なので、今回はだめだったけど、次回はいけるんじゃないかな。

 武内 日本では、その国母選手の服装問題で、スノボに注目が集まりました。

 ホワイト 年齢が近いからよく一緒に滑るし、とても才能があって年々上達している選手。今回はネガティブな面で注目されたけど、彼は周囲に不快感を与えようとしたのではないと思う。会う度に髪形も変わっているし、彼は自分のスタイルを持っているよね。スノボはスタイリッシュなスポーツの象徴的存在だけど、国を代表する五輪となると状況は違うかもね。僕も五輪のときはチームUSAの一員だったので、チームの服を着た。代表の一員のときは、その基準に沿うのが大事なんじゃないかな。

 武内 このボードは五輪で使ったボード?

 ホワイト 壊れたり折れたりするので、ボードはいくつか持っていて、これはその一つ。心臓の絵をペイントしているんだ。勝つためにはハートが強くなきゃだめなので。子供の頃に心臓の病気をしました。自分よりも、家族が大変な思いをしたので、その大変さに感謝をしたいなとも思った。

 武内 新技は、どんな時に思いつくんでしょう。

 ホワイト 偶然に生まれることもある。いつもの技を変化させたり、誰かの技に加えたりしてます。

 武内 日常生活で思いつくことは。

 ホワイト 新しい技は「次の大会でやらなきゃならない」というプレッシャーの中で生まれることが多い。五輪のようなモチベーションがあると、スゴ技が生まれやすい。五輪に行くんだというワクワク感の中で技をつくるのは簡単なんだけど、楽しさがなく、練習だけだと難しい。

 武内 いつも追われる立場。大変でしょう。

 ホワイト 毎大会、みんな僕に勝つためにやってくる。でも、僕は毎年、「今年はこの技を成功させよう」とか、目標を決めて自分の世界をつくってしまう。この大会に勝つとか、この選手に勝とうとかでなく、自分が決めたことを達成できるかできないかが大事。大会が始まれば大会に集中するけど、それが終わればスノーボードの世界から離れるという切り替えができているから、滑り続けていられるのかな。それには家族のサポートが大事だね。そして僕が飼っているフレンチブルドッグのランボーは、そんなことはどうでもいいと思っていてくれることが、楽にさせてくれるよね。ペットは飼ってる?

 武内 チワワを飼ってます。

 ホワイト 名前は?

 武内 エリザベス。

 ホワイト うちのランボーは、自分のことタフガイと思っているよ。

●スケボーでも?

 武内 ところで、ヘリコプターでしか行けない練習場があるとか。

 ホワイト 昨年、スポンサーがつくってくれました。ヘリかスノーモービルでしか行けない山奥にあった。もうありませんが。一般の人がいると、みんなが集まってきて危ない。技の練習中に、ほかのボーダーとぶつかったこともある。僕はスケートボードもするんだけど、1年ほど前にほかのボーダーとぶつかって、足首を8針縫ったこともある。だから練習に集中しやすいようにつくってくれたんです。僕にぶつかった人は「ショーンを傷つけちゃった」とわんわん泣いてましたよ。

 武内 スノーボードを始めたきっかけは。

 ホワイト 始めたのは6歳。4歳からスキーをやっていて、すごく速く滑れるようになって親が見つけられなくなった。そして、兄がやっていたスノーボードをやりたいと言ったら、親はスノーボードの方がたくさん転んで、見つけやすいからいいよ、と。

 武内 どこに魅力が?

 ホワイト 子供の頃からスポーツが好きで、サッカーとか野球をやっていた。負けず嫌いだったけど、チームスポーツは自分が頑張っても負けることがあり、悔しかった。あと同じユニホームを着なきゃいけないとか、同じ練習をしなきゃいけないとか。スノーボードは自分の好きな練習を好きなだけできるし、自分で何でも決めることができたから。

 武内 スノーボードはライフスタイルになっているんですよね。

 ホワイト 米国では若者を中心に始まったけど、今やスポーツを超えて文化になっている。音楽やアートが好きな人が集まってくる場。父は60歳だけど、父が友人を誘って行くなどしているし。子供の頃から家族で山に行ってスノーボードをやるという感じだったので、僕の家はスノボを家族でやることできずなが深まった。スノーボードをやったことは?

 武内 何回かやったんですが、転んで嫌になってしまって。

 ホワイト お母さんがお尻にしいてくれる枕を持って行ったらいいんじゃない? 3日間、我慢して練習すればうまくなると思いますよ。僕もスノーボードをかじっているんで、よかったら教えるよ。ハハハ。

 武内 スノーボードは何歳まで続けますか?

 ホワイト 200歳か300歳くらいかな。ハハハ。トニー・ホークという選手は30歳過ぎで現役を引退したから、そのくらいの年で辞めるかもしれない。でも、いつまでもスノーボードをやめることはないよ。

 武内 まだ23歳で、いろんなものを手にしました。これからの目標は。

 ホワイト スノーボードと同じくらいスケボーも好きで、最近、いろんな大会でいい成績を残せている。スノーボードと同じくらい、スケボーでも活躍したい。スケボーが五輪種目になるという話もあるので、それを目指してもいいかな。

バランス感覚抜群の23歳

 〈後記〉 ふわふわのロングヘアに想像以上に細いバネのような足。そんな姿はロックスターのようにも見えました。取材の合間にはマネキンと陽気にダンスを踊り、一方で国母選手騒動について聞けば、一人のアスリートとして真剣なまなざしで語ってくれる。空中でのボディーバランスだけでなく、23歳の青年として様々な顔を持つバランス感覚のたけている人だと感じました。カラオケ好きで、ギターも手放せないというホワイト選手。雪上のロックスターの歌声も聴いてみたいですね。(テレビ朝日アナウンサー)

 ■インタビューは、12日の「報道ステーション」でも放送予定です。

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 Shaun White 13歳でプロに。若者に人気の「Xゲームズ」などの高額賞金大会で活躍。トリノ、バンクーバー五輪で連続金メダル。今季W杯4戦3勝。175センチ、70キロ。

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