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「15年…空しい時間でした」 八王子射殺事件の遺族

2010年7月26日14時3分

 東京都八王子市の「スーパーナンペイ大和田店」で1995年7月、女性3人が射殺された事件は、30日で発生から15年を迎える。被害者の一人、当時高校2年生だった矢吹恵さん(当時17)の両親が26日、警視庁を通じ、「報道関係者のみなさまへ」と題するコメントを発表した。全文は以下の通り。

 事件が発生して15年…。

 それは、私たち家族にとって、瞬く間に過ぎ去った空(むな)しい時間でした。

 その間、警察の方々が、犯人を捕まえてくれることを一途に願っていましたが、残念ながらその願いは叶(かな)いませんでした。

 犯人が捕まらないまま時が過ぎるにつれ、私たち家族には、『時効』という言葉が重く圧(の)し掛かっていました。

 昨年の今頃は、「あと一年で、警察は本当に犯人を捕まえてくれるのだろうか。」という焦りと、「きっと警察は犯人を捕まえてくれるはずだ。」という期待が交錯し、とても複雑な気持ちで毎日を過ごしていました。

 そうした中、様々な方のご支援をいただいて、念願だった刑事訴訟法の一部が改正され、この事件の時効制度が撤廃される運びとなりました。

 八王子署の特捜本部から、法案が衆議院本会議で可決された旨の連絡を受けたときは、ホッと胸を撫(な)で下ろしましたが、それと同時に、「これで、犯人は、一生涯、罪の重さに苦しむことになる。逃亡生活を送って苦しむよりも、一刻も早く自首して罪を償ってもらいたい。」という願いが止めどもなく込み上げてきました。

 しかし、その一方では、犯人が自首する前に、警察が捜査を続けて、必ず犯人を捕まえてくれると期待したのも事実でした。

 娘が銃器犯罪に巻き込まれてから、銃器を使った事件や銃器犯罪撲滅キャンペーン等のニュースに目が留まるようになりましたが、それでも、私たちには、未(いま)だに娘と銃器犯罪を結び付けられないでいます。

 あの日の夕方、「おかあさん、行ってくるね。」と、元気に出掛けていった娘が、銃器犯罪に遭遇することなど、全く別世界の出来事のように現実味が感じられないのです。

 「何か悪い夢でも見ているのかしら。」と思いつつ、今でも、娘が逝(い)ってしまった現実を受け止められないときがあります。

 パート先で、同僚から、「うちの子は勉強しなくて困っちゃうの。」と愚痴を聞かされたことがありました。

 私は、「元気だったら、それだけでいいじゃない。」と言ってあげました。

 すると、その同僚は、私の返答に、「のん気でいいわね。」と呆(あき)れてしまいました。

 私の境遇を知らない同僚の言葉を、私は笑みを浮かべて聞いていたものの、しかし、心の中では、「私の娘は、何も悪いことをしていないのに、銃で殺されたのよ。」と泣き叫んでいました。

 元気でいてさえくれれば、それだけで良かったんです。

 「なぜ、娘を殺したんですか。」と、見えない犯人に怒りを爆発させたいときだってあります。

 「親として、やってあげられることは何でもやってあげたい。できるものならば、警察に加わって一緒に捜査だってしたい。犯人にも、私たちと同じ辛(つら)い思いをさせたい。」という気持ちが、何回も何回も、私たちの脳裏を駆け巡ります。

 娘が、あまりにもかわいそうでならないのです。

 本来ならば、15年の節目に、お世話になった報道のみなさまの前に出て、コメントを申し上げなければならないのかもしれません。

 しかし、現在も捜査が継続している関係上、取材はご容赦(ようしゃ)いただきますようにお願い申し上げます。

 たいへん身勝手ではありますが、犯人が捕まった折には、必ずみなさまの前に出て、御礼を申し上げたいと思っています。

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