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【公的資金注入】


(上)パンドラの箱

 「ペイオフ」控え強硬


 「銀行の怨念(おんねん)だよ、怨念」。29日昼、宇都宮市内の足利銀行本店で開かれた「あしぎんフィナンシャルグループ」の臨時取締役会は、足利銀の債務超過の決算の承認を巡って議論が予定より1時間近く長引いた。金融庁監督局幹部は「最後の抵抗」と突き放した。

 足利銀を破綻(はたん)に追い込んだのは金融庁だった。9月2日、足利銀本店に乗り込んだ検査官17人は、大手都市銀行なみに、融資の傷み具合を調べ上げていった。

 そして今月27日。「大幅な引き当て不足。3月末の決算は債務超過」と「死亡宣告」に等しい診断書を突きつけた。

 検査が続いた3カ月間、日向野善明頭取ら経営幹部は、訴訟も辞さない構えで金融庁検査の指摘に反論を続けてきた。

 「足利銀の栃木県経済に占める比重は重い。公的資金が入ると融資姿勢が厳しくならざるをえない」(あしぎんフィナンシャルグループ幹部)。脅しとも悲鳴ともとれる言葉が、地元に響いた。

 貸出金4兆円のうち半分以上が県内向けの足利銀は「地場工業の歴史に必ず絡んできた不可欠な存在」(栃木県の商工担当者)だ。加えて自治体や取引先企業は700億円を超える出資に応じてきたため、つぶれてはたまらない。一方で、足利銀は県からの要請もあって、経営事情が厳しい温泉地などにも積極的に融資してきた。いびつなもたれあいの構図が根っこに広がっていた。

 それでも、金融庁は3月期決算で「債務超過」と認定した。足利銀にとって、最後の抵抗は、預金保険法102条の第1号措置の「りそな方式」を勝ち取ることに費やされた。この方式なら、銀行はそのまま存続できるからだ。

 地元の船田元・衆院議員はあからさまに「1号」適用を訴え、栃木県首脳も「1号でないと困る」と繰り返した。政府内からも「りそなで株主責任を不問にしながら、足利銀では、県民が持っている株式を無価値にできるのか」(高官)との牽制(けんせい)の声があがり始めていた。

 従来なら認められていたかもしれない抵抗だが、検査結果の重みを覆すには至らなかった。

 「これからは、大手銀行と同じ物差しで検査する」。金融庁幹部は地銀への姿勢が変わったと宣言してはばからない。豹変(ひょうへん)ぶりの背景には、金融健全化の象徴とされている05年春のペイオフ全面解禁が目前に迫ってきたことがあった。

 金融庁は、大手銀行を不良債権処理で追い込む一方、地域金融機関には、再編を促してきた。しかし、デフレが続く中で金融の健全化のペースはなかなかあがらない。「封印」してきた地域金融機関の処理・再編には、もはやぎりぎりの時間しか残されていなかった。

 政府は新たな公的資金の注入の枠組みをつくって、地域金融機関の整理を加速させる構えだ。ただ、半年前まで自己資本比率が曲がりなりにも基準を超えていた銀行が突然死したことで、「金融不安が他の不振な地域金融機関に広がるのも時間の問題」(日銀幹部)となった。

 金融システムの「パンドラの箱」が開けられた。日本全体では緩やかな景気回復が始まっているものの、地方経済の回復の足取りは重たい。地方経済と地元金融機関の負のスパイラルが続くなかで、どう再生を進めていくのか。地域金融にとっても政府にとっても難しい道のりが始まる。

(朝日新聞2003年11月30日朝刊紙面)


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